ザ・グレート・展開予測ショー

君がいるだけで(14)


投稿者名:JIANG
投稿日時:(01/10/27)

 そして、翌日――――
「アレに先生たちは乗って行くんでござるか? あんな大きなものが空を飛ぶんでござる
のか……途中で落っこちたりしないでござるか」
「すごい…! なにアレ? アレが飛行機なの……? あ――浮かんだー! すごーい! 
ねえ、私もあれに乗りたい!」
 はじめて来た空港、はじめて見る飛行機に大はしゃぎのシロとタマモである。
 そう――、令子たちはこれからナルニアに行く横島たちの見送りに来ていたのだった。
「横島クン、向こうに行って羽目を外しすぎて日本の恥をまき散らさないようにしなさい
よ!」
「大丈夫ですよ。私がちゃんと目を光らせておきますから」
 令子の言葉に百合子がにっこりと笑って答える。
「そうですよね、お母さんが一緒ですから心配ありませんよね」
 このおキヌの言う心配というのは――言わずもがなである……。
 しかし当の横島は「大丈夫ッスよ。そんなに心配しなくても……」とは言いながらも心
の中では……
(なにを言っているか! 向こうでは裸のねーちゃんたちが俺を手招きして待っているん
じゃ――。そこで羽目を外さずしていつ羽目を外す。いざとなったらおふくろの目を盗ん
で……、それでもダメなら親父をそそのかしてでも目的を果たしちゃる!)
「うわははははははは………」
 妄想全開で大笑いする横島。考えていることはもうバレバレである。
「バカ笑いするのはおやめ!」
 百合子はそんな息子の頭にげんこつをお見舞いする。
「あ、そろそろ搭乗時間ですよ」
 時計を見ておキヌが言う。
「もうそんな時間!? シロ! タマモ! 横島クンが出発するわよ」
 他の客の迷惑も顧みず大騒ぎしていたシロとタマモを令子が呼ぶがなかなか出てこない。
「もう、どこに行ったのかしら」
 横島や百合子も周りを見渡すが2人とも見あたらない。
「美神さん…。それ……」
 おキヌがためらいがちに横島の横にある見慣れないサムソナイトを指さす。
「……」
「……」
「……」
 はあ―――と令子は息を吐き出すと
「ねえ、おキヌちゃん。こんな話を知ってる?」
「え!? なんですか?」
「ある男がね、ただで飛行機に乗るために飛行機の貨物室に忍びこんだんっだって。それ
でね、飛行機は空のうんと上の方を飛んで行くでしょう。だから空気は薄いし気温もすご
い低くて寒いのよ。それで貨物室は荷物を入れておくだけの場所だから空調も冷暖房設備
なんてのもないでしょう。だから次の飛行場でその男が貨物室で発見されたときは、凍傷
だらけで凍え死にそうになっていたんですって」
 令子が話し終わるとサムソナイトの中から「クーン、クーン」「キューン」というもの
悲しい犬のような鳴き声がかすかに聞こえてくる。
 これにはおキヌをはじめ百合子も苦笑する。
「あんたたち、凍死したくなかったら今のうちよ。早くそこから出てきなさい」
 令子があきれた様子で命令すると、ふたが開いて中からキツネとオオカミが涙を浮かべ
ながら這い出てきた。
「まったく、あんたたちときたら学習能力はないの?」
「拙者、先生といっしょに行きたいでござる」
「私は飛行機に乗りたかったのよ」
 人型に戻った2人は情けなさそうにいいわけを言う。
「我慢しなさい。飛行機ならいつか乗せてあげるから……!」
 そんな、ちょっとしたゴタゴタがあったが、横島たちは飛行機に乗ってナルニアに飛び
立っていった。
「先生―! 早く帰ってくるでござる―――!」
「あーあ、飛行機に乗りたかったなー……」
 飛行場の屋上の金網に張り付いているシロとタマモを横目で見ながらおキヌは令子にた
ずねる。
「横島さん、大丈夫でしょうか? その……あんまり羽目を外さなければいいけど……」
「ヌーディスト村のこと? なーに、大丈夫よ」
「美神さんは心配じゃないんですか」
「おキヌちゃん。今、日本は夏よね?」
「え!? はい……」
「だからそう言うこと」
 令子はにっこり笑っておキヌに説明を始めるのだった。

 一方、横島の乗った飛行機では……
「フンフンフン……。ああ――まだ見ぬ異国のねーちゃんたちー。今、日本男児、横島忠
夫が行くから待っててねー!」
 終始ご機嫌な横島の横で百合子は静かに雑誌を読んでいたが、思い出したように息子に
しゃべりかけた。
「忠夫……まだ気が付いてないようだから言うけど、おまえが楽しみにしているヌーディ
スト村……今の時期、やっていないわよ」
「え!? だって、あそこは夏場にやって入るんだろ?」
「ああ確かにね。でも日本とちがってナルニアは南半球にあるから今は冬なんだよ」
「じゃ…じゃあ……」
「冬の寒い時期に裸で外を歩き回る人間はいないだろうね」
 母親の説明が頭の隅々に染みわたるまで一分………。
「……詐欺じゃあー! うそつきー! それじゃあ、ナルニアに行く意味がないじゃない
かー! 飛行機を戻せー! 日本に帰るー! うわーん……!」
 真実を知って泣きわめく横島。しかし全ては後の祭りであった。
 こうして夢を叶え損ねた少年を乗せたまま飛行機は一路ナルニアに向けて飛んでいくの
であった。

   *** 日本編 おわり ***
*** そしてナルニア編へ つづく ***

 ナルニアへ向けて出発!
 しかし早くも横島の野望は潰えてしまいました(笑)
 一応、一区切りつきましたけど、ここまでの話いかがだったのでしょうか?
 楽しんでもらえたら、うれしいです。
 ナルニア編では父親も出しますんで親父ファンの方は楽しみにしといて下さい(笑)

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