ザ・グレート・展開予測ショー

黄昏。後編


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/10/29)

力が無いために、守れなかったもの。
力があったが故に全てをうしなったもの。

…どちらが幸せだろうか?

雪之丞は笑っていた。
鮮やかに。
それは、先程屋敷に入るときに見せたはにかむような笑顔ではなく
―壮絶なという表現が相応しいもので―
(覚悟しろよ)
と心の中で雪之丞。
この、目の前のものの為に自分は一番深い傷を見せ付けられたのだ。
普段は、思い出しもしない事。
いや、無意識に思うことを避けている事柄。
―何も持たない力ない自分。
―初めて、それに気付かされ、そして力を求めた時の事を。
その瞳はまごう事無い、憤怒の色に彩られていた。


そして、霊気という鎧を纏う。
即ち魔装術。
「うおおおおおおおおおっ!!」
自らを鼓舞するかのように吼える。
瞬間、圧力がかかるが何もなかったかのように、そのまま攻撃する。
だが、本当に何も無いわけではない。
先程と変わらない圧力がかかっている。
魔装術で、覆っているとは言え体に負担がかからないわけではない。
みしり
と骨が軋む音が聞こえる
にも関わらず
「来るってわかってんなら、耐えれんだよっ!!」
と叫ぶようにいい、そして霊気で覆われた手で拳をくりだした。
がすっ!!
独特の手ごたえ。
人の肉体を殴るのとは違う。
ひどく生々しい感覚。
『ぐはっ!!』
殴られた方は、自分の一部、要するに今自分自身を構成しているもの
魂の欠片、怨念、執着、悔恨それらを、ほかの力によって強制的に、消滅
いやこの言い方はおかしいだろう
あるべきところへと、もとへあるべきところへと返されるのだ。
それ自体の『意思』を無視して。
これは姿をもたぬものにとって最も苦しむべき事だ。
ここに存在するべき理由を成就する事無く一部を切り取られるのだから。
当然、目の前にいるものの顔も歪む。
―同時に雪之丞の体もぐらりと傾いた。
(っちょっとまてっ!!!)
これは―?と思う。
その目の前のやつがくるしみの声を出した瞬間
それが、雪之丞のこころに届けられたのだ。
言うなれば、心臓が凍りつきそうな恐怖
そして、痛み。
あまりの強さに本当の痛みと錯覚してしまう。

あまりに強い精神感応だ。
一言、言葉に載せただけで感情がダイレクトに流れてくる。
それでも、
雪之丞は拳を繰り出す。
繰り出すたびくる痛み、恐怖。そして悔恨。
―歯を食いしばり、足を強く踏みしめ―
それらを受けながらもこぶしを振るう事を辞めなかった。
一発一発殴るたびに伝えれるもの。
強制的に伝えられる侵食させるこころ。
まるで、自分がそうされているかのような錯覚に捕われてもそれらに耐えた。

そして、伝えられるもの。
言葉や画というより思念。
―こんな力さえなければ―
無気力な、全てを諦めたような
この思念が流れた瞬間
全てが吹き飛んだ。
体の痛みも。こころの傷みも全て
タダ一つ雪之丞を占めるこころは、つよいそれこそ全てを吹き飛ばす
憤り。


「っざけんじゃねえええええ」

つづく
ふ終わらなかったもんどうせどうせどうせどうせどうせ…(いじけ

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