ザ・グレート・展開予測ショー

1枚の絵画、後編。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/10/31)

そんな昨日あった事を夢うつつにみていたエミの携帯が鳴った。
「はい、こちら小笠原エミのGS事務所御用件は・・・・」
最後まで言い切れないうちに、相手の叫ぶよな声が受話器越しに響く。
「あの。ギャラリーフェイクのサラです。いま、とても大変なことになってます!」
そりゃそうよ。と言いたそうな顔も電話では判らない。
「了解。ほんのすぐに向うから待ってるワケね」
電話を切ってから、
「タイガー行くよ!」
「へぃ」
車を走らせて物の5分である。玄関には既にサラが待機していた。
「あっ!エミさん、夜分に」
と言っても、まだ夜更けという程ではない。又、早く到着した事に気付いていない。
「えぇ。構わないワケね。さてと、中の様子は、と」
「ポルタ―ガイスト状態ですノー」
ギャラリーの中は、絵画修復用のパテや絵の具が所狭しと飛びまわっている。
そして、問題であるハルスの習作を前に藤田玲司が座っているが、微妙だにしていない。
「予想通りね。タイガー。あのポルタ―ガイストはオタクだけで十分でショ?」
エミは余裕である。そしてタイガーも。
「へぃ。わっしの精神感応をそのまま利用すれば・・・!!!」
何もタイガーの能力は仮想世界の絵を持ってくる事だけではない。
なんともなれば、その場所を強制を強いる事も出来る。
簡単に言えば、霊という存在に対して重力を発生させる、という風か。
ポルターガイストが納ると、ハルスを模した絵画の傍に向う。
「おや?オーナー、絵に傷を付けたかったワケ?」
そう思うしかあるまい。ナイフを右手に持っているのだ。
「ナル。このハルスの贋作自体が傷つけたくないと思ってポルタ―化させたのね」
エミの後にタイガー、さらに後にサラと続く。
「エミしゃん!判りましたノ!どうしてこの絵が変だったのか!!」
「状況を見れば一目瞭然なワケね、さてと」
エミが問題の絵に手をやって、少し霊力を注ぐと、
「はっ!」
オーナー藤田玲司が夢から覚めたように目をあける。
「フジタっ!」
思わずサラが抱きつくのも無理は無い。
「俺は・・一体?それにあんたらは昼間の?」
何事が起きたのか判らない、といった風体だが、藤田は、
「まぁいいか。それよりも・・・」
そういって絵の表面をナイフで削り取る。当然ポルタ―ガイストを発動しようとするが、
「ふん。このハルスの習作。所詮は偽者。大きな力じゃ無いワケね」
封印をしているエミとタイガーである。
さすがにこのやり取りで不可知な力を信じるを得ない藤田である。
「そうかもな。画家にとったら自分の絵を傷つけられるのは忍びがたいだろうが・・・」
そういいながら、今度はガーゼで発揮性の薬品を取り出す。
「えっ?この絵は!!」
上っ面のハルスの下にはまるで別の、格調も比較にならない絵が浮かびあがってくる。
「この・・絵は?」
美術系でない高校生のタイガーですら、見知っているタッチの絵だ。
「そう。本物のハルスが師としてあおいだ、レンブラントの真作だ」
小笠原エミもある程度は予測していたであろうが、これほどまでの大家とは思っていなかった。
「そういうコトね。サラさん。オタクが感じた視線はきっとこのレンブラント、ネ」
「えっと、つまり俺を見てくれって、ワタシに訴えていた、って事ですか?エミさん」
先ず、間違い無く、とエミは答えた。
藤田が最後に劇薬リバーム液、洗浄液でカンバスを磨いた事によってレンブラントが、
現われたのである。
「どうやら、貴方には助けられたようですな。何か御礼をしなければ」
それなら、とエミが指をさしたのが、昼に見た掛け軸である。
「アレも真作でショ?とても気に入ったワケ。どう?」
そう要求するエミに対して、藤田は、
「いいでしょう。貴方も大きな男の子も『美』に対する価値を見出せる人物、そういう人にこそ、これは相応しい」
この掛け軸、銘(名前)、落款(ハンコ)は入っていないが、間違い無く大家、横山大観による筆である。
「でも宜しいのですカノ?これ買い手が決まってるとか」
あぁ、と藤田が嘆息を漏らして、
「実は、この掛け軸、買い手は決まってなくてね。本当に美を識る物に売りたくて」
客を試すとはのぉーと、いいたげなタイガーである。
こういう品をそつなく見破れることに関しては、美神よりエミの方が断然上のようである。

FIN

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa