ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(伝心)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/29)




 ー終曲ー



『タイガーはきっと、いえ間違いなく追い込まれている』

 屋上への飛翔。飛び降りた場所に、再び舞い戻るーーー
 それは、常人には到底真似の出来ない・・・それどころか完全に不可能な離れ技といえるだろう。
 しかし今彼女達が置かれている状況からして、それは些末な小事とされた。すぐに頭から消える。
 屋上には人影が二つ。
 霊的な霧と化し、泳ぐ様に虚空を渡る彼女らの眼は、ハッキリと『その二人』の姿を捉えた。
「タイガー!」
 金髪の青年ーーーピートが霧から通常の、普段の姿に戻る。
 屋上の人影。その人影の一つは地に伏し、もう一つはその側で腕を組む様にし、沈黙しながらたたずんでいる。
 地に伏した方は、あちこち服が裂け、遠目からもそう認識出来る程、深いダメージを負っていると知れた。

『あいつ・・・私の鞭を純粋に力任せに・・・噂に聞くタイガーの精神獣だろうと、あのパワーに装甲を持つ相手に影響を及ぼせるのかは・・・疑問だわ』

 息も絶え絶えで地に伏す『虎』に、駆け寄るピート。
 無論・・・銀髪の男は、ただそれを傍観するなどという事はしなかった。左腕。その掌に霊波の光が宿る。
『砕け散れ』
 彼はその光をを真っ直ぐ標的へと向け、まとめて葬るべく解き放とうとーーー
「おぉっと!」
 一条の閃光が、左腕に巻き付く。
 ゆっくり振り向くと、そこにはーーー手応えも充分、どれだけ打たれ強くても、戦闘を続行するなど不可能なくらいに、強力な一発を叩きこんだ筈の女がいた。
「・・・・・・」
「何惚けてんのよ?こっちはこういう時の為に、強化セラミックで防護してるの!あんなパンチ、蚊に刺された様なモンよ!」
 そう言いながら、彼女ーーー美神は腹部を指して挑発する。
 激昂する銀光の修羅。

『あいつはしばらく私が抑える!挑発してペースを乱してやれば、何とか持ちこたえられる!あんたはその間に・・・』

 始まったーーーそう悟りながらも、ピートはタイガーにヒーリングを施し続ける。
 気になる。しかし彼女は自分を信じてこの役目を頼んできたのだ、こちらも信じなければ・・・!
 そう心中で独りごちながら、ピートは治療に専念した。

『先ずはタイガーの応急処置を済ませて!そしたら次、あんた達テレパシーで私に語りかけて!こいつを何とかする方法を伝えるから!』

 唸る剛椀を紙一重でかわし・・・迫る霊波弾を最低限の力しか乗せずに、しなやかに鞭でそらす。
 怒り任せの攻撃などさばくに易い・・・しかしその尋常ならざる攻撃力から来る異様なまでのプレッシャーは、美神を精神面からジワジワと圧迫して行く。
(く・・・!)
 まずい。
 精神が削られるにつれ、無理に抑え込んでいる『痛み』までが、己の動きを束縛する事に焦りを感じつつ、それでも奇跡的といっていい閃きと防御センスで、絶え間無い必殺のラッシュから逃れ続ける。
(ーーーまだなの!?)
 焦燥が募り、限界を迎えようとしたーーー瞬間。
(美神さん!)
(もう大丈夫じゃ!)
 瞳に輝きが戻る。操る鞭が軽くなる。待ちに待ったテレパスによる、自分の心にだけ響く二つの声に『遅い!』と一喝するのを忘れずに、美神は破魔札を取り出した。
「くらえぇっっ!!」
 一斉に投げつけた破魔の札を、鞭で打ちすえながら、タイミングをずらして起爆させて行く。
 反撃する暇を全く相手に与えずに、途切れる事無く札を起爆させ続けながら・・・美神はテレパシーを通して、二人に作戦の詳細を説明する。

「・・・よし!じゃ行くわよ!」

『何!?』

 説明を終え、銀髪の男にも聞こえる様に言い放つ美神。

 三人がそれぞれの『仕事』を果たす為、最も適した位置へと移動をしーーーそしてーーー

『!?』

 ーーー動揺する銀の化身。


 美神とピートは、たちこめる破魔札の爆煙に紛れる様にし、同時に前後から仕掛けたーーー




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