ザ・グレート・展開予測ショー

1枚の絵画、前編。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/10/31)

ギャラリー、つまり画廊を開くには海辺を避けるのが通例である。
湿度も高く潮風にさらされる場所では古く、高価な油絵にとっては外敵だからだ。
しかし、東京はウォーターフロントと呼ばれる一角にあるこの画廊だけは違う。
「ここなワケね、令子ちゃんがけんもほろろに扱われたっていう画廊は」
車を降りたのは地肌も髪も官能的なまでに黒い女性小笠原エミと、
まるで傭兵のような体格を持つ外国の未成年、タイガー寅吉である。
「そうですのー。画廊の名は『ギャラリーフェイク』表向きは贋作を扱う店だとか」
「そのようなワケね。んまホントかどうかは中に入ってから」
贋作、つまりニセモノを扱うという事で本物の持つ魅力を廉価で楽しむ、という方針らしい。
潮風対策という理由であろうが、玄関は比較的小さく、重々しい。
それでも手入れが行き届いているのか、女の力でも十分に開閉が出来る。
「いらっしゃいませー」
そう声をかける女性従業員はアラブ系の女性、いや女の子といった年頃である。
名前をサラ・ハリファ。さる中東の王族であったが、戦争によりその地位を失うも、
大金持ちという身分である。が今回の話では然程重要ではない。
「知り合いからこういう面白い店があるからって、聞いてきたワケ。店内を見せてもらうわネ」
ヒールの音を極力消しながら店内を歩くエミに対してタイガーは猫の如く静かに歩行したいる。
「タイガーこの絵どうおもう?」
奥まった場所に有る日本画の前で、足を止める。
タイガー、精神感応の能力を少しだけ使ったようである。
彼の力を応用すれば、本物だけが持つ絵画の波動を受け止める事が出来るようだ。
「・・間違いありませんノ。この絵から出ている波動は本物でスノ」
「やっぱりね。新聞で見た事あるワケ。大分前にある美術館から盗まれた一幅の掛け軸」
それが、贋作品を扱うと詠っている店にある、という事は。
「この画廊にある噂、嘘じゃないワケね」
聞こえないまでの声で呟いてから、
「ねぇ、この掛け軸、おいくらなワケ?」
大抵の品には値段が掲載されているが、幾つかは値段のプレートが無い。
事務所から一人の男、画廊の経営者が出てくる。
「申し訳ございません。御客様。この絵は既に販売済みでして」
「あら、そうなの。後学の為にも値段、知りたいのダケド?」
すると、オーナー少し顔を曇らせて、
「売買の決まった物品に対しての値段はお教え出来ません。それでもとおっしゃるなら」
人差し指を一本あげる。
「百万円?なワケ」
オーナー首を振って、
「いいえ。一千万円出して頂けるなら、御配慮いたしますが?」
随分ふっかけたなと普通の人間は思うだろうが、市場価値にすれば、これぐらいか。
「それなら、いらないワケ。それよりも・・・」
もう一つ、値段の掛かっていない、洋画を指差して、
「じゃあアレは?」
と、エミ。その絵をじっくりと間近で見ているのはタイガーである。
「あぁ、あれですか」
ふふん。オーナーは鼻で笑って、
「あれは、訳あって非売品でしたな。今は飾っているだけです。申し訳御座いません」
深深と頭を下げた後、
「それにしても、御客様は目が高いですな。今後とも、よい御付き合いが出来ればと思います」
と、オーナーは名刺を差し出す。
『ギャラリーフェイク、オーナー藤田玲司』、
と書かれている。エミは当然百も承知だ。
元NYメトロポリタン美術館のフジタ、通称プロフェッサー(教授)の異名を持つ優秀な日本人キュレーター(学芸員)。
だが、今ではブラックマーケットに通じた盗品、横流し品を法外な値段でコレクターに売りさばくという噂だ。
それでも外の世界で商売が出来るのは、藤田の尋常ならざる力が物を言っているようだ。
「でもどうして、この品だけ非売品なワケ?」
「あぁ、あの絵はどうしても気になる事がありましてね」
説明にもなっていないような事を述べていると、従業員のサラが、藤田に耳打をする。
「ねぇフジタ。あの絵が欲しい、って言うなら、うっちゃいなよ。だって・・」
「いや、駄目だ。もう少し科学的に鑑定せねば・・」
「だって・・・おととい来た女の人も、この絵には呪いがって」
不安そうに怯えるサラにに対してオーナー藤田はまったく介せず、
「いいか、画廊をやっている人間が、呪いだなんて騙されたら損するだけだ。そんなのは偶然が重なっただけだ!」
そういうや、藤田のポケットから携帯の着信音が流れ出す。
「あぁ、カルロスか。久しぶりだね。Ok,いまから会いにいくぜ」
怪しい男からの電話があったようだ。
「サラ、俺は出かけてくる。ギャラリーを頼むぞ」
と、コートを羽織って外へ出ていく。
「はぁ、そうかなぁ」
弱きなサラである。エミが近付いて、
「ねぇ貴方、おととい来た女の人ってどういってたの?」
「あら、聞こえてたんですか?あの実は・・この絵を飾ってからヘンな物音とかが・・」
絵は、オランダの印象画家の一人、ハルスを模した贋作、というより練習した習作のようである。
「それに・・・なんていうか、人がいない時、このハルスから視線を・・感じて・・」
そんな絵を売ってしまえといった己に少し恥じている、という感じか。
そんな態度をエミは見つつ、
「タイガー、おたくはどう思う?」
「へぃ。エミしゃん。やっぱりなんかヘンだとおもいますノー」
そう断言する。その言を耳にすれば、通常の人間が驚くのは当然の帰結だ。
「あの?御客さんは、そういった御仕事を?」
「そう、GSってね。おととい来たって言う女よりも100倍は頼りになるワケよね」
おとといきたと言う女が美神令子である事に間違いはなかろう。
「あの、じゃあやっぱり、この絵は呪われて?」
それに関してはエミも、タイガーも首を捻らざるを得ない。
「通常の呪いとは、ちょっと違うワケね。なんていうか・・・」
「そうですノーあえて言えば、何か訴えてる、というトコですカイナ」
ギャラリーの従業員、サラが身震いをする。
「そう、ね。異変があったら此方に連絡してクレル?」
エミは電話番号のついた名刺を渡す。
「それと・・はい。これはオタクに貸しておくわ。御守りよ」
と、ルビーのネックレスを渡す。
恐縮するサラに、
「貸すダケよ。さぁ、帰るよタイガー」
「へい」
と、二人は外に向って、
「に、してもエミさんも酷いですノー」
タイガーが切り出す。
「何が?」
「だって、出て来る時、あの絵に霊力をあたえたんじゃないんですカイノ?」
エミは笑っただけだが、タイガーにはそれで十分であった。
「さぁ、今日の夜、きっとあの女の子から連絡があるワケよ。近くで待機なワケね。
「合点」
ウオーターフロント、道路が広くまだ空き地も少なくないので、車を止めるにはもってこいである。

昨日、特に重要な事もなかったが、東京近在のGSが魔鈴の店にあつまっていた。
「でも、まだまだ幽霊に対して無知な人はおおいですよね」
という、何気ない唐巣神父の一言が、美神令子の独壇場になって、
「そうなのよ!昨日私が怪現象が起こっているギャラリーってトコにいったらさ、
 そのオーナー何て言ったと思う?『そんな事までしてこの絵が欲しいのかっ!』、
 だってさ、失礼しちゃうわよ。そこのギャラリーには風水を使ったレイアウトなのに、
 あんな奴1回呪われて、痛い目に合えばいいのよ。それとも徐霊代ケチるつもりなの」
と、散々な悪口を言っていたのを耳にして、
「ちょっと、令子。それはオタクのやり方が間違ってるワケよ」
「なんですって?じゃああんたはどうするのよ!呪い屋」
と、売り喧嘩にと言う状態になったようだ。昨日、特に重要な事もなかったが、東京近在のGSが魔鈴の店にあつまっていた。
「でも、まだまだ幽霊に対して無知な人はおおいですよね」
という、何気ない唐巣神父の一言が、美神令子の独壇場になって、
「そうなのよ!昨日私が怪現象が起こっているギャラリーってトコにいったらさ、
 そのオーナー何て言ったと思う?『そんな事までしてこの絵が欲しいのかっ!』、
 だってさ、失礼しちゃうわよ。そこのギャラリーには風水を使ったレイアウトなのに、
 あんな奴1回呪われて、痛い目に合えばいいのよ。それとも徐霊代ケチるつもりなの」
と、散々な悪口を言っていたのを耳にして、
「ちょっと、令子。それはオタクのやり方が間違ってるワケよ」
「なんですって?じゃああんたはどうするのよ!呪い屋」
と、売り喧嘩にと言う状態になったようだ。

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