ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(不測)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/ 9)




 ー終曲ー



 横薙ぎに飛来した風の刃。
「!う・・・わっ!」
 かろうじて、至近距離からだというのに、奇跡的といえる反応の速さで回避する。
「わたっ!わわわわっ・・・!」
 ー回避した瞬間ー
 彼ーーー横島忠夫は這いつくばりながらも、風刃を放った銀髪の男と距離を取ろうと、少し・・・いやかなりみっともない姿勢のまま、動き始めた。
 正直・・・笑える。事情も知らぬ者になら、笑われる事疑う余地無し、だろう。
 しかし彼は真剣・・・そして必死だった。
 一撃の速さと正確さーーー怒りにまかせての攻撃の筈が、仮にこちらが普通に跳んでも伏せても、足か首・・・致命的なダメージを覚悟せねばならない、絶妙ともいえる高さの一撃。
 今のをかわすには体勢が崩れる事も構わず、地面を転がるしか術は無い。そして体勢を元に戻すより、まずは距離をーーー
 二撃目、飛来。
「わーーーぉぁっ!」
 こちらへと斜めに向かってきた刃に、片手をほんの少し斬られしたが、今度も回避自体には成功する。
(あ、あぶねぇ〜〜〜こんなんいつまでもかわし・・・?)
 ふと、横島は妙な事に気がついた。
(あれ・・・?こいつそういえば、何で連続で仕掛けてこないんだ?おかげで助かってっけど・・・)
 今もそうだ。
 額を流れる汗を拭う。その時になって、ようやく三撃目。
(こいつ・・・もしかして!)
 横島はーーー動いた。

「!」
 三撃目を放った直後、銀髪の男は硬直した。
「うおりゃりゃりゃぁ〜〜〜!!!」
 あのふざけた男、横島が真っ直ぐこちらへ向かってくる。
 右手に霊波刀が生まれていた。
「くらぃえぇぇ〜〜〜!!」
「く!」
 予想出来なかった事態に、固まった身体を無理に動かす。
(ーーーここか!)
 霊波刀の攻撃、その軌跡を先読みし、左腕に纏った風の刃で受けようとしたーーーその時。
 霊波刀が、消えた。

『サイキック・猫騙しっっ!!!』

 カッ!
 横島の合わせた掌から、強烈な閃光がほとばしる。
 よろめく銀髪の男。
「ぐ・・・目、目が・・・!」
「うおりゃ!」
 横島の、やや粗いといえる回し蹴りが男の首筋を捉える。
「・・・・・・」
 蹴りがまともに入り、地に伏した男を見、横島は確信した。
(こいつーーー何なんだ?凄ぇ能力持ってるけど、全然使い方がなってないっていうか、解ってないっていうか・・・そういえばあの悪魔が確かこいつの事を・・・)
「クローン?」
 その時、異変が起こった。
『今・・・何と言った?』
 ユラリ、と男が立ち上がる。まるで幽鬼の様だ。
『貴様・・・貴様をどうやら甘く見すぎていたようだ・・・』
 そう言い、左手を高々と上げる。
『腕の一本・・・などとはもう言わん!全身刺し貫かれ、地獄の苦しみを味わえ!』
 上げた手を、振りおろした瞬間。生まれたのは風の矢。
 半端では無い数のソレが、一斉に降り注ごうとしている。
(・・・へっ!)
 しかしーーー横島はニヤリと笑みを浮かべるだけだった。
(やっぱ経験不足だ!集中もさせてない、分散させただけの攻撃なんぞ、これでーーー!!!)
 右手には隠し持った『盾』の文珠。攻撃が途切れた時に不意をつく、『閃』の為の文珠も既に左手の内にある。
 横島は勝利を確信しーーーそしてーーー
 ウラギラレタ。
「横島さん?」
 聞き覚えのある声。最近また目の前のアパートに戻ってきた薄幸の少女の声。
 よりによって何でこの瞬間に、この場に通りがかったのがこの少女なのか・・・横島がそう吐き棄てるよりも先に・・・

 矢がーーー降り注いだーーー

『ふ〜、また幽霊の先客あり!えらい無駄足やったなぁ・・・なぁ小鳩の母ちゃん、小鳩ガッカリするかなぁ・・・』
「そうね・・・あら?あれは・・・」
 新居探しを終え、アパートへの帰り・・・貧乏神と連れ添う小鳩の母親は、アパートの前で倒れている小鳩を発見した。
『小鳩っっ!!?』
 二人共に駆け寄り、負担をかけぬ程度に揺さぶる。すると。
「よ、横島・・・さ・・・」 
 途切れ途切れの、苦しげな小鳩の呻き声。
『横島!?横島がどうか・・・な!何じゃこりゃぁ!?』
 そこでようやく、貧乏神は見、そして気づいた。
 目にしたのは既に、見慣れたアパート。
 しかしーーー違う。自分達の隣に暮らしていた青年の住まう部屋。その青年の部屋だけがーーーーー
 無い。
『え、えらいこっちゃ・・・母ちゃん!小鳩の事頼むで!早よあの女のとこに電話せな!』


 ー空を舞う黒い翼に気づく事なく、貧乏神は迷わず電話の元へ急いだー




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