ザ・グレート・展開予測ショー

過去独白(マーロウ美神令子を語る その12《第二部最終章》)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/10/30)

あれからたった三日後。気まぐれの散歩の積もりが、やっぱ教会に向っていた。
ちょっとだけ、心配していたんだよな。
「あら?マーロウ」
予想に反して、というべきだな。とても明るい声だった。
「いいの?一人で歩きまわってて」
いや・・俺は犬だから一匹と言うのが正しいのだが・・。
「飼い主さん、近くにいるの?」
どうした事だい、あの嬢ちゃんが。良くも悪くも、今までは自分のことで精一杯だった。
無理はねぇと思う。小さい頃は悪魔と言われる連中に狙われ、
ママさんも餌食になって、そしてあの父親に・・
二回の失恋だ。
そんな事を考える俺の前に嬢ちゃんは屈みこんで、
「ねぇ、マーロウ。私を心配してくれるのは有難いけど、今の飼い主さん心配させちゃ」
それを言われると若干辛い。
今のご主人様は、ある理由で霊能を持つ俺が不可欠だったんだが、ある病気を堺に必要じゃ無くなった。
だからこそ、俺は嬢ちゃんが気になって、心配だったから、こうやって。
「あら、私はもう大丈夫よ。なんなら証拠を見せましょうか?」
証拠とは一体?俺はただ嬢ちゃんの後に付いていくことにした。
詳しい事は後に廻すが、この日が最後の嬢ちゃんと俺の散歩になった、と言っても過言じゃあるまい。
時間にして15分、ある屋敷に入っていった。
「この屋敷にいるのは、B級の幽霊でしょ?あと若干の雑魚かな?」
イグザクトリー(その通り)。これは油断出来ないな。事実ある一匹が俺達に向かってきた。
嬢ちゃんは足を動かさずに最低限の行動でその攻撃を逸らす。見事なまでの回避だ。
Woooo!
俺が追尾の霊砲を繰り出すが、相手も然る者、ひらと避ける。
ちと厄介だな。と俺が嬢ちゃんを見ると、
「へっへ。この程度でないと、遣り甲斐がないってモンよ」
余裕そうな顔で、武器を一つ取り出している。
「さぁ美神令子の悪霊退治、はじまるわよ!」
あれは、そうだ厄珍のグラサンチビがオマケに繰れたっていう神通棍じゃねぇか。
あの時程、驚いた事は無かった。
嬢ちゃんは的確に雑魚を一撃でしとめた。俺が梃子摺ると思っていたB級の奴も、一発で足を奪った。
「なーんだ。張り合いのない」
油断するな、と俺は言う積もりだったが、意味は無い用だな。
事実、隠れていた雑魚霊が急襲したが、霊気の刃でがっちりと受けとめている。
「まったく油断も隙もありゃしない」
それは嬢ちゃんの事だぜ、それに、ほれボスも半ばおびえているじゃないか。
「あとはアレを倒せばOKね。さてと、どうしようかな?」
?どうしようかな、とは?
「ほら、一流のGSて、自分の決め台詞持ってるじゃない、私も欲しいかなーって」
何を呑気な、
「『月に代わって御仕置きよ』じゃ真似だし、ださいしねー」
おいおい・・。そんな事いいながら、ポーズを決めてるじゃないか。
そんなンもあってか、ボスさんも恐れてね。はいつくばって嬢ちゃんに懇願する積もりか、
足首を掴むんだ。
「なっ!」
嬢ちゃん、さっと顔を赤らめてから、
「ひ、人の下着をみるんじゃないわよ!このエロ幽霊!」
と、ザクザクボスを切りつけている。
・・・見られるのが嫌ならンなスカートとやらを履いて来るなよ・・。
「えーい、お前なんか、地獄へ・・」
はた、と止めて、
「極楽へ往生しなっ!」
この突如出た台詞が後々、嬢ちゃんの決め台詞になったようだな。
もう、俺の見送りなんぞ不用だろうが、とりあえず今は付き合わせてもらった。
にして、どうしていきなりそんな力を身に付けたんだ?
「うん。私もあやふやなんだけど、誰かにこれ使えって」
と、神通棍を俺に見せた。してそれを使えとは誰が?
「さっきも言った通りよ、あやふや。なんか夢みたいだったわ」
神父はきっと神様だ、とか説明したらしいが、嬢ちゃんは信じていないようだ。
「あっ!そうだ、一つだけ覚えてる!!」
ぴょんと、その場で軽く跳ねる。スカートが捲くれるってばよ、嬢ちゃん。
「バンダナ!」
ば、ばんだな?バナナの親戚か何かか。
ふむ。そう言えば、未だに『ばんだな』とやらは、判らねぇな。
横島坊や。知ってるかい?
「知ってるも何もマーロウ、これだよバンダナって。ほら俺がおでこに巻いてるコレ!」
へー。これがバンダナか。坊やがしているソレは人間用の首輪みたいなモンだと思っていたぜ。
「首輪?ちがうよ。コレはオシャレだって。第一なんで俺が首輪なんかを?」
だって、坊やは嬢ちゃんの所有物だろ?つーと流石に皮肉か。
「ひでぇ言い分。まぁいいや。俺達これから仕事だけど、雨が止むまでいてもいいぜ」
珍しい事だな。あの嬢ちゃんが雨の日にも仕事をするなんざ。
気を付けて行ってこいよ。横島坊や、それに嬢ちゃん達も。

俺は仮面を来た男の実験動物だったらしいが、ペット扱いだったよ。公彦とか言ったな。
コイツは、所謂テレパスって奴でなコイツと付き合った所為か俺も知能を持ったのさ。
一度、フィールドワークに行く事になって俺に別れを告げた。
だがよ、次の日ちゃっかり教室へ帰ってきたんだよ。しかも女連れでさ。
何時も暗く無口な奴がすんげぇ、明るいんだ。
「あはは、マーロウ、F・ワークは延期になったよ、それより、紹介するよ」
「こんにちわ。あたしが、公彦さんの妻になる美智恵でーす」
「ははは。結婚する事にしたんだ」
令子嬢ちゃんのママ、美智恵ママさんだ。
でだ、
・・・おいおい、何妖しい匂いだしてんだ?二人とも。公彦は鍵をかけて・・・。
あらー、この娘洋服脱ぎ出したよ。おいおい、人間てのは何時でも発情期だからな。
だが、それは俺が霊能に目覚めた瞬間だ。彼女の背中から何か俺に向かって来たんだ。
チューブラー・ベルって奴の残骸が俺にくっつこうとしてよ、吠えてやったら、
あっさり御陀仏さ、その残骸を食ったんだよ。そしてら霊力が出たって訳さ。
それから俺は令子の嬢ちゃんを守る役が俺の半生といって良かったろう。

俺は・・人並みの知識を持った事もあって犬としての幸せは、とうとう・・な。
俺の子供は出来なかったし、あえて求めようとはしなかった。
後悔は全く無いと言ったら嘘になるし、たった一つだけ、心残りがな。
人工幽霊1号、頼みが有る。もう少しで、俺の生命は尽きるだろう。その前に今の飼い主の家へ向いたい。

わたくし、人工幽霊1号はマーロウ様のご依頼を人知れず完遂する事に致しました。
そして、もう一つ私にご依頼をと申し出たので御座います。
「若しも・・可能なら・・俺の魂を・・・・お前の・・・体に・・・残せるか・・」
魂その物を所持する事は不可能で御座います。しかし何故で御座いますか?
「笑われるかも・・しらねぇが、嬢ちゃんを幸せに出来る相手の顔を見るまでは、どうしても、な」
マーロウ様、どうして笑えましょうか・・。貴方様のその思いだけを魂の残像として私が管理する事は可能です。
しかし、私の言葉は耳に出来たのでしょうか。
雨の降る中、マーロウ様の両眼はもう既に閉じられておりました。
・・・。
了解致しました。マーロウ様の御意識の一部を我が屋敷の屋根裏より更に奥で管理致しましょう。
それから後日気付いた事で御座いますが、魂の一部と一緒に、
銀色の指輪がしばらくの間、誰の目にも着かずに、鈍い光を放っていたのであります。
これが、再度人様の目に現れた時のは、
ひのめ様が幼稚園に入るようになった頃、我が屋敷内に蛍の光にも似た存在が、
出入りした次の日で御座いました。


------THE END (過去の展開予想Best100その15 No19に続く)----

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