ザ・グレート・展開予測ショー

あなたをScandal!【6】


投稿者名:黒犬
投稿日時:(01/11/ 1)




爆音の収まった後には、傷つき倒れた一人の男だけが残った。
どうやら爆発はクレイモア地雷のように指向性のものだったらしく、横島も周りの建築物も、ついでに檻の中のピートも無事である。
先ほどからピクリとも動かないタイガーを無事と言えるかどうかは微妙な所だが。

「うーん。死んでねーだろうな、タイガー」

キョロキョロと辺りを見回す。
幸い、死神の姿は見当たらなかった。

「さーて、雪之丞」

倒れ伏す雪之丞の胸倉を掴み、ぐいっと引き上げる。

「何がどーなってんのか、キリキリ説明してもらおーじゃねーか?」

男にはとことん容赦の無い横島である。
何も瀕死の雪之丞を尋問しなくたって、ピンピンしているピートがすぐ傍らに居るのだが、そちらはもちろん丁重に無視。
さっきから自分に注がれてる視線の熱さがやたらと怖いし。

「……うぅ……ダチだったから……ダチだと思ったから……せめて俺の手でって……思ったのによ………」
「……はぁ?」

うわ言のような雪之丞のセリフに、ハテナマークを顔に貼り付ける横島。

「……こうなったら…もう……………これしかねえ!!!」

突然の絶叫と共に、横島の胸にがっしりと抱きつく雪之丞。
ブルータス、お前もか。などと考えた後で雪之丞の思惑に思い当たり、瞬時に顔を蒼白に染める。

自爆。そう、自爆である。

「うわっ! ヤメろって! お前、やっぱそーいうノリかぁ!!!」
「……一緒に…ママの所に逝こうぜ……ダチ公………」
「って、自己完結してんなぁあぁあぁあぁあ!!!」

全身から莫大な霊力を放出する雪之丞。
迸る霊力が傍らのピートを囲む檻にまで干渉し、パリパリと檻の壁面に紫電が踊り始める。

「わっ! わっ! ちょっと! 雪之丞さん!」

檻の中で大慌てのピート。
しかし、愛子に盛られた薬の作用でイイ具合にイッちゃってる雪之嬢には、彼の悲痛な叫びも届かない。

「ば、爆発するぅーーーーーっ!!!」
「嫌じゃー! 男に抱き締められて死ぬなんて嫌じゃーーーーっ!!!」
「今逝くよっ!! ママァーーーーーーーっっ!!!」

――――閃光。そして爆音。







「な、何だ!? あの夜空を染め上げるような閃光は?」
「お兄ちゃん、あれは煩悩少年とマザコンバトラーの、最後の命が燃える輝きだよ、きっと」
「……つーか、なんでソコまで詳しく?」
「にゃはは。気にしない気にしない♪」







――戦闘指揮車両。

「雪之丞さんの自爆を確認しました」
「まさかそこまでやるとはね、彼」

薬の量が多すぎたかな? などと心中で呟きつつ、雪之丞達の無事と、無事じゃなかった時の冥福を祈る愛子。
小鳩の報告に頷きを一つ返すと、スクリーンの前にくず折れている二人に近づいていく。

「ゆ…雪之丞……」
「うぅ…タイガー……」

ただ呆然とするしかない二人。眼が死んでいる。
そんな二人を襲ったのは、手加減容赦の無い愛子のビンタだった。

パシーン! パシーン!

乾いた破裂音が二つ、狭い戦闘指揮車両の中に鳴り響く。

「しっかりしなさいよ! ここで座して死を待つつもり? 雪之丞君やタイガー君が、どうして命を捨ててまで戦ったのか考えなさい!!」

既に死んでる事にされている雪之丞とタイガーである。哀れ。

無論、ここで座していたとしても別に死ぬ訳ではないし、雪之丞達も死ぬつもりで突っ込んでった訳でもない。しかし、こーゆー場面でこー言われてしまうと、考えるよりも前に「そーゆーもんか」と納得してしまうのが人間というものだ。
さすがは学校妖怪の愛子。学生始めてウン十年。伊達に年は食ってない。

「そ、そうですわ。泣くのは後でも出来ますわ……」
「ああ、そうだ。今、あたし達がするべき事は……」

「「……二人の仇を取る!!」」

まんまと乗せられる二人。かおりと魔理。
愛しき恋人の仇、取らずにいらりょうかとばかりにぐぐっと盛り上がる。
本当の仇はすぐ目の前に居るような気もするのだが。

「ま、あっちはあれでいいとして………小鳩さん、例のモノは?」
「準備OKです。いつでも行けますよ」

小鳩が大きな学生鞄のようなものを、二つ抱えて持ってくる。

「これがあたし達の切り札という訳ね……」
「ええ。魔鈴さんが協力してくれて助かりました」
「それに西条さんも、ね。まさか、武器弾薬どころか、こんな戦闘指揮車両まで貸してくれるとは思わなかったわ」

愛子の脳裏に「何? 横島君に天誅を下す? よし、何でも協力しよう!」と、妙に嬉しそうであった西条の姿が思い出される。

「とにかくコレさえあれば……」
「ええ、流石の横島さんも……いえ、横島さんだからこそ……」

二人の少女が見つめる、奇妙な形の学生鞄。

『“M式”強化外骨格』

それが、その名称であった。





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