ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(写真)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/15)




 ー終曲ー



「困ったわね・・・」
 椅子に腰かけ、口つけたカップを静かにテーブルの上へ置き、ここオカルトGメンの日本における代表者たる彼女ーーー『美神美智恵』はそう呟いた。
「全く・・・みんな揃ってると思ったら、肝心要のGS協会の会長さんがいないなんて・・・よほど重い足枷でも付けたのかしら・・・」
 やれやれ、と、美智恵は肩をすくめ、自分の後ろにたたずむ一人の女性をチラリと見る。
 女性もその視線に気づきはした様だが、直立不動の姿勢は崩さない。そんな彼女の様子に微苦笑を浮かべ、美智恵は自分の前にずらりと並ぶ、国内、いや世界でもトップと言えるであろう(自分の娘も含む)GS達へと目を向けた。
「さて・・・色々聞きたい事があるのは、その顔見れば解るけど・・・」
 母親のその言葉に、最も過敏に反応したのはやはり、不機嫌なオーラを撒き散らしていた実の娘だ。
「ーーーっ!一体どういう用件なのかは知らないけど!さっさと済ませてよママ!今こっちは物凄〜く急ぎの用事を抱えてるんだから!」
 身を乗り出し顔を真っ赤にし・・・まるで怒涛の様に、さてはマシンガンの様にそう言い切った実の娘に対して、美智恵は柔和に、そしてどこか楽しげに、微笑みを浮かべつつ答えた。
「はいはい・・・すぐ済むわよ、私も横島君に今の『令子ちゃん』の動揺っぷりを教えて聞かせたげたいし・・・」
 それまでとは別の意味で紅潮した顔の娘が、力一杯に否定の言葉をぶつけてくる前に、さらりと話題を切り替える。
「な・・・!ち・・・!」
「さて彼女の自己紹介がまだだったわね」
 じゃじゃ馬・・・いや暴れ馬の手綱を握るその手さばきは、どこまでも鮮やか。
 口を挟むタイミングを見事に外され、口をパクパクさせる実の娘を尻目にし、全員に向けて紹介を始める。
「彼女の名前は『陸奥季綾』・・・とりあえず今はGメンの外部協力者・・・ってところね」

 それまで何一つ語らず、緊張をはりつけた表情の彼女が、やたらギクシャクした足取りで前に出てきた。
 年は見た目・・・十七、八。腰まで届く長い髪。
 何故かサングラスをかけている為、瞳の色、そして顔つきなどはハッキリとは解らないが、決して悪くはあるまい。
 声もなかなかに可愛く、スタイルは令子ちゃんほどでは無きにせよーーーかなり優秀といえよう。
 以上。文句無し。合格。

「解説はおなじみ、西条輝彦でーーー・・・あたたた!!!」
 左右横から伸びてきた手に、同時につねられる・・・何も言えぬ程の、定番すぎる定番。
 そんなやりとりをよそにーーー・・・
『む〜っ、陸奥季綾です!よろしくお願いします!」
 そう言い、深々と頭を下げる。
 とりあえず美智恵はそこで彼女を下がらせて、手元に在る封筒の中から一枚の写真を取り出した。
「彼女はほんの一ヶ月前に撮影したっていう、とある写真をここに持ち込んできたの・・・見てみる?」
 ピッ!と指先で弾いた写真が、テーブルの丁度真ん中へいき、全員の視線が集中する。
『ーーーな!?これは!?!』
 驚きの声を発する者がいた。黒髪に少しキツめの黒瞳。服の上からでも解る鍛えあげられた体つきをした、やや(世間一般の水準で言うならば)背の低い男。
 彼の名は伊達雪之丞。
 写真には、その彼の姿がハッキリと写されていた。
「驚いたでしょう?私も・・・驚いたわ・・・」
 無論、ただ自分が写っているだけの写真でなら、いちいち驚く筈が無い。
 この写真・・・この写真には彼が見知った少年を踏みつけつつ、子供を人質にとった化物と相対している姿が在った。あの夜闇の中、フラッシュも無しに・・・いやそもそも写真を撮られた気配など一切感じなかった筈。
 そう考えてる内に、彼はもう一つの事に気がついた。
「!待て・・・さっきのあんたの話じゃあ・・・この写真を撮影したのが・・・」
 美智恵が、頷く。
「そう・・・一ヶ月前。つまりあの事件より数ヶ月は経過している事になるわね」
 ーーー沈黙。
 全員の視線が陸奥季に集まり、彼女は居心地悪そうに身じろぎをする。
 そして、美智恵の一言が、その沈黙を破った。

『もう解ったでしょう?彼女の能力が・・・そして・・・』

 もう一枚、別の写真を取り出す。そこには・・・

「こっちはーーーここに来る前に彼女に・・・」

『横島君!』『横島さん!』

 写っていたのはーーー横島。そしてーーー

 ーーー銀の髪、銀の瞳の男だったーーー



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