ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラ復活の日々三日目『空』


投稿者名:いたけし
投稿日時:(01/10/20)

「ねえ起きてヨコシマ、ねえ起きてよ」
今日の横島はその言葉から始まった
「ねえ起きてよ〜、もう八時よ」
横島は一応寝てはいるが意識はある(簡単に言うとたぬき寝入り)、しかし横島は目を開けようとはしなかった、それは横島の恋人同士による行為を期待してのことだった
「もう、起きないのね、だったら私が強制的に起こしちゃうわよ」
にっしっしっ、と横島は待ってましたとばかりに不適な笑みを浮かべルシオラが近寄ってくるのを待った
横島の狙っていた行為、そう恋人同士だけが許される行為『目覚めのキス』を狙ってのことだった(眠り姫では恋人同士で無くてもやっていたが、あと白雪姫も)
(さあ来いルシオラ、我が口へあつ〜いキスをカモ〜ン)
そんな邪のことを考えていると
ガンガンガンガンガン
と、うるさくて頭に響くいや〜な音が頭の近くでなっていた
「ぐが〜、うるせ〜!」
横島は布団から飛び起き音の正体を探した
「ふぅ〜やっと起きたわね、ヨコシマ全然起きなかったんだもの、でも〜ちょっと強引過ぎたかしら」
ルシオラの言っていることがよく聞こえなかった、ルシオラに見惚れていたわけでなく(たしかにかわいいけど)
さっきのうるさい音で耳がいかれていたからだ
さっきのいやな音の正体、それはフライパンを堅い包丁で叩いている音だった
(これじゃあ恋人じゃなくて、お袋やないか〜)
そう思いながらも耳が痛くて、うまく声に出せない横島であった


「はい、ヨコシマはこの布団を屋根に干して」
今日はルシオラとどこかへ出かけず、溜まっていた家事をすることとなった
横島は屋根にあがり、二組の布団を広げた、横島の布団とルシオラの布団
横島は二組の布団が仲よく隣り合うように広げた、特に意味は無いがちょっとした願掛けのようなものだ
(ずっとふたりが仲よくいられますように)
そう願って布団を干した

俺ががふと空を見上げると飛行機が空を泳いでいた
特に変わっている飛行機ではない、どこでも見れるような飛行機、だけど俺は手を伸ばし触ってみたくなった
俺は手を伸ばしたが俺の手は空を仰ぐばかりで飛行機には全然届かなかった
どんなに伸ばしても届かないもの、どんなことをしても無理なこと、あの飛行機を見てるとそのようなものが次々に浮かんでくる
しかし本当にそうなのか、もしここで文珠を使えばあの飛行機に触れることは不可能では無いだろう、栄光の手を出し伸ばせば無理なことではない
だけど飛行機に触れる意味はあるのだろうか
触りたいから触れて、ただ自分の欲望を満たす、ただそれだけのこと、まったく意味の無いこと
俺の中でこの飛行機のこととルシオラのことが少し重なった
俺がただ会いたいだけにルシオラを蘇らせて、結果的にルシオラの命を短くさしてしまった
もう1度ルシオラに触れたい笑顔が見たいと思ってアイツを生き返らせて、これでよかったのだろうかただの自分のエゴではないのか、そう考えてしまう
『ずっとふたりが仲よくいられますように』か、ルシオラのことも考えないで『ずっと』なんて使うなんて本当にエゴイストだな俺は・・・
そう考えると少し泣けてきた

「ねえヨコシマ、なにしてるの」
屋根にルシオラがあがってきて、横島に尋ねてきた
「んっ、どうして空は青いのかな〜って思って」
横島はさっき思っていたことは口にせず、心に仕舞っておくことにした
「え〜と確か何かの本で読んだことがあるわ、え〜と太陽から放射された可視光線は地上に届くまでの間に通る、大気中に含まれる空気分子に反射して分光され・・・波長の長い赤寄りの光は乱反射して地上に届きにくく残りの光のみが目に入る・・・よって空は青く見えるのよ、わかった?」
「いや、全然」
横島にとってこのテの話はチンプンカンプンだった
「そういうのじゃなくて、もうちょっと女の子らしい、ロマン溢れる意見を聞きたかったような」
「じゃあなんでヨコシマは空が青いか知ってる?」
「え〜と、海が反射して青いとか」
「ふふふ、そんなの私と全然大差ないじゃない」
「それもそうだな」
「じゃあ私は部屋に戻るから、それとさっきの話、私、生き返れてよかったと思ってるから、別の存在じゃなくてまた私としてヨコシマに会えてよかったと思ってる、だから私は後悔しないから、ヨコシマもそんなに気を落とさないで」
(俺はさっき声に出してたのかな、それともアイツは俺のことなんでもわかっちまうのかな)
「ははは」
横島はなにかふっきれたように青い空の下で笑った


ふたりはすることが無くなったので部屋でだらけていた
そこに横島がある提案を出した
「なぁルシオラ、腕相撲やらない」
「別にいいけど、人間のヨコシマが魔族の私に勝てると思う?」
「そう言われるとそうだけど」
「じゃあ私が少しハンデをあげる」
「ハンデって、指1本でやるとか」
「ううんそんなんじゃない、勝ったら私を・あ・げ・る」
「いまいまなんて、言った」
「だから私たち、あの〜その〜恋人同士でしょ、だから・・・」
恥ずかしがって顔を隠すルシオラの動作が横島の煩悩を刺激した
「そんなこと言わないで今すぐにでも〜」
飛びかかる横島をルシオラはなんとか避けて
「ばっばか、こんな真昼にできるわけ無いでしょう」
「ううっ、夜までおわずけか〜」
「その前に腕相撲の勝負に勝ってからよ」
「望むところだ〜」
横島はそそくさとテーブルを用意し、自分の腕をもうすでにテーブルに置いて用意してある
ルシオラも腕をテーブルに置き、横島の手をガッチリ握る
ルシオラの手は柔らかいとか思っている場合ではなかった、睨みあう目と目、ガッチリと組み合った手と手、荒い息遣い、一瞬で決まる勝負、準備は整った
「レディー、ゴー」
どちらともなく言ったその言葉で勝負は始まった

「うおぉぉぉぉぉ〜〜〜」
俺は勝負を一瞬で決めるつもりで体を左へ傾けた
腕相撲は先に体重をのせた方の勝ちだ
今は右手で勝負しているので
からだ全体を左に傾けられたら勝ちと言える
もう少し、もう少しで俺の体は完全に傾く
「うおぉぉぉぉぉ〜〜〜」
バキッ
その音と共に俺の体は完全に左に傾いた

「勝負あったな」
「ええ」
俺の体は完全に左に傾いていたが
俺から見て左側にふたりの手がない
「まさか」
俺から見て右側
つまりルシオラから見て左側にふたりの手があった
「もしかして、さっきの音は」
ルシオラがさっと俺の手から離すと
「ああ〜俺の腕が〜曲げることが出来ない・・・もとい、曲げてはいけない方向に曲がってる〜」
俺の腕は見事に折れて俺の意志とは関係無く
ぷらーんぷらーんと揺れていた
「勝負あったわね」
ルシオラがにひひ〜と笑いながら俺に言ってくる
「いやまだだ、まだ左手が残ってる、勝負だ〜」
俺は自分の右腕が折れていることを忘れ血の涙を流しながら無我夢中で叫んでいた
「わかったわかったわよ、今日はいつもより念入りに体を洗っておくから、それより早くその折れた腕を直しに病院に行くわよ」
「よっしゃ〜、横島忠夫、少年から男への扉の前に立つことができました、ありがとう、親父、母さん、ルシオラ」
俺はそんなことを言って終始ルシオラを困らせていた

病院行ってきた、骨が折れていて二ヶ月は動かしてはいけないと言われた
病院から帰るころには太陽が傾き夕日になろうとしていた
「今日はおわずけね、また今度」
「そんな〜、俺は左手1本でも十分だ」
「そういう問題じゃないでしょ」
「ううっ、今日こそヤれる思ったのに〜」
俺が涙を流して悔しがっているとルシオラが
「じゃあ、これで我慢してよね」
ルシオラが俺に近づき、俺の唇に自分の唇を合わしてくれた
ちょっと長い恋人同士の熱いくちづけだった
俺はなんだかわからないが今日はそれだけで満足だった・・・










って満足な訳が無く、俺は夜中にある行動を起こした
「出ろ文珠、出ろ〜」
俺は小さな声で文殊を出し、右手の骨折を直すことに成功した、今思うとなぜ病院に行く前に気付かなかったのか、後悔の念が押し寄せてくる
しかし、腕も直ったことだし、さっきはヤっていいって言ってたんだから夜這い・・・してもいいよな
「ってなわけでいただきま〜す」
俺はルシオラの寝ている布団に潜り込んだが、急に眠気が襲ってきた、今日はいろいろあったからな〜眠いもうダメだ〜
結果的に今日はルシオラといっしょの布団で眠ることになった、満足かどうかは考えるまでも無く
満足だった(少しルシオラの体に触ったから)
本当は触れることが出来るルシオラがここにいるだけで俺は満足だった

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