ザ・グレート・展開予測ショー

白いぼうし(そのまんま)


投稿者名:みみかき
投稿日時:(01/10/26)

 (おやっ!? あの人、きつねじゃないかしら、
 おおかみじゃないかしら・・・それとも・・・)
 そんなことを かんがえたことは、ありませんか?

 でも、それは・・・(おいおい)


 アクセルをふもうとしたとき、松井さんは、
 はっとしました。

 (おや、車道のあんなすぐそばに、みょ〜にでかいぼうしが
 おちているぞ。アンドレ・ザ・ジャイアントのかくしごでも
 きんじょに、いるにかな。風がふいたぐらいじゃ、とびそうに
 ないが、つうこうのじゃまだなぁ。)

 みどりがゆれているヤナギの下に、ぶきみな白いぼうしが
 ドッカとおいてあります。

 松井さんは車からでました。
 そしてぼうしをヨイショともちあげたとたんに
 ヨロヨロとなにかが、でてきました。
 「あれっ!?」

 キツネです。
 しっぽがたくさんあります。

 ぼうぜんとみつめる松井さんの目のまえを
 キツネはヨロヨロとあるくと、並木のみどりのむこうに
 見えなくなってしまいました。

 (ははあ、ブービートラップだったんだな。)
 ぼうしの横ちょに、赤いししゅう糸で、小さくぬいとりが
 してあります。
 《このぼうしをあけるものに、わざわいあれ!》

 黒いきぶんになって、ためいきをついている松井さんの
 よこちょを、ふとったおまわりさんが、じろじろ見ながら
 とおりすぎました。

 (せっかくのえものがいなくなっていたら、だれかしらんが
 どんなにがっかりするだろう。)

 ちょっとのあいだ、とほうにくれていた松井さんは
 いそいで車にもどりました。
 うんてんせきからとりだしたのは、あの夏みかんです。
 もう11月ですけど・・・
 いつかったのか、そうぞうもつかないぐらいの
 みごとないろでした。

 かがくへいきのようなにおいが
 風であたりにひろがりました。
 松井さんは、その夏みかんをでけえぼうしにつっこむと
 これでかんべんしてくれやと、てをあわせました。

 車にもどると、みょうにかみのけが多い
 かわいい女の子が、ちょこんとうしろのシートに
 すわっています。

 「道にまよったの。いってもいっても、四かくいたてもの
 ばかりだもん。」
 つかれたような声でした。

 「ええと、どちらまで?」
 「え? ・・あの、あのね、きんじょに、おいしいうどんやさ ん、あるかしら。」
 「爆烈庵のことですね。」
 エンジンをかけたとき、とおくから、びんぼうそうな
 男の子の声がちかづいてきました。

 「あのぼうしのしたです。美神さん、ほんとうっすよ。
 ほんとにタマモを、ほかくしたんです。」
 右うでから、なにやらあやしい光がでてる男の子が
 今どきボデコンな、おねえさんの手を
 ぐいぐいひっぱってきます。

 「ぼくが、もんじゅで、うごきをふうじます。
 美神さんは、じゃばくロープでしばり上げてください。」

 客せきの女の子が、うしろからのりだして
 せかせかといいました。
 「はやく、おっさん。はやく行ってちょうだい。」
 「だれが、おっさんや。」
 松井さんは、あわててアクセルをふみました。
 ヤナギの並木が、みるみるうしろにながれていきます。

 (ナイスバデェなお姉さんがロープをかまえて、
 貧乏くさい男の子が、あやしいぼうしをあけたとき・・)
 と、ハンドルをまわしながら、松井さんはおもいます。
 (どんなじごくが、みえるだろう。)
 ・・・この人、すこしあぶないね。

 すると、のたうち回ってる男の子のすがたが、見えてきます。
 (おどろいただろうな。まほうのみかんとおもうかな。
 なにしろ、キツネがばけたんだから・・・)
 「ふっ・・」
 ゲンドウなわらいがこみあげてきました。
 でも、つぎに、「おや。」
 松井さんはあわてました。
 バックミラーには、だれもうつっていません。
 ふりかえっても、だれもいません。

 「おかしいな。」
 松井さんは車をとめて、考えかんがえ、まどのそとを見ました
 そこは、あびきょうかんのじごくえずでした。

 「タマモ、ずるいでござるよ!一人だけにげるなんて!」
 「ちゅうしゃごときで、にげだして、あんた、ほんとに
 はくめんきゅうびのキツネなの!!」
 「いやなものは、いやなの〜!!」
 「ちゅうしゃなんて、いっしゅんですよ、タマモちゃん。」
 「クールで、プリティなキツネ!かしこいしぜんかいの
 マスコット、キツネ!今、ほごしてやるぞぉ〜!!」
 「こいつがいちばん、いや〜!!」
 「まいかい、まいかい、よぼうせっしゅごときで、てまとらせ
 やがって!おかげで、へんなにおい、かいじまったじゃない
 か!!」

 ブスッ!!
 「ギャァ〜!!」

 まじょのごうもんのようなこうけいを、ぼんやり見ているうち
 松井さんには、こんな声がきこえてきました。

 「よかったでござるな」
  「よかないわよっ」
 「よかったでござるな」
  「よかないってば!」

 それは、このよのおわりのような、
 くらいくらい声でした。
 車のなかには、まだきょうれつに、生ゴミのような
 においがのこっています。 

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