ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(連携)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/31)




 ー終曲ー



 ーーー三角形。

 ーーーその中心に銀髪が在る。

 破魔札により起こされたーーー辺り全てを覆い尽くす程たちこめる爆煙を斬り裂く様にし、雷光が如くに閃くそれは、並外れた霊力により変化したーーー『鞭』ーーー
『く!』
 弾く。
 反射的にふるった左腕によって、前方の空間から己が全身を絡めとろうとしてた鞭は、軌道を逸らされた。
 しかし。次いで。
「ウオオォッッ!」
 ーーー後ろ。
 左斜めの方向から、あのバンパイアの男が向かってくる。
『ちっ!』
 瞬時にそう認識し、舌打ち一つ。
 間を置かず拳に光を溜め、それを解放しようとした時。
『!?』
 左の拳に、思いもよらぬ負荷がかかる。
 正確に言うなら、手首から肘の部分に、だ。
 バンパイアの男から一瞬視線を外し、視界に飛び込んできたのは、左腕に幾重も絡みつくーーー鞭。
 迂闊だった。
 鞭を弾いた直後。
 背後から不意を突ける筈だというのに、バンパイアの男がわざわざあの様な叫び声をあげたのは、弾いた鞭から、こちらの注意を逸らす為だったのだ。
『貴様らーーー』
「くらぇっ!」
 再び、向かってくる金髪のバンパイアへと視線を戻した時、相手は既に、もはやこちらに肉薄していた。
 向けられた掌のひらから放たれた、霊力光が視界の全てを埋め尽くす。
『グ・・・!』
 動く右手で装甲の薄い顔の部分をガード。連続して雨あられと、止む事無く叩き込まれる霊波弾を必死に堪える。
 ここまで至近距離から放たれては、堅牢極まりないこの装甲ですら、攻撃を完全には遮断出来ない。
 だが。
『フ・・・』
 嘲笑。
 目に見えて、バンパイアの霊波弾を放つペースが落ちる。
 当然だろう。
 今のこの攻撃の時まで、自分の霊力を全く使わずに温存していたというなら話は別だが、このバンパイアの男は既に、お仲間の二人を救うのに何度か霊力を使ってしまっている。ガス欠を起こす事は当然の帰結だ。

『こいつの霊力が尽きたところで、この鞭を空いた手でひき剥がし、全員まとめてあの世へ送ってやる』

 銀髪の男がそう勝利を確信し、ほくそ笑んだその瞬間ーーー

『何!?』
 男は気づいた。
 いつの間にやら、左腕に巻き付いていた霊力の鞭が掻き消えている!あの女はどこに!?
 笑みを凍りつかせた男の耳に、バンパイアの男の再度の叫び声が聴こえた。
『顔と右肩です!そこの装甲が甘い!』
『な!』
 その叫び声に合わせるかの様に、何かが放たれた。
 風をーーー切る音。
 こちらへ向かいーーー真っ直ぐに飛来する、一本の矢。
 その矢は正確に、こちらの右肩へとーーー
『ーーー小賢しいっっーーー!!!』
「うわぁっ!!!」
 霊力を全力放出し、イビル・アイによりこちらの弱点を見破った、バンパイアの男を吹き飛ばす。続けて万一の事態を思い、迫る矢をかわす為に身をよじろうとしたーーーその時。
 矢がーーー弾かれた。矢の後ろから虚空を疾る、何かに。
 目を見開く。
 疾風の如く駆け抜ける、鋭い先端。それはまるで、長大なレイピアの切っ先。そしてーーーそのレイピアの向こうに見えるのは、あの女。その隣にはボウガンを打ち出したと思われる、あのでかぶつテレパシストもいる。

 理解した。

 あの女ーーー美神が鞭を変質させ、刺突として放った事を。
 元々が、元の形から変質した武器。そこから更に変質させる事も、決して不可能では無いのだろう。
 切り札の一手。
 確実に・・・その一手を有効とする為に、あえてカモフラージュとして矢を・・・いや、今までの全てがーーー・・・!

 間に合わない!・・・回避ーーー出来ない!

『おのれ・・・!貴様らぁぁーーーーー!!!!』

 次の瞬間。

 いかなる攻撃も全て、決して受け付けなかった銀の鎧はいともたやすく・・・一枚の紙きれの様に、刺し貫かれたーーー




今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa