ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(召集)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/11)




 ー終曲ー


 
「何かしら・・・あれは・・・Gメン?」
 裸足で事務所を飛び出したシロを追い、横島のアパートへと辿りついたタマモが目にしたのは、捜査の為、既にアパートの住人達には避難(退去)してもらい、また現場へ通じる路を全て封鎖したGメン達の姿だった。
(う〜〜〜〜ん、どうやら美智恵さんと西条さんはいないみたいね・・・ん、あれって・・・)
 そこでタマモは気がついた。
 電話での情報通りに、横島の部屋だけが、まるでえぐりとられた様にして、失くなっている。
 その横島の部屋があった場所の前で、クンクン匂いを嗅ぎながら尻尾を揺らし、よつんばいになっている・・・あれは・・・
「シロッ!」
 お目当ての片割れを見つけ、アパートに面した一軒家の屋根を蹴り、タマモは跳んだ。
「え・・・?」
 何かを蹴る様な音がしたのに首を傾げ、若手のGメン捜査官らしき女性が、現場の調査を一時中断して振り向く。
 振り向いた先でーーー目にしたのは女の子だった。
 但しーーー飛び降り中だが。
「ーーーな!あ、危・・・!」
 時間にしてほんの数瞬の間、あわあわとうろたえる捜査官を尻目にし、クルッと宙で一回転したタマモは、タンッ!と小気味の良い音と共に地面へと着地した。
「あぶな、あ、ああ・・・」
 こちらを指差す様にし、ただ口をパクパクと動かすだけの捜査官の横を抜け、タマモが一人勝手に飛び出してったシロにくってかかろうとーーーした、まさにその時、右横から伸びてきた手にタマモは腕を掴まれた。
「ーーーな、誰よ!?今私、取り込み中・・・」
「シッ!」
 激昂し、横を向いたタマモの目に飛び込んだのは、見知った顔だった。一転、驚きの眼で口開く。
「・・・唐巣のおじさん!?」
 いきなりなお言葉に対し、カク、と肩をこけさせ、しかし否定はせずに彼は苦笑いを浮かべた。
「おじさんか・・・まあ・・・それはともかく・・・」
「ともかく・・・離してくれないの?」
 言われて唐巣は気がついた。慌てて手を離す。
「あっ・・・!ご、ごめん!」
 顔を紅潮させ、慌てふためく、教会の神父兼GS協会会長。
 しばらくしてゴホン!と咳払いを一つし、神父はタマモへゆっくりとした口調で語りかけた。
「えぇと、さっき止めた理由だけどーーー・・・今シロ君は横島君、あるいは他の誰かの霊波を嗅ぎつけるのに必死なんだ。だから・・・」
 そう言われた時は既に、タマモも気づいていた。
 これ程間近に自分が居るというのに、あのバカ犬は自分の存在に全く気付く様子も、そういう素振りすらも見せずに、真剣な眼差しで匂いを嗅ぎとる事にだけ集中しているのだから。
 独りよがりな考えで邪魔はーーー出来ない。
(何だか少し・・・嫌な気分・・・)
 どんな理由があろうと、見知った相手に気づいてもらえないというのはーーー見知った相手の姿が見えない事もーーー辛い。
(まったく!何なのよ!シロも・・・・・・横島も・・・)
 ここに来た理由はただ一つ。
 口が裂けても言えないが、顔見知りの二人の事が心配だったからにーーー他ならない。
 なのに、それなのに・・・『理由』は二つ共に、タマモを裏切っている。
「まぁ・・・とりあえずシロ君の事は心配いらないから、君も一度事務所に戻ってはどうだい?」
 神父はそう言うが、今のタマモはとてもそんな気分にはなれなかった。モヤモヤした気持ちでシロを、そして『横島の部屋』を見つめ続ける。
「・・・おっと」
 そんな折、神父の胸元から携帯が鳴りはじめた。
「はい、唐巣ですが・・・何だ、美智恵君か・・・」
 携帯の相手は、現在『見鬼君』等を用いて捜査を続けている面々の上司だった。
「ふん・・・ふん・・・なるほど・・・」
 神父は何やら話した後、携帯をしまいつつ、再度タマモの方へと振り向いた。
「どうやら美智恵君が今回の事件に対し、有力な現役、もしくははぐれGS達全員に非常召集をかけているらしい・・・そうなると当然・・・」
 神父が言い終わるより早く、タマモは言わんとする事を察していた。一心不乱に今も匂いを嗅いでいる顔見知りの方を向く。
 その時、神父にはその表情がどこか嬉しそうに見えた。
「・・・・・・」
 ポウッと生み出した極小の狐火による火球に、朝の一件でのお礼やら、さっきまで抱いていたモヤモヤとする気分やら、それら全てを込め、ポイッ・・・と、シロのお尻に向けて放る。

 チリチリ・・・
 タマモが冷ややかに見つめる。
 プスプス・・・
 神父が祈りを捧げながら、見つめる。
 メラメラ・・・
 Gメン一同、ハラハラした心地で・・・見つめる中。

『あぢゃぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!?!』

 つんざく様な叫び声が響いた。


 この後ーーー
 Gメン本部に『二人』を連れていくという大仕事で、神父が払った『労力』という名の代価がどれ程なのかはーーー

「このっこのっ!拙者のプリチーな尻尾やお尻に痕がついたらどうするんでござるかっっ!!?」
「ふが!ふががが・・・っっ!!!」
「よすんだタマモ君!我々は今タクシーの中なんだ!狐火を出すの!わぁぁぁーーーーー!!!?」

 ーーー想像にお任せする。



今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa