パピリオ幼稚園(5)
投稿者名:西久保
投稿日時:(98/ 7/23)
園児「光るチョウチョさんだー」
「きれーい」
樫の木に群がるチョウに、子供達が感動の声をあげている。夏の香りを含んだ風が
吹くとチョウたちは一斉に舞い上がり、子供達の声はさらに大きくなった。
だが、その声は長く続かなかった。樫の木の近くにいる子から順番に、次々と眠り
におちてゆく。横島の肩に乗っていた子も寝息をたてはじめた。
横 「パピリオ、何をするつもりなんだよ!?」
それは滑稽な言葉かも知れなかった。横島は何回かパピリオ達の力の被害者になっ
たことがあるからだ。だが横島にそう言わせたのは、パピリオの様子が明らかにいつ
もと違ったからである。いつも豊かな表情の彼女の顔が、虚ろになっている。
理 「パピリオちゃん!」
カ 「パピリオ君!」
異変に気づいた理事長とカラス神父が走ってくる。横島はパピリオの肩をゆすって
再び問いかける。感情のこもってない、弱々しい声が返ってきた。
パ 「...みんな友達でちゅ」
横 「?」
パ 「でも人間なんてゴミでちゅ...。だから、みんなをけん族に変えてあげるん
でちゅ」
眠って地面に倒れている子供達の身体にチョウが集まって、繭のようになっていく。
パ 「あのまま半日寝れば...みんなはきれいなチョウになれるんでちゅよ..」
横 「何だって!?今すぐやめ...」
カラス神父が横島の肩に手をおいて制した。横島の疑問の視線に、神父は首を横に
振って答える。私達にまかせなさい、と。
カ 「パピリオ君、それではみんなと今までみたいに遊べなくなるんじゃないかな」
パピリオは、一瞬反応をみせる。
カ 「そうなってしまっても、いいのかな?」
パピリオの身体が小刻みに震えはじめる。震えがひどくなって立っていられなくな
り、理事長が彼女を抱きしめた。
パ 「だって、人間は...だって、アシュ様が...だって、だって...」
目から大粒の涙があふれてくる。自分が馬鹿なことをしているのはわかっていた。
なぜこんなことをしようとしたのか。考えようとしても頭の中がまとまらない。ただ
、自分が人間と敵対する存在だということを思い出した時の、こらえようのない寂し
さだけが強烈に蘇ってくるだけだ。
ひろみ「パピリオちゃん...明日も遊ぼうね...」
近くで眠っていた友人のかすかな寝言を聞いた時、彼女は火がついたように大声で
泣き出した。
その日、パピリオは夕日が落ちて暗くなるまで理事長に抱かれて泣いていた。チョ
ウは、いつの間にかいなくなっていた。
六道幼稚園経営報告書。
「...やはり幼児期は人格形成が第一であり、霊能力のような特殊な才能・技術の
訓練を行うのは正しくないとの判断より、霊能コースは廃止が決定した。このコース
の唯一の入園者であるパピリオ嬢は、一般コースへと移籍し、現在も元気に通園して
いる...」
(おしまい)
やっと終りにできました。短くコマ切れになってしまったのは、私のアクセス環境
のせいです。すいません。
最後のあたりのパピリオの心境は伝わったでしょうか?ご意見待ってます。
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コメント:
- ほうほう、なるほど。彼女にとってはこういう展開が幸せかもしれませんね。面白かったです。 (ホーエンハイム)
- うーん、なんとなく「べ○○ル○」の「○スト・チル○レンの章」を思い出してしまって...評価はパス、「幼児期は人格形成が第一」なのはそのとうりですが...「自分のむすめ(冥子)をまず、先に精神の修養すべき」では...まあ、六道母さん自身が同程度なんだけど...(笑) (TOMO.KIN)
- ほほお、あなたもあれを読んでらした。実は私もあの繭を連想しちゃいました。でもラストは違ってましたから私は評価しました。 (ホーエンハイム)
- 初めてここに書き込むのですが・・・ (九十九)
- あう・・・間違えちゃった・・・ええ話じゃないですか!最初から読ましていただきましたが、パピちゃんの迷いや心の変化が良く伝わってきます。このお話本編で実現してもらいたいです。(願) (九十九)
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