ザ・グレート・展開予測ショー

過去独白(マーロウ美神令子を語る9)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/10/18)

事務所に住み込んでいるお嬢さんが骨付き肉を御馳走してくれるつーから、どんよりとした天気にきてみたらよ、
どうだい、玄関で元気の塊みたいな坊やがうなだれているじゃねぇか。どうしたんだい?
「あぁ、マーロウかぁ。実はさぁ、仕事失敗しちまって」
それで、
「美神さんに大目玉でさぁ、『遊びじゃないのよ』って、もう散々」
俺は思わず笑っちまったよ。
おっと、勘違いするなよ、男の涙で笑えるほど、俺は野暮じゃねぇ、どうして可笑しいってか?
笑っちまった罪滅ぼしだ。教えてやるよ。美神お嬢ちゃんの、ちょっと前の話だ。
そうだな。丁度、今の坊やと同じ年頃だったかな?
ばっさりと切られた髪がようやく、今ぐらいまでのびた時期だぜ。
その日、言わば待ち伏せ役をしていたのが、俺とお嬢ちゃんだ。
「・・・暇ねぇ、マーロウ」
何をいってやがる。俺には1分1秒たりとも、気が抜けネェぜ。
だが、木陰に座って、目だけ、ぎらぎらさせていやがる。
ワン!ワンワンワン!!
「・・・何よ、マーロウ」
おい、嬢ちゃん、今敵さんが通ったじゃないか!
だがよ、小さい時はある程度、意思疎通が出来たが、女は15も過ぎれば、ある種の餓鬼の感情が消えちまってる。
その一つが、動物との対話だったんだろうな。
「静かにしなさいよ」
・・駄目だな。
待ち伏せの失敗は、依頼その物の失敗だ。とうとう、何があったか気付かずに、
「神父、今日は何も出なかったわ」
だとよ。唐巣のオッサンは取りあえず、ご苦労様、といってから、俺に尋ねてきた。
「・・本当ですか?」
いや、違うぜ。しかも今回の幽霊は俺に、否!お嬢ちゃんににやって笑いやがった。
「それでも気がつかなかったのですか?令子君は」
あぁ。ちゅーかやる気がないんじゃないかな?
俺は・・そういう事はストレートに言うタイプだ。
「そうかもしれません。令子ちゃんのポテンシャルは高いのですが・・」
溜息が俺には聞こえた。
だが、な。俺の尋常ざる聴覚はもうひとつの溜息を聞こえたいた。
・・嬢ちゃんのか、たしか、こういっていた。
「ママ・・・」
あぁ、そうだな。ほんの少し前だったからな。美智恵のママさんが・・。
俺が立ち会ったあの現場であった奴ら、神と名乗ったのから、俺は口止めをされている。
-このまま、彼女は死んだ事にしてください-
俺は・・幾度と無く、言ってやろうかと、思ったが、どうも、何かが引っかかっている。
せめて、この神父さんには・・。
いいや、やめておこう。そうして、俺はその日、今世話になっている家に帰っていった。
その日から、ほんの幾日か、だ。
どんよりとした、そうこうやって坊やと喋っている、まったく同じ色の空だった。
「令子君、令子君!」
早起きが得意な唐巣オッサンと違って、嬢ちゃんは朝に弱い。
呼ばれてパジャマ姿で下に来やがった。
「ふぁー。なーにー」
オッサンは少し、ほんの少し、怒ったような言い方でね。
「令子君。ここは教会なのです。もう少し服装に気を付けてください」
何か反論したそうな顔だが、起きあがりなので、ぼーっとしてやがる。
「・・・全く、まぁいいです。私は今日出かけてきます。夜には帰ります。御留守番宜しく、ついでに」
俺をはなから呼んでおいて、
「お願いしますね」
あぁ、任せろ。犬の俺にゃ御留守番は得意だぜ、何せ『番犬』って言葉があるからな。
さぁ、嬢ちゃんよ。その不細工な格好をなんとかして、美人になって降りてきな。
ちゅーても、どうせワンワンしか、判らないだろうな。
おっと、横島の坊やには判るのか。これは気を付けないとな。
結局、着替えずに、やる気の無い掃除が始まる。
食事の用意。珍しく骨付き肉を教会で頂けて、有りがたい限りだな。
「はい、どーぞ」
ワン、
どーも、と言ってやったのは判ったようだな。
「・・いいなぁ、犬には悩みが無くて・・」
有るってばよ、お嬢ちゃん。
まぁ、それでも目の前の肉のほうがいいよなぁ。
でだ、学校とやらに昔は付いていったが、今はそんな事はしねぇ、メンドイと、思っていたがよ、
嬢ちゃんの通ってるトコロは霊的に詳しい唯一の学校とか。
正直言えば、御付き合い出来なくて、ちょっと残念・・かな?
俺は・・まぁ犬だから、飯を食ったら寝る。好い生活だろ?
そのお気に入りの睡眠が、妨げられたのは、ある霊波動だ。
ワン?
俺は・・すぐに判った。この前に有った、お嬢ちゃんが全く気が付かなかった霊だ。
しかも、だ。なんでだよ!嬢ちゃんが戻ってきやがった!
「ん、只今、マーロウ」
ワン、ワンワン!!
止めろ、入るな!危ない、!
「なによぉ。もうお腹減ったの?」
ち、違う、止めろ、開けるなっ!
教会の、大きくも無い、ドアを開けた。
そして、すぐに目の前が暗くなった。少なくとも俺と嬢ちゃんは、そう見えた。
「なっ!」
後ざずっと嬢ちゃんだが、1歩、いや、十歩も二十歩も遅れていやがる。
その幽霊は、ごっつい手で嬢ちゃんの首を締めている。
「やっ、やめろっ!」
馬鹿っ!この霊に言葉なんぞ、通じるか!、俺は目一杯霊気を口に溜めて、吠える。
当った、見事にヒットしたがよ、敵はそんなヤワじゃなかった。
「・・ぐぅ・・・」
おい、嬢ちゃん!離れねェか、くそっ駄目かっ、俺は嬢ちゃんの喉に食らいついてる腕に爪を立てた。
!!
驚いた幽霊は、漸く手の力を弱めた。
「たっ、助かったわ・・」
おい、気を抜くな!
俺は嬢ちゃんの前に出て、敵を、幽霊を睨む。おい、せめて逃げるなりしてくれ。
だが、次の嬢ちゃんの行動は、俺も驚いた。
気丈にも、
「な、何者よ!アンタ!まかりにも教会に入っていた幽霊なんて」
膝ががくがくしていた、呂律も上ずっていた。恐怖。そうそれに立ち向かおうとしていた。
俺は思わずにやっとしたがよ、油断した。
その幽霊は・・すぐさま、外に出ていきやがった。
「あっ!待て」
待てと言って止まるのは美人のナンパだけ、だぜ。おっと嬢ちゃん、決してブスじゃねぇがな。
「追うよ!マーロウ」
ガッテン、
嬢ちゃんも、わかっていたのだろう。あの幽霊を暴走させる訳にはいかない。何故だって?
そうだ。認めたくはないが、奴は強い。
俺は鼻を使って、奴を追った。
「ま、不味いわね。大通に向っているわ」
そうだ、雑多な通りを目指している。紛れるか、それとも・・・。
角を曲がって大通り、俺は、いや、俺と嬢ちゃんの杞憂は現実となった。
歳は・・そうだな。幼稚園ぐらいの女の子にだ、その幽霊は憑りつこうとしてやがる!
「え、ど、どうしよう!」
おい、急げナントカしてくれ!そうでないと、あの女の子の意識は・・。
「えっと・・そうだわ。一年生の時に・・えっと、たしかこういうケースは・・」
慌てないでくれっ、嬢ちゃん。
俺は再度口に霊気を溜めて待機しているが、さっきしこたま発動しちまったから、な。
それに、
あんなちいさな女の子だ。俺の霊気その物で・・・逝っちまう。
「そうだ。頭を押さえて!!」
だが、その幽霊は只者ではなかった。嬢ちゃんを、一発で弾き飛ばしやがった。
「きゃっ!」
しかもだ。嬢ちゃんの来ていた・・えっとセーラー服とか言う奴を、ボロボロにしてな。
恥ずかしかったのだろう。身を縮込ませている。
・・・万事休す。俺は覚悟を決めた。済まない。名の知らない女の子ちゃん!!
『待った、マーロウ君』
その時、その声を発した男は、俺にとっては救世主だ。
そう、唐巣のオッサンだった。
何事も無く、その女の子の頭に手をやって、呪文を唱えている。
光った。そしてあの幽霊の気配は消えた。
「はい、もう大丈夫ですよ」
するとな。おそらくは御母さんだろう、女の子をぎゅっと、抱きしめていた。
「あ、有難う御座いました、神父様!」
「何、当然のことをしたまでで、念の為です。私の教会へどうぞ」
そして、着ていたコートを嬢ちゃんにかけてな。
「大丈夫ですか?令子君。立てますか?」
「・・えぇ、立てるわ」
そして、教会に女の子を連れていってその霊に取りつかれた女の子を詳しく検査していた。
「はい!もう大丈夫ですよ」
すると、その女の子、とーっても元気良く、
「はぁい!ありがとーございましたー」
そして、普段着に着替えた嬢ちゃんいも、
「おねーちゃんもありがとー」
その一言は、落ちこんでいた嬢ちゃんの顔色を良くした。
「さて、」
唐巣のオッサンは嬢ちゃんを見据えた。
「何があったか、あえて聞く気はありません」
良く言うぜ、さっき俺が詳しく教えてやったじゃないか。
「・・はい」
「私が間に合ってよかったです・・今日のこと、どう思いますか?」
嬢ちゃんは、ちょっとだけ、唇をかんでから、
「私が・・もっとしっかりしていれば、こんな事には、ならなかったと」
「そうです。令子君。いいですか」
眼鏡をとってな。
「ゴーストスイーパーとは、遊びでは出来ません。しっかりしないと、被害が大きくなるのです、肝に命じて下さい」
俺は・・あの唐巣のオッサンの強さを見れた気がする。
犬の俺でもかっこよかった、と今でも思っている。
でだ、たしかこう言った。
「令子君が、一人立ちした時、お気に入りの部下に言いましょうね」
後を向いて、眼鏡をかけたその時にな。
「はい!絶対に、そういうGSになります!だって・・私はママの子供だもん!!」
唐巣神父もうれしそうだった。
その日から、少しづつ、霊力がアップした。
俺は、あの女の子を抱いたお母さんが、きっと嬢ちゃんのママを彷彿させたんだと、確信している。どう思う?坊や。
「ちょ、一寸待ってくれよ、マーロウ、唐巣神父は、こういったんだよな。『お気に入りの部下に言いましょうね』って?
あぁ、そうだぜ、それが俺と話している坊やじゃないのか?
おっと、ほら嬢ちゃんが、上の窓からこっちをみてるぜ。さぁ、一緒に飯でも食おうじゃないか。
あのオキヌって娘の飯は美味いだろ?

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