ザ・グレート・展開予測ショー

Girl’s Summer Vacation With Little Danger? 


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/11/ 2)

今年の夏は蟻までもサボタージュを考えたであろうか。
人骨山付近は高地に属するので、よく耳を澄ませば秋の虫も聞こえるかも知れないが、
「もぉ!蝉がうるさいっ!」
尻尾にまでしたたる汗を振るタマモの姿は壮観である。
何せ9本もあるからである。
「そ、そうでござるなぁーー」
流石のシロもばて気味である。
二人・・というよりも2匹の攻撃の的はオキヌちゃんになりつつある。
「ま、まだでぇござるかぁ?」
「私は都会派なのよぉ。こんな自然しかないトコなんてぇ」
なかなか生意気な獣達であるが、
「しょうがないじゃない。もうちょっとだからね。私のお家までは、ね」
はぁ、とつくため息も暑さが故である。
「で、どのぐらい?」
「・・・・あと8キロぐらい・・」
二人同時に腰から落ちたようだ。
すると、向こう側から元気良く駆け上がって来るワンピースの女の子が一人。
「おーい、オキヌっちゃー!!」
「あっ!お姉ちゃんだ」

美神令子は母親に顔を見せていたのである。
「どうしたのよ、令子?」
「いやぁーね。一寸ひのめでも見にこようかなーって」
「それなら、オキヌちゃんや横島君は?ほかの2匹は?」
「オキヌちゃんは帰省中。ついでにあの2匹もね。少しは緑に触れさせないと、ね」
「ふーん。でもあんたこんな所にくるなら誰かと、デードでもすればぁ?」
「それがねー、横島君はオキヌちゃんの忘れ物を届けにいっちゃてー」
「あらら。振られちゃたの?」
「まさかぁ。はーい。令子おねーちゃんでちゅよー」
母親美智恵は、それでも娘が若干動揺していたのは読み取れていたが、
「まっ、丁度うちのパパも戻って来てるから、会わせてみるか」
成功するかどうかは私の手から離そう。
その頃横島は、
「道・・・間違えたかな?」
リュックにネクロマンサーの笛を入れて今立っている所は深い森である。
何処かで野鳥の声が鳴いている。
「おぉ、怖っ」
そして、人の足音が聞こえてきたようだ。

ショートヘアーが眩しい早苗ちゃんと、獣二人は息があうようだ。
「拙者がシロで御座る!一晩の宿、有難うで御座るよ」
「うん。オキヌちゃんの御友達なら大歓迎だっぺよぉ!」
あまり刺激の無い田舎暮らしでは、こういう訪問者は大歓迎なのかもしれない。
「それにしてもさぁ。暑いわよね―」
タマモはシロに比べて体毛が多いので、暑さに弱いのである。
「それなら、こんな所で休むより、あとちょっと行けば、川があるっぺよ?」
みんな喜んで土手縁に向ったのは言うまでも無い。
「うわぁー綺麗な河!」
シロはともかくタマモは都会育ちなのでこんな河は写真かテレビでしか見たことが無い。
目を輝かせている隣では早苗ちゃんが水を飲んでいる。
すると奥で鼻を使っているシロが、
「あっ、あそこに魚がいるで御座る!」
「えっ?何処何処!!」
本当に小さな川魚であるが、シロにとっては以前、生活の糧である。つい思わず、
「ワキャーン!!」
着の身着のまま水に飛び込んでしまう。
ついでに、
「わっ、バカ犬、私までっ!」
水音が二つ。大体二人の腰がつかる深さである。
「何をやってるで御座るか、せっかくの魚がにげてしまったで御座る」
「あんたねぇ、人まで巻き添えにしておいてぇ・・」
やや、顔が怒りになってきたが、
「でも、これいいかも!この暑い中だもん。気持ちいいわよ」
すいすいと、泳ぎを楽しもうとしている。
更に付け加えれば、毛皮を持つ物にとって海の塩水より川の純粋な水のほうが肌に良い。
「そうで御座ろう?、と言う事は・・」
この会話は水飛沫でオキヌちゃんに早苗ちゃんには耳に聞こえていない。
二人の顔が悪巧みの笑顔となる。
「もぉ。大丈夫?」
と、オキヌちゃんはシロを、早苗ちゃんはタマモを引き上げようと手を差し出した時、
「それっ!」
見事に二人の、もとい2匹の息が合った。
可愛い悲鳴と共に、水飛沫が更に二回なった。

その頃、横島は、ある男の子と歩みを共にしている。
「いやぁ、人骨村とは反対方面だったのかー、いやー。まいったなぁ」
「そうだすよ。兄さんあのまま行ったらとーんでも無いとこについたすよ」
「でも、わるっすねぇー。案内までしてもらって」
「いやぁ、人骨村には知り合いがいるんだっぺよ、ついでに顔でもと思ったんだっぺ」
「へー、じゃあオキ・・じゃないや。氷室家って知ってます?」
すると、そのある男は驚いたように、
「へぇ?兄さん氷室さんをしっとるとね?あい(私)はそこのお嬢さんの・・」
もう勘の鋭い人は御分かりだろう。男の子、早苗ちゃんの先輩、山田君である事に。

「もぉ!なんて事するのよ!」
オキヌちゃんの代一声がこれであるのも、当然であるが、
「あはは!なかなかおちゃめなおなご、だっぺよ!!でもきもちーっぺな!」
けたけたと笑う早苗も自然児なのだ。
「でもぉ。こんなびしょびしょの格好じゃお父さん、お母さんに挨拶できないじゃない」
いささか、御立腹気味であるが、
「そんなんは、簡単だっぺ。この陽気じゃ1時間も有れば洋服乾くっぺよ」
と、早苗ちゃんはワンピースを脱ぎだす。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん?」
「平気平気。こんな所、だれも通らないっぺよ、洋服を乾いてから、下着を乾かす」
「おぉ!早苗殿、賢いで御座るよ」
と、シロが今度は下着姿ににある。同じくしてタマモも、洋服を木の枝にかける。
「さぁ、オキヌちゃんも、洋服かすっぺよ」
自然児の強み、とでも言おうか。
「え〜、でもはずかしいわよぉ」
と、服事水に沈めているが、
「えへん、そんな我侭をいう妹にゃ、シロちゃん、タマモちゃんやっちゃって!」
「はい、で御座る」
「合点」
「いやん」
とか、いいながら楽しんでいる風体のオキヌちゃんである。
「でもさぁ、先ず洋服を乾かして、次に下着でしょ。時間かからない?」
はた、と水音が止まって、
「そりゃそうだっぺけど。一緒に乾かすのけ?オキヌちゃ?」
小さく、こっくりと頷いたように見える。
「だって、お家に着くの遅れちゃ申し訳ないじゃない?」
「そら、拙者等は獣の姿になれるで、ござるがなぁ、タマモ」
「うーん。まずいんじゃないのぉ?」
だが、問答無用であった。
「なーにを言ってるだっぺや、オキヌちゃ、さっきのし返し。はがしたれ、はがしたれ」
「そうよ、獣姿は禁止!!」
わー、きゃーと、水飛沫に混じって、甲高い、じゃれ遊んでいる声が響くも、
人間が聞こえる距離にはいない。
「きゃっ、くすぐったいって、へんな所さわらないでよ!オキヌちゃんてば」
「うわーん、早苗殿に脱がされたでござるよぉ」
二人が下着の脱がし方に熟知してるのは、女性所以である、当然である。
4セットの下着をこれも木にかけたのは、じゃんけんで負けた、シロである。
「うぅ。こんな姿見られたら、お嫁にいけないでござるよぉ」
「うふふ。だれかこないっぺかな?」
「えっ?」
「嘘嘘、今ごろは誰もこないっぺよ」
この異常事態は暑さの所為なのか、日頃の鬱憤がさせたのかは、定かでない。
まだまだ、人間の気配は無い。
水の掛け合いや泳ぎ疲れる頃になる40分頃、体を乾かすため、土手に上がった。
「そういえば、早苗殿の御肌が黒いでござるなぁ?」
「そうだっぺかな?そういうシロちゃも、名前の割には日焼けでくろいっぺな」
「そうねー。タマモちゃんが一番白いわねー」
「まぁね、だって私はそんなに散歩とかしないし」
お互いの鑑賞会と移行しつつある。
「へぇ、しっぽが九つ、重いんじゃないっぺかな?」
「そうでもないわよ。ねぇシロ」
「そうで御座ろうよ、タマモの乳に比べれば」
「なによ!あんただって、一寸前までブラいらない体だったんでしょ?」
「こらっ、じゃれるのはいいけど、水にはいらないでよ」
「はーい」
「あぁ、良い風だっぺな。オキヌちゃ」
爽やかな夏の風をそれこそ全身で感じる。
蝉の音が突如消える。
野鳥が飛び立つ。
「さて、とそろそろ、乾いたっぺな。水遊びはおしまーい、と」
全員立ちあがって、洋服が掛かっている枝に向う。
と、向う岸にある草むらが音をならす。
「ん?タヌキでもきたっぺかな?」
だが、次の瞬間。
「都会モンにはこの近道はたいへんだったぺかな?これで川縁に出るっぺ」
「いや、そうでもないさ、いやぁ、たすかったよ山田さ・・ん!!」
横島の最後の台詞は驚嘆を素直に発した台詞である。
女の子達の動きが止まる。ブラを手に持っている者、下着を履こうと片足を上げる者。
「早苗ちゃ???」
けたたましいまでの悲鳴が鳴り響く。
「こ、こら都会モン、あい(私)の早苗ちゃのあられもない姿をみるでねだ!」
「なにを、お前だって、オキヌちゃんや、シロのハダカをみるんじゃねーや」
と、二人は再度、森の中に身を隠す。
「・・・お姉ちゃん?」
「は、はやく着替えるだっぺよ!」
だが、慌てた四人が着替えるのに、平均以上の時間を要したことを、報告しておいて、
「田舎万歳!!!」
と、喜んでいる横島は森の中でつんのめっていた。
結局、オキヌちゃんの忘れ物、ネクロマンサーの笛を渡せたのは、
女の子連中が一度家に戻ってからであって、
東京に戻って、横島と目が合うたびに、真赤になる三人に、
怪しい目を向ける美神の心中も、これまた私の手から離そう。

FIN

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