ザ・グレート・展開予測ショー

過去独白(マーロウ美神令子を語る その10)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/10/20)

高校生程度じゃ経済なんぞ、生活に然程重要じゃないだろうがよ、
美神のお嬢ちゃんはちょいと、違った。
「すいません、明日までにちゃんと用意しておきますから・・」
「そうですかぁ。まったくお願いしますよ」
と、可愛い女の子に言われちゃ、金とやらを取りに来た爺さんも文句は出ねェわな。
えっと、たしかNHKとか、言ったか。
唐巣のオッサンは・・人は好い様だが、な。
集金があるときぐらい、手元に幾許かは追いとくだろ?
ドアを閉めた嬢ちゃんの第一声は文句で、
「まったく、そのぐらいは教会に置いときなさいよ」
だが金を銀行という他人に預けたのは嬢ちゃんの意見だ。
「神父、ここにお金があると、喜捨とかいって、あげちゃうでしょ!」
とは言ってもそんなに有る訳じゃないだろうがな。
「明日、依頼者から少しでもふんだくらないと・・・」
あまり感心出来る台詞じゃねぇが、それもしょうがないと思う。
そういえば、こんな話しもしていた。
「私だって、女の子なんだから、少しは御洒落したっていいじゃない!」
「それは神の御心に反します、無駄な出費です」
「でも!だって、こんな・・流行遅れの私服じゃ遊びになんか」
「どうしてです?穴が開いている訳でもないのに」
どうどうめぐりになるから、これで終わらせようか。
時にあの事件以後、嬢ちゃんの能力は飛躍的に伸び、伸びたと同時にある悩みが出た。
「あーあ、学校でやったこの武器も壊れちゃったわよ」
その事件は、低ランクだったな。俺と嬢ちゃんだけで、問題無く出来たんだが、
持参した武器、廉価ではあったが、破魔矢が真っ二つになっていた。
霊の仕業じゃない。破魔矢そのものが耐え切れなかったんだ。
「困ったわ。そりゃ霊的な勉強にゃ問題ないけど、現場でこれじゃあ」
ふぅ、とつく溜息も今までのそれと違って、聞いてて心地が良かった。
「もっと、高い武器を持っていれば、きっと容赦無くできるでしょうけど」
そんなモン買うお足が無いんだろうな。
だって、さ。俺は仕事の有った日、ついでに嬢ちゃんと買物をしていた。
「やぁ。教会のお嬢さん、いつものおからだね!」
「はいー、そうなんですー。ウチの神父大好きなようで」
「そうなの。でもたまには豆腐も買っていってよね」
「そのうちねー」
そう答えているが、おからなのは、経済的な問題であるのは、双方理解しているだろう。
他も似たり寄ったりだ。
野菜はその日の大安売りの品、魚も季節で取れる下魚、そして肉は・・
「教会だから出せないですって?冗談じゃない。お肉を買うお金が廻らないのよ」
な、何だって?に、肉が全くでないのか?
「何そんな驚いてるの?でもそーよ。お肉なんてこの所、ほっとんど口にしてないわ」
・・・この時ほど、嬢ちゃんが憐れに思えた事は無い。
「忘れるトコだったわ。神父に頼まれた買物。ちょっと寄るけど、マーロウいい?」
御従卒致します、御姫様だ。
その場所は、ほれ知っているだろう、オカルトグッツは厄珍堂だ。
「こんにちわー、厄珍さん」
俺の耳にテレビを消す音が聞こえたから、
「おぉ、唐巣神父ントコの嬢ちゃん、いやー、前見たときよりも綺麗になってるある」
「ちょっとぉ、三日前にあってるでしょ?」
「そうだったアルな。でもお尻をちょいと・・・」
グラサンチビ、、おまえさんの大切なモノを食いちぎったろか?
だが、そういう行為をしてくる奴の結果はたんこぶだ。
素晴らしい拳骨の音が響いて来るんだ。
流石は元スケバン。
「そーゆー事すると、お巡りさん呼ぶよ!全く。ほら、神父が頼んでいた品はどれ?」
「イタタタ、もうちょっと、手加減しないと、男の子と付き合えなくなるアルの事よ」
「結構よ!」
いやぁ、頼もしい。
まぁ、頼んである品もがきの御小遣いで事足りる程度のモンばっかだ。
用意も既にしてあったところが、矢張り、客商売なんだろうな。
「その、神父さんはともかく、令子ちゃんには、物足りない武器じゃないあるか?」
ほぉ、ちったー見なおしたぜ、グラサンチビ。
「そうなのよ、例えば、こういう武器を扱いたいけど」
棚にある、決してこの店では効果の域を脱してない、破魔札を取るが、
「駄目ねぇ、こんな値段じゃ」
又、溜息だ。
「そうあるかー、そんなに逼迫しているアルかぁ。そうだ、コレプレゼントするアル」
そういって厄珍が袋に入れた品は棒切れだ。
「何?コレ」
神通棍と、言う武器らしいが、その時は形式だけの感謝しただけだったかな。
俺は嬢ちゃんを教会まで付き添って家路に向う予定だったが、既に神父さんがいてね。
「おかえりなさい、令子君。ご苦労さん、御仕事はどうだった?」
「巧くいったけど、やっぱり武器が・・」
「そうですか、まぁ慌てる事は有りませんよ」
嬉しそうな笑顔で、今度は俺に、
「マーロウ君もご苦労さん、若し良かったら今日は夕食を一緒に食べていかないかい?」
「そうすれば、いいんじゃん?」
嬢ちゃんの一言が無かったら、俺は家に帰っていっただろうな。
・・・・。
魚の骨か?コレ・・・おい。
犬だぞ。俺やぁ、ネコじゃねーんだ。
そら、席をおなじゅうして飯を食わしてくれるがよ、犬だぜおりゃ。
外で食う骨付き肉の方が何十倍も助かるだがよぉ・・。
今の家で出してくれる残飯よりも酷い食事じゃねーか。
なんか悲しくなって来たな。俺。
「そういえば、令子君。修学旅行の件ですがね」
思い出したように、神父は口を開いた。
「えぇ。結構な出費でしょ?それに、行かない子もいるんだし」
「そうはいきませんよ、授業ですから・・」
「と、いってもあんな大金、すぐに出るの?」
神父は顔を赤くしている。出ないんだな。
「無理する事無いわよ、まったく貧乏って嫌ねぇ」
「・・実はある方に相談したら・・、全額出資してくれると」
嬢ちゃんの顔が複雑な物になった。
「誰よ、ソレ」
神父は少し言いよどんだが、
「公彦氏だよ」
さっと、嬢ちゃんの顔が怒りになった。テーブルに拳をたてて、
「入らないわ!あの男が出した御金だなんて!・・・おかねだなんて・・・」
御馳走様も言わず、嬢ちゃんは、部屋に向っていった。
神父のオッサンは何もいえなかった。
「無理も無いよ。公彦。お前は美智恵さんの葬式にすら、出てこなかったんだ」
親父さんについては、ご存知の通りだ。もう何年もあっていない。
俺は心配になって食事もとっとと切り上げて嬢ちゃんの部屋に向った。
「・・・マーロウ」
俺に涙をみせないようにと、袖で拭いてから、俺を抱き上げてね。
「ねぇ。マーロウどうしてママはあんなのと、結婚したんだろうね」
俺は詳しくしらねぇ。唐巣のオッサンなら・・。
「ううん、そんなのはいいの。でもね。私はあの男の世話にはなりたく無いの」
でもよ、たしか嬢ちゃんにいっつもくっついてくる女の子がいたじゃないか、悲しむぜ。
「・・・貧乏って嫌ね」
あぁ、そうだな。
俺はある決意をした。
下で神に祈っている唐巣のオッサンだ。
「マーロウ君。令子君の様子は?・・そうですか、ご苦労様です」
男の情けない顔なんぞ、見ていて気持ちのいいものではないな。だが、ここは・・
俺は胃袋を収斂させて、つまり物を吐いた。
「ど、どうしたのですか?マーロウ君」
神父は驚いただろう。だが、俺が吐いた物に釘つけになった。
「こ、これは!!」
あの日、美智恵のママさんが落し物。指輪と言う奴だ。
「これは・・・純銀製の!どうしてこのような物を?」
あぁ、これを出せば取りあえずは修学旅行費とやらも出るだろうぜ。
嬢ちゃんに使ってくれや。
何を言おうか考えている神父を跡目に俺は家路に向かった。
その夜、今の飼い主が肉団子を夜食に用意してあった。
その後だがな、結局あの指輪は俺の元に帰ってきた。
嬢ちゃんが修学旅行に行かなかったから?だって。
いや、もう一人、嬢ちゃんというより唐巣のオッサンに出費してくれた人がいたようだ。
なんでも嬢ちゃんの通う学校の理事長とか、でね。
女ながらにかなりのおえらいさん、という事らしい。
只、貧乏は嫌だ、と嬢ちゃんは言っていたがよ、独立は考えていないようだった。
今確かにかなりの力は持っている。だがよ、現状では唐巣神父の足元にも、って実力だ。
本気でずっと神父のサポート役をしていく積もりもあったハズだ。
今では絶対無い、と否定するだろうがね。
それも、その筈だ。否定の原因は神父にある。
それとな。
嬢ちゃん、と俺は呼んでいるが、その体つきは・・どうみても大人の色気が漂っていた。
最も犬の俺には対した問題ではないがね。

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