ザ・グレート・展開予測ショー

もっと守ってあげたい〜だから、「今日から俺は!!」のパロディなんだってば〜第二回


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/10/25)

前回、シロは横島と散歩の待ち合わせをしてみることとなった。
(それってデート?)……まぁ、呼び方に規制はしてませんけど…そっちのほうがいいの?
……それはともかく、タマモの所為でその待ち合わせに遅刻寸前!
そんなシロの耳に入る、タマモを拉致した悪漢の情報!どうするシロ?どうなるタマモ?
横島に出番はあるのか?(ある意味、究極の選択)



シロは無言のまま踵を返してタマモのもとに向かった。自分の師が、身を呈して自分を
守ってくれた。その教えを遵守できずに何の弟子だろうか?少なくとも顔向けは出来まい。
(くっ…世話の焼ける奴でござる!待ってろ、タマモ!!)
ペインなる店はすぐに見つかった。赤黒い塗料でけばけばしい外観だったためだ。
「くんくん…血…か、これは。…下衆な真似を……。どうやら遠慮は要らなさそうでござる」
外道な剣士には怒りを覚える。はらわたを掻き毟られたような錯覚が襲う程に。
シロはそこで立ち止まった。別にもう迷ってはいない。決断したらそれを通す。それが
彼女の武士道だ。彼女は自らを戦いのテンションに持っていくために気を落ち着けたのだ。
バシュゥゥゥゥッ、ズバァァァァァッ
彼女の手から烈光が迸り、刃となって扉を断ち割った。だが、その後でシロは突然後悔した。
(しまったでござる!幾らなんでもボス格4人を相手する片手間にザコ共は捌けん!!)
殴り込んだその瞬間に外に飛び出し物陰に隠れるシロ。中の様子を少しでも探る腹積りだ。
「どこのどいつだぁ!?ナメた真似しやがって、カチコミか?オォ、コラァ!!」
中から飛び出してきた者が吐いた台詞は、凡そ世間一般で言う品というものとは
無縁であった。また、相手はどうやら、生物・無生物を問わず適当な依代に自然発生した
低級な妖怪である事も伺えた。彼らは端的に表現するなら、歪な人型を為す習性がある。
理由は、在るのかも知れないし無いのかも知れない。無いのも不自然だが在る必然も無い。
「おう、どーした。誰かいやがったのか?紅染さんに報告入れるか?」
奥からもう一人の声が聞こえた。どうやら頭目はこの事態に気づけない場所にいるらしい。
「そーゆー事なら!いざ勝負!!」
『あ?テメ……』
ダタッ、ザシュッ、ズシャアッ
走りより、瞬く間に会話の主たちを屠るシロ。声をかけてからすぐに構えれば充分間に合う
タイミングであった。それをしなかったこの二人は所詮、戦士には至らなかったのだろう。
もっとも、本来の彼女の考えとはずれている。昂ぶる心を御する事は幼い彼女には難しい。
シロは当然今度こそ屋内に足を踏み入れる。ガラの悪い(シロの内心では断定済み)連中が
犇いてる店内には血やら死臭やら瘴気やら、そして悪意が充満している。人の匂いが一切
無いのは彼らが人間の除霊屋の介入を恐れているからだろう。そう考えると小悪党の
巣窟らしい雰囲気だ。ここにいる数名の妖怪達もいずれも低級な存在だ。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ…なんだ5人か…これならさっさと片がつきそうでござる。」
「なんだと、テメー!どこのどいつだ!?」
5匹の内の1匹が声を荒らげた。それに答えるか迷うシロ。本名を名乗って万が一、美神の耳に
入らないともいえないからだ。散歩してる筈の時間に喧嘩などしてるのが知れたら…
(うーん、正義の味方っぽい世を忍ぶ仮の名かなんか…えーとニンジャーマンとか?)
「おい、テメーの名前を聞いてんだぞ!それともまさか、ど忘れしちまったのか?」
シロが偽名を決めかねてウンウン唸ってるのを端から見てた連中は仲間の言葉に爆笑した。
「う、うるさーい!」
シャッ、ドズンッ
癇癪を起したシロは霊波刀を一閃させて一瞬で手近にいた一匹を両断した。
「な…なんて真似しやがる!ちょっと笑っただけの奴を…」
「やかましい!どうせお主らは言い訳無用なほどに悪党ではござらんか!!
女狐を捕らえてるんでござろう?そいつを奪い返しに来たのでござる!!」
「チッ!そういうことかよ!!」
4匹の低妖怪達がシロに向かって我武者羅に殴りかかる。が、シロは慌てず騒がず受け、
「おりゃぁぁぁぁっ!!」
ザンッ、バシュッ、ズドッ、ジャッ
受けずに先手を取って相手を全滅させた。受けるのは苦手ではない。むしろ天性の動体
視力と瞬発力に加え、対八房を想定して散々受けの修練を繰り返した。戦力としての彼女の
最大の長所である。だが、だからこそ、この程度の相手には使わないし彼女の性分ではない。
「後手に回るのはどうにも好かん…っと、そうだタマモ!……奥の部屋でござるか?」
誰もいない店内でポツリと呟いてから、シロは奥の扉を開け、目の前の階段を下りていった。
(地下にも部屋があるんでござるか…思ってたよりも広そうでござる)
それはそうだろう。彼女には最初、建物の規模に対する判断材料が外観しか無かった。
当然外からは見えない地下に部屋があれば、考慮の外に広さがあることになる。
(と、いう事はさっきので全員じゃない可能性も?多人数相手は苦手でござる)
苦手というか経験が浅いというのが正しい。一人の強者相手の方がこちらも集中できる。
もっとも、こうやって考えを巡らせる事自体、彼女にとっては経験の無い事だった。
シンプルが良い。蜂を100匹潰すよりも熊を一匹のしてしまう方が楽だ。考え込むのも
好ましくないし、バカとはっきり言われるのは癪だが、事実あまり利口な方ではない。
自分には向いてないのだ、今の状況は。泣き言を言わなかったのは、自分が今
一人だったからだろうと思う。頼るべき父は、もういない。しかし、皮肉な事に父の死が、
父の仇を追った事が、師と巡り会うきっかけだった。頼る事だってある。だが、それ以上に、
心の支えなのだ。助けてくれなくとも、居てもらえる事に意味がある。魂の救済だった。
正直、父の死に自分は捨て鉢になっていたはずだ。師に倣い、友を救おうと決意したが、
代償として、師を裏切った。本当の意味で、自分は今、一人だったのだろうと思う。
孤独は、恐怖の対象ではない。どんな強敵よりも抗い難いが、なればこそ、自分にどうする
事もできない存在に胆を冷やす必要も無いし、どんな隣人よりも自分に近い場所にいる。
正体の知れてる物に恐怖はしないものだ。だが、孤独を知るというのは恐ろしい事なのだ。
とりわけ、彼女にとって、誰かが傍に居る事は当り前の事なのだから。階段を下りきった
その先に、一つの、真っ白な扉があった。何故かそこだけが、ペイントから避けられていた。
(やるべき事は決まってるし、負けるつもりも更々無いでござる。)
ザシュゥゥッ、ガランゴガン
霊波刀で破った扉の破片が落ち、その大音声で中に居た鎧武者風の4匹がこちらを見やった。
「貴様は…?」
「拙者の事などどーでも良い!お主らが捕まえてる狐を、こちらに渡してもらうでござる!」
「なるほど、奴の仲間か。…フン!まさかすんなり返すとは思っちゃいまい?」
「すんなり返せば、お主らのちっぽけなプライドを無くさずに済むでござる。」
シロは昂ぶる感情を抑え込もうと、無理に冷徹に振舞った。その場のみの努力など無駄だが。
「愚かな…我々がどのようにして名を上げたか知る必要があるらしいな…」
「どうせ刃向かう奴1人づつ4人で取り囲んで倒したんでござろう?拙者をなめるな!!」
吼えて霊気を練り、霊波をきめ細かく丁寧に剣状に編み上げる。今日組んだ霊波刀の中で
最高の出来だ。気持ちが研ぎ澄まされてる。まるで自分と周囲の状況を眺めてるみたいだ。
第一歩は、シロは全く躊躇わずに敵陣に全力で飛び込んだ。シンプルがいいのだ。
「ほぅ?察しがいいな。だが、四方からの斬撃の恐怖をなめてるのは貴様の方だ。」
ビュゴウッ
シロの耳の傍で風が唸った。四つの冷たい筋が、シロに向かって真っ直ぐに伸びていった。
「この……!」
ガキィン、ギャギィッ
霊波刀で先ず正面、続いて向かって右側の斬撃を叩き落とした。が、それが精一杯だった。
ヒュパァッ、ピィンッ
右側に身体を倒し、背後の殺気から逃れるが、左側からの太刀が浅く腕を捉えてくる。
「くぁう!?」
左腕に紅く細い線をしかし、くっきりと滲ませ、うめくシロ。恐怖は無いが驚愕はする。
(確かに、正面からの8撃よりも受けづらいでござる。どうするでござる?)
劣勢だ、ハッキリと。4対1だとかそんな小さな事じゃない。複雑に悩むのは向いてないのだ。
(せめて四方を囲まれてなければ……)
思考の迷路という奴はえてしてそうだが、自身が気づかない内に矛盾した事を
考えているのが原因だ。特に生真面目な性分だと考え込み始めると深く嵌まってしまう。
シンプルな答えは出せる。本人が気づかない内に深いところに入ってしまってなければ。
「1回凌いだだけでも大したものだ。だが、そんな動きの繰り返しはスタミナがもたん。」
それは、勿論その通りだ。だが、事態はもっと逼迫している。次撃を凌げる保証が無い。
「どりゃぁぁぁぁっ!」
結局、解答は何時だってシンプルがいい。後手に回るのは性分じゃないなら自ら攻めるのみ。
「フ……ンッ!考えてその程度か!!」
四天刀とて百戦錬磨の猛者の集い。四方の一角が狙われた事も無論ある。
隣りあった二名が素早くフォローに入る。
ビュオゥッ、シャウッ
「うぁ!った!!」
右の太刀は身体を左に寄せ、左の太刀は態勢を低くして、それぞれやり過す。
その瞬間に前後から縦一文字に剣閃が伸びる。――刹那、シロは勝機を見出した。
「おおおぉぉぉうぉぉおお!!」
ガギィンッ、ジャギャアッ
頭上から迫る二筋の銀光を打ち弾き、その反動さえものともせずに真上に跳ね上がる!
(前後左右が封じられているなら、上にいきゃいいのでござる!!)
ガスッ
「ぐおっ!?」
四対の鎧武者の一角を、右足で勢いよく踏み抜き、シロはそのまま包囲網を脱する。
「貴様!」
「へっへーん♪部屋の隅に陣取っちまえば一度に大勢に斬りかかられずに済むでござる」
「たわけが!貴様の背後が壁なら、二人で充分よ!!」
「げげっ!?」
そう、壁と密着状態では後退も出来ない。ばかりか、腕も最大限に振り回せないという窮地。
(やられるっ!!?)
シロは、成す術も無くへたり込む。振り下ろされる白刃。
ザスッ、ドスッ
つづく

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