ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(余裕)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/24)




 ー終曲ー



 互いの、距離にして3メートル程前方の空間で、衝突した『刃』と『鞭』は、激しい閃光、次いで爆風を起こして四散した。
『く・・・!』
 双方、共に吹き荒れる爆風を前に、呻きながらも、空いている腕で飛び散る破片などから身を守る。
 相殺。
 風の刃は鞭を斬り裂く事は出来ず、また鞭も刃を押し退ける前に勢いをほぼ殺された。
 そうして互いに、睨み合う内に・・・
「ぁ・・・み、美神さんっ!」
 ハッと何かを思い出したかの様な表情で、美神の右後ろにいる金髪の青年が声を上げる。
「ーーー何よ?」
 振り向きもせずに、彼女は言った。その端的な一言にこれでもかという程、今の自分は不機嫌だというサインを込めて。
 金髪の青年は、深々と、気の毒になる様な沈欝な表情をして嘆息した。
 ややあって、気を取り直した様にし、銀髪の男の方を向く。
「君は・・・」
「何だ?貴様は・・・?」
「聞きたい事がある!君は一体何がもくて・・・」

 金と銀の髪をした、絶世の美形同士が夜の屋上で向き合う。
 それは、その光景はどこか現実離れしており、幻想的、倒錯的な雰囲気をかもしだしす・・・そう!お互いの瞳に映るのは、たった一人の姿でしか無く・・・二人はやがて・・・

「二人はやがて・・・寄り添う様にし・・・怪しくも、美しい、二人だけの甘美なる世界へとその身をゆだ・・・」
「だああああああっ!!!!」
 その見事な金髪を思わず掻きむしり、ビシィ!とーーー別のストレス解消法に没頭し始めた美神を指差す。
「美神さんっ!嫌すぎるナレーション入れないで下さいっ!タイガーも妙な事にテレパシー使うなぁっ!」
 半眼で、美神が言い返す。
「いいでしょ別に?こういう機会なんて滅多にないんだし!転がりこんできたチャンスをみすみす逃すなんて・・・とてもプロとは言えないわ!」
『そりゃ何のプロですか!』
「ビデオカメラを持ってこんかったのが、悔やまれるノ〜・・・お!丁度あそこに『・・・カメラ』が!」
『行くな!行かんでいい!』
 何をやっているの?と、誰もが口を挟みたくなる緊迫感台無しな『恒例』のやりとり。
 そして・・・記すまでも無い事だが・・・

 ーーーーーーーーープチン!

『ふ・・・』
「あれ?美神さん、何か言いました?」
『ふざ・・・』
「言ってないわよ、タイガー?」
『ふざ・・・け・・・!』
「ワシも別に・・・空耳じゃないのかノー?」

  『ふざけるなぁ!貴様らぁぁーーーーー!!!!!』

 ・・・彼は怒り狂った。哀れなまでに怒り狂った。

 
 捜索部隊が・・・もはや持病に等しい悪癖を思う存分120%発揮して、『敵役』をおちょくっているーーーその頃。

 肩で息をし、滝の様に汗を流しながら、犬科の彼女がGメン本部ーーーその作戦会議室へと姿を現した。

「お、終わったでござるぅぅ〜〜〜・・・」
 焦点の合わぬ目をし、座りこむ。
 そんな彼女の鼻腔をくすぐるものがあった。
「クンクン・・・あれは?」
 ガバ!と起き上がり、会議室の卓の上を見る。
 そこに在るのはとことんジューシー、それでいて見るからにぶ厚い特大ステーキ。
「シロちゃん、ご苦労様・・・これは私からの・・・」
 ここ『Gメン』の重鎮、美神美智恵がそう言い終わる前に、犬神族の少女、シロは『ご褒美』へと飛びついていた。
 やれやれと・・・美智恵が肩をすくめる。
(襲われたGメン達も、これで一安心・・・会長や氷室さんにも苦労かけたわね・・・)
 何者かの襲撃を受けたGメン達は皆・・・揃って霊力が枯渇している様な状態だった。
 それは、まるで霊刀に斬られたかの様に、全員揃って傷口からごっそりと霊力が奪われている。
 その為・・・急速に心音、脈拍と、共に弱まっていく彼らを救うには、普通の病院に運びこむよりも、ヒーリング能力の持ち主が数名揃っているこのGメンに・・・と判断が下された。
 無論、その数名には、シロの他におキヌ、唐巣神父も含まれており・・・タフなシロは例外として残りのヒーリング能力者は皆、襲われたGメン達と枕を並べている。
 そこまでを考えて、美智恵は『自分の椅子』に腰かけた。
 目の前には神族、魔族の二人(一人はカラータイマーが点滅した為、強制帰還)に外部協力者の女性、それとはぐれスイーパーの彼(と飢えた狼少女)が揃ってこちらを見つめている。
 そんな中で、美智恵は内心、呟いた。
(令子・・・上手くやってるかしら?)


「み、美神さん!どうしていつも僕らはこうなるんです!?」
「うっさい!もうこうなったらタイガー!盾になんなさい!」
「い、嫌ジャ!ワッシはエミさんにエミさんだけにーーー!」


 吹き荒れる『風』の中、彼らは『余裕』だったーーー



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