ザ・グレート・展開予測ショー

A REBELLION AGAINST HEAVEN(11)


投稿者名:ラクン
投稿日時:(01/10/19)

パァァン
男が僅かに揺らぐ。
そしてピートに向けていた右手を左胸に当て、離す。
手にはべっとりと大量の血が張り付いていた。
男が手を下ろし後ろに振り向く。
「・・・西条さん・・・」
男の肩越しから覗いたその人物を見てピートがつぶやく。
そこにはピートの前に立つ黒フードの男に向けて真っ直ぐ銃を構えている西条の姿があった。
普通ならここで味方が来たと喜ぶところなのだろうがピートの顔色はさして冴えていない。
西条には失礼かもしれないが、霊能力者が一人加わったところでこの状況がひっくり返せるとは思えない。
もちろん西条とて霊能力者の中でも相当の実力者ではある事には違いはないのだが、それでもこの男には歯が立たないだろうと肌で感じていた。
西条もそれがわかっているのか、いつものような余裕は微塵も感じられない。
そもそも左胸を打ち抜かれたら人間はもちろん妖怪の類でさえも大怪我は免れないだろう。
それをこの男はへ依然として立っているのだ。
こんな得体の知れないやつの相手は出来ない―――そう思い西条はまずピートに叫んだ。
「ここは僕に任せて唐巣神父を連れて速く逃げるんだ!」
「は、はい!」
西条をここに一人残していくのは気が引けたが、唐巣の出血が予想以上にひどい。このまま放って置けば下手をすると死んでしまうかもしれない。
「そいつは自分の体を消せます!気をつけてください!」
そう言い残してピートが唐巣を抱え、霧に変化して天窓から逃げていく。
その様子をフードの男は追おうともせずに眺めていた。
やがてピートが完全に教会から脱出したのを見届けると、今度はゆっくりと西条に顔を向けた。
(さて、どうしたものか・・・)
西条が小さいため息をつく。
煙が立ち昇る教会を見て応援は要請したものの、部隊が到着するまで自分が持ちこたえる自身は正直言って無い。
少しでも時間を稼ごうと西条が男に話し掛ける。
「おまえは何者だ?美神君の事務所を襲ったやつの仲間か?」
「・・・だとしたら・・・どうする?」
西条がいっそう強く男を睨み付ける。
「君を・・・逮捕する!」
男が肩を震わす。どうやら笑っているようだ。
「悪い冗談だな。本心ではおまえも私に敵わないとわかっているのだろう?」
男が西条に手の平を向け幾筋もの霊波を放つ。
霊波の一つが西条の頬を掠め、残りが後方のドアに無数の穴を開けた。
西条の頬から血が滴る。
「貴様の時間稼ぎに付き合っている暇は無い。邪魔をするならば・・・命は無いぞ」
「・・・ここを通すわけにはいかない!」
西条が銃身を強く握り締める。
「そうか・・・」
男の手が赤黒く光り出す。
西条はそれを見て反射的に引き金を引いた。

ドンッ

しかし銃弾が発射される事はなく、小さな閃光とともに銃が爆発する。
「ぐぁぁっ!!」
西条が右手を押さえ跪く。
破片と爆発の衝撃で右手が血塗れになっていた。
「き、貴様まさか・・・あの時に・・・」
歯を食いしばりながらこちらを見下ろしている男を睨む。
「気付くのが遅かったな」
見れば銃の破片が赤黒い光を放っている。
威嚇と思われた最初の攻撃のときに霊波の矢の一つが銃身に入り込んでいたのだ。
当然バレルに異物が入っている状態で引き金を引けば・・・結果は見ての通りである。
「殺す予定が少し早まったが・・・仕方ないな」
「くっ・・・」
死を覚悟し西条が目をつぶる。
その時西条の後ろから女の声が響いた。
「ちょっと待ってグレン」
男の仮面からため息が漏れる。
「よく邪魔の入る日だ・・・何のようだ、シンディ」
西条が振り向くとそこには彫りの深いヨーロッパ系の顔立ちにブラウンの長髪がよく似合う、気の強そうな目をした女が立っていた。その肢体を見て
(令子ちゃんといい勝負だな・・・)
とつい不謹慎なことを考えてしまった。
シンディの口が開かれる。
「伝令よ、全員撤収。即刻魔界に戻れだって」
「・・・ずいぶんと身勝手な伝令だな」
シンディが眉をひそめる。
「私に言わないでよ、上の命令なんだから」
「確かにそうだな、直接本人に聞くことにしよう」
「行くわよ」
そう言うとシンディの目の前に直径2メートルほどの穴が現れる。
どうやら異界に通じる穴のようだ。
シンディがその穴のなかに入って行く。
「・・・運がよかったな」
そう西条に言い残し、リオンと呼ばれたフードの男も穴に入って行った。

気がつくとサイレンの音が近づいてきていた。
西条は床に仰向けに倒れ、今度は安堵の息をついた。



時間が取れたので何とか書くことが出来ました。
次回はエミ VS ???? です。

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