ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(暗闇)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/31)




 ー終曲ー



 己の負った傷はどの程度なのか?
 もはや戦闘を続けるには、深すぎるものなのか?
 またその場合、どうやってこの場から逃れる?
 脳裏に浮かぶは、幾つもの自問自答。それらに対し明確な解答を弾き出す前に、やらねばならぬ事がある。
『おのれ・・・!』
 激しく燃える烈火の如き怒りの逆巻く瞳。口から洩れる言葉はその炎が具現。銀のオーラが弱まるのに反比例し、圧倒的なまでに強まる怒気。
 解答として、もはやこの右腕は役には立たない。少なくともこの戦闘には耐えられない。
 冷静に考えるのなら、この場は退くべきだ。
 しかし。
『このまま・・・退きさがれるか!』
 彼はーーー選んだ。心に渦巻く激情のままに。
 例え危険を侵してでもーーーこの眼前の敵を打ち倒す。
『飛べぇ!』
 叫びと共に、左腕が輝いた。
 右肩に突き刺さった『鞭』を掴み、標的の女に向けて、霊波を飛ばす。
「!」
 鞭の上を走る様にーーー滑る様にーーー美神に向かい、迫る霊波。
 手を放す美神。しかし遅い。
「!ぁうっ!」
 鞭から離れ、後方に飛ぶ美神を、同様に鞭から放たれた霊波光が追ったーーーその身を撃つ。
 崩れ落ちる美神。
 その様を見ながら・・・ゆっくりとした動作で・・・銀髪の男は肩から一気に鞭を引き抜いた。注がれる力を失い、やがと血に濡れし鞭が消えーーー紅き滴は足元へと落ちる。
『これで、終わりだ・・・!』
 男は掌をかざす。伏したまま、それでも自分を睨みつけてくる女に向けて。
 まずはこの女。次は離れた場所で気を失ってるバンパイアの男だ。そして最後にあのテレパシストを撃つ。
 自然とーーー笑みが浮かぶ。
 彼は思った。
 てこずらされた。それは認めなければならない。この三人の結束した時の力は驚嘆に値する。
 だが。
 光る掌。やはり最後に勝つのは己の『力』だ。結局この三人の結束した『力』も、こちらの『力』には及ばなかったのだ。
 笑みが深まる、その時。
 女の口からーーー途切れ途切れの、言葉が洩れた。
「終わる・・・っ!のは・・・あんたよ・・・!」
『何?』
 そう言った銀髪の男の視界が、闇に閉ざされる。

 女も、バンパイアも、巨漢のテレパシストも、自分が立っていた屋上の床も、目に見える景色までもーーー全てが消失した。
 馬鹿な!こ、これは!?
 真闇。音無き世界。
 無論叫び声も音にならず、場を包み込む闇と、その静寂は変わらない。
 ポツリと浮かぶ己の姿、認識出来るのはそれだけだ。
 その時。何かが光った。
 グオオオオーーーーーン!
 虎。
 目を疑う程に巨大な虎。
 突如として現れたその虎は、闇の中、真っ直ぐこちらに向かってくる!
 逃げられない!
『うああああぁーーーーーーー』

 そして、彼の意識は真実のーーー闇に呑まれた。

 安堵のため息が、美神の口から洩れる。

「何とか・・・なったわね・・・」

 最後の力を振り絞ったテレパシストの『虎』に、彼女は微笑んだ。




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