ザ・グレート・展開予測ショー

十月は運動会・場合によっては永遠に始まらない


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/10/21)

9月18日20:03
フェニックス!フェニックス!フェニックス!おおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉ……
立ち上がりました、まさに不死鳥!何人も彼を止める事は出来ないのか!?
足取りはおぼつかず、アンデッドそのもの!いや、その不死身こそがその証かーー!!?
今日も立ったぞフェニックス・DZ・killer!!性懲りも無いぞ、何故再度立ち上がる!!!?

「あ、これなんか良さげ」
彼女はそれだけを、何の感慨も込めぬ口調で唇から紡いだ。
我が子が腕の中で身じろぐが、そんなものは無意識で対応できる。
彼女が目に留めたのは、テレビに映った総合格闘技の中継である。
なにやら貧相な小男が力士に幾度となく吹き飛ばされている。
そしてその度に、「もう無理だっつの」とか、「あの実況絶対殺す」だのとうめいて
小男が立ち上がるのである。………であるのだが、彼女はそこまで凝視していなかった。
あっさりとチャンネルを変えると、ソファーにおもうさま身体を預けてくつろぐ。
……ちょっと待て、無謀にも力士に挑む勇敢で使命感に燃える男の生き様を何とする?
だが、その冷酷な女は無情にも裏番組で悦に浸ってその夜を過ごした。
なんてむかつくオバハンだ…………別にあの選手は筆者とは無関係だが断じて許し難い。


10月10日05:30
少年は路傍を眺めるようなぼんやりした表情で幾度となく躊躇ってきた言葉を発した。
「どうしてこんな事になった?」
それは、自分にはどうしても答えが出せない問いだったのだ。だから吐き出した。
「…………事の起こりは、先月の十五日だ…………」
少年の隣にいた彼の知人――黒々とした長髪に引き締まった体躯の長身の男――が語る。
少年はといえば、丁度先月のその日、顔馴染の女性に散々詰られた事を思い出していた。
「オカルトGメンは悪霊を追跡していた。組織立った相手でね、彼我の戦力は互角だった」
なるほど、オカルトGメンが悪霊を追跡するのは道理に適ってる。通例どうりの職務だ。
また、悪霊が徒党を組んだことに関しても、ましてやそれによって戦力が拮抗した事とて、
取り立てて騒ぐ事ではあっても驚愕すべきことではない。いたって自然な話だ。
「除霊の基本はその言葉が表す通り、絶対の勝利が約束された状況だ。
ならば互角のまま戦闘するわけにはいかない。GS協会に応援を要請した」
物量で優位に立つのは些か力任せと感じられるかもしれないが、オカルトGメンには
お馴染みの手口である。そして、そういった大規模な応援が必要な場合、オカルトGメン
自らを除いて、頼れる相手はGS協会をおいて他には無い。当然の結論といえよう。
「だが、協会からのメンバーは集団戦闘に不慣れなうえに功を焦り、作戦をフイにした」
これも、よくよく考えれば至極自然である。協会は普段除霊用のメンバーを私兵のように
要しているわけではなく、免許取得者が協会員として任意に召集に応えるのである。
普段個人で除霊を行ってる者達、そのうえ協力する相手は政府の庇護を受けた商売敵。
これだけの条件でチームワークに期待は出来まい。この結果とて当然のものだ。
「この一件が元でGメンと協会は完全に対立してしまった。
先生はこの双方に顔が利くから、すぐさま和解にむけて話し合いの席を設けられた」
自然だ。事情を知る者にとっては何の不条理も落ち度も無い、自然な展開である。
「その席で先生が提案したのが…………」
『体育の日特別企画、霊能運動会バトルロワイヤル♪
今日は皆さんにちょっと、殺しあいをしてもらいます☆』
「何故だぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!?」
拡声器から響く、快活そうな女性の声に勝るとも劣らない声量で叫んだ少年がいた。
結局、不条理が発生したのは「彼女」が関った時点からだったのだ。
…………………………………………………………………………………………
…………………………………――。
ルールは以下のとうり。最低限、GSは強制参加、飛び入りも歓迎
1つ、各人、騎馬戦を除くすべての競技に参加自由。ただし競技の進行上、3つが限度となる。
1つ、金・銀・銅メダルはそれぞれ3点・2点・1点とし、合計点数6点以上の者は騎馬戦出場。
1つ、騎馬戦は地雷原でのバトルロイヤル方式で最後の一組になるまで戦う。
1つ、騎馬戦に勝利したチームの4名はGS資格試験のオフィシャルコートにてトーナメント。
1つ、優勝者は共同戦線の責任を取るべき霊能者、あるいは集団を選ぶ権利を与えられる。

なお、自由種目に「マリアと綱引き」があり、何人で挑戦しても構わないが、
同一人物は二度は挑戦できず、一回の勝利で100ポイントを参加者に均等に振り分ける。

最後に、ゼッケンの裏に貼付された使用済み吸引札は選手敗退時に自動解封する。

男子更衣室にて
少年――横島忠夫は、学校で使っているトレーニングパンツと新調のパーカーに身を包み、
しっかり運動できる靴を履いてきてしまっている自分に涙せずにいられなかった。
骨の髄まであの血族の言いなりになってしまっている。
しかしそれをいうなら傍らの長髪――西条輝彦もサッカー選手のような青のウェアで
上下を揃え、戦闘体制を整えていた。彼も悲しいさだめの同胞であった。
更には伊達雪之丞はいつぞやの黒い拳法着に「天」と金糸で刺繍した物を着用し、
彼は優勝すればGSとして充分な実力に足ると認められ、資格取得の再選考が行われる。
ピエトロ・ド・ブラドーは手を加えずに以前の白い拳法着そのまま。
タイガー寅吉などはその巨躯に似合わぬハーフパンツにミリタリーパターンのシャツで
微妙に彼らしさを残していたりする。彼の場合、誰の指示かというと、いうまでもあるまい。
本部席に呼出された唐巣神父とマリアの整備係を務めるDrカオスはこの場にいない。



続けるつもりはこれっぽっちも無いのが本音だけどこれじゃ全然おさまりきらない
しかるに私に続ける意志がない以上、私以外の誰かが続けない限りは終わり
そう、これは終わりと呼ばれるものです。それで足りなきゃ「劇終」「フィナーレ」
「THE・END」
私は一編の、イヤ、一片の短い話を書いた。そこで私にとっては終わり。
誰かが新たに紡いでくれれば、私は少なくとも幸福には思う。
だがだからといって幸福でない事を不幸だと悲観したりしない。
ただ、誰かが埋めてくれれば、そんな覚悟も無用になる。それは頗るいい気分だろうと思う。

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