ザ・グレート・展開予測ショー

誤解(17)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/10/14)

横島は、はあとため息をついた。
絶対にあの手のひらのしたの顔は笑っている事を確信している。
と、いうかこんな事で本当に落ち込む人種ならば、今ここにいる訳がない。
第一、今の自分の状況は90パーセント以上この従兄弟のせいである。
…多分。
(どーすんべ)
どうにかして引き離したいが、帰ってくれといっても帰る男ではない。
無視していったとしてもついてくる。
物分りのいい事を言い、もしかしたら、窓にはりつくかも知れない。
…一つだけ、確実にここから遠ざける方法はあるのだが使うのはある意味後が怖かったりする。
それは良心が痛むというよりも、バレタ時が物凄く怖いといった方が良いだろう。
(やけどなー)
横島の容量の少ない脳みそではそれしかおもいつかない。
目の前には両手で顔をおおっている和馬。
(ごめんゆうねえっ)
………横島は心のなかである女性に、手をあわせて謝った。
後でどんな目にあうかは、この際考えないことにしておく。
「…かずにいここでどいてくれたらゆうねえのチョコやるから…」
一呼吸おき、ため息のような諦めのような声音で横島。
ぴくり
とその言葉に反応して和馬が顔をあげる。
そして顔に広がってるのは驚きと、喜び。
実の所和馬はこの「ゆうねえ」と呼ばれる人物に惚れているのだ。
その人物は横島にとって、実の姉のような存在でありある意味美神よりも恐ろしい存在だったりする。
性格のほうも結構な(結構で済ませてよいのか疑問だが)もので、正直横島としては、和馬がなんであんなトンでもない女性にほれているのか理解不能であったりする。
だが、和馬は心底、大真面目で惚れていた。
まあ、それでも女と見ればナンパするのが和馬なのだが。
「ホンマかっ!!!!!」
そして、当然のごとくその言葉に飛びつくように和馬。
「おお、しかも手製!明日郵送で送られてくるそーや。」
胸を張り、きっぱしと横島。
実は五年ほど音信不通だったのだが、ある事件がきっかけで再会してから何故かバレンタインの日には横島の自宅に「ゆうねえ」と呼ばれる人物からのチョコレートが送られてくるのだ。
要するにそれを横流ししようと言っているらしい。
こくこくと何度も和馬は頷くと
「ほうかっ!!!ならはよう忠夫の家にいかんとっ明日いうたら、もう三時間しかあらへんっ」
と言い残し、その場から去っていった。
ちなみに今は夜の九時である。
というか、普通配達物は12時きっかしに届かないだろう。
…和馬は横島の部屋で正座して郵便物をまっているに違いない。
(ついでに、ドア治してくれんかなあ)
去っていく和馬を笑顔で見送りながら横島はそんなことを思った。
尚、余談だが横島は数日後謎のまっちょ軍団に嫌がらせをうけたらしい。

事務所には灯りが灯っている。
時間にして九時過ぎ。
本来ならもうそこにある灯りはともされていないはずだ。
そして、そこに灯りがあるという事は人がいるということである。
かちゃ
鍵は、かかっていない。
横島はふとつい三ヶ月前の事を思い出し顔をほころばせた。
あの時は、このドアすら開けきれなかった。
なのに今はなんの躊躇いもなく開ききれる。
それは手にあるチケットのせいだろう。
自分と明日一緒にどこか食事にいってくれる。
しかもお金をだして自分を誘おうとしてくれる分には。
そして、事務所のなかに美神は居た。
つづく。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa