ザ・グレート・展開予測ショー

あなたをScandal!【2】


投稿者名:黒犬
投稿日時:(01/10/22)

「変ですよね」
「変よね」
「変ですわね」
「変だよな」

学校帰りの学生たちで賑わうここ、喫茶店『神砂嵐』において、どこかで聞いた事のあるようなやりとりがなされていた。
こちらのメンバーは発言順に小鳩、愛子……そして六道女学院でのおキヌの親友、弓かおりと一文字魔理である。

実はこの四人、今ここには居ないおキヌやタイガーたちを介して知り合い、結構仲良くやっているのだ。


例の『お断り事件』から一日。
今日も横島は、ホームルームが終わったとたん急いで帰っていった。
まさしく、声をかける間も有らばこそ、だ。

「あの横島が女からの誘いを断ったってのか…」

『あの』をやたら強調して首を捻る魔理。

(おキヌちゃんが知ったら心配すんだろなぁ…)

親友の気持ちを思いやり、小さく溜息をつく。

「あのケダモノが、女性に接する機会を自ら放棄するなんて、考えられませんわ。きっと何かロクでもない事を企んでるに決まってますわ」

吐き捨てるように、かおり。

(あんなケダモノの事はどうでもいいですけれど、良からぬ事をしているのなら、令子お姉様にご迷惑がかかる前に阻止しないと。それに氷室さんのためにも…)

優しすぎる性格の親友に思いを馳せ、テーブルの下で拳を強く握る。

女同士の友情は熱く、そして美しい。
二人とも、「横島が下手な悪さをすればおキヌが傷つく」という事に危機感を感じていた。
なにはともあれ、優しすぎるのだ。あのの親友は。


「とにかく、昨日はそれで大騒ぎになってたわ」

冷静さを装って愛子がこぼす。
こめかみのヒクつきは隠しようもないが。

ちなみに昨日、二人の石化が解けたのは既に夜中と言っていい時間であった。
彼女達の受けたショックの大きさが伺えるというものだろう。

「私も気になったんで昨日、何度か横島さんの部屋を訪ねたんですけど…」

夜中になっても帰ってこなかった、と説明する小鳩。
その折、横島の様子を見に来たおキヌとばったり鉢合わせになり、お互いに訪問理由を誤魔化す為に、必死で延々三時間も世間話を続けてしまったのは彼女たちだけの秘密であった。

「まぁ、原因を考えるのはピート君たちを待ってからにしましょ。あ〜ぁ、こんなのちっとも青春じゃないわ…」

机に腰掛けたまま脚をぶらつかせ、溜息をつく。

机妖怪である彼女は当然、本体である学校机を伴ってここ――喫茶店――に来ていた。
他の一般客からの妙な視線や、カウンターの向こうで店長が泣きそうな顔をしているのは、きっと気のせいだろう。たぶん。







――カランカラン♪

入り口のカウベルに軽快な音を奏でさせつつ、件の待ち人たちが店内に入ってきた。

ピート、タイガー、そして雪之丞である。

三人は彼女たちから電話で依頼を受け、横島の部屋を――勝手に――捜索に行っていたのだ。
この際、法律とか礼儀とかいっためんどくさい物は心の棚の最上段に置いておくことにする。

「どう? 何か出て……きましたのね、その様子だと」

かおりが言った通り、三人の顔色は水死体もかくや、という状態だった。
皆、一様に表情を硬化させ、立ち振る舞いもぎこちない。

(墓場から迷って出たゾンビはこんな風かしら……)

思わず考えてしまうかおりである。

「…で、何が出てきたの?」

これはただ事ではないと、焦りといらつきを含んだ声で愛子がせっついた。
口には出さないが、他の面々も同じ気持ちを瞳に映して男3人に視線を向ける。




「………」




無言のまま、雪之丞が背負っていた鞄の口を開けて見せた。
ピートとタイガーは、悲しげに顔を背けている。




「「「「………」」」」




ヌイグルミ、色鉛筆、お絵かき帖、縄跳び、少女マンガ、カラーボール、etc・・・・・・

そして、とどめに十歳くらいと思しき少女と横島の映った写真。
その中であろう事か、少女は横島の頬にキスなどしている。




「……手遅れでしたのね」
「……あぁ…おキヌちゃん、可哀想に」

絶望を含んだ声を洩らしつつ視線を交し合う二人。
愛子は「……あは…あはは…」と妙に虚ろな笑いを洩らしているし、小鳩は既に失神していた。

ピートが辛そうに顔を俯かせ、タイガーも拳を震わせている。




「……殲滅しよう」

ぽつりと放った雪之丞の一言が、酷く寒々しく店内に響いた。


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