ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラ復活の日々初日終編[パラライ・プリンセス&ロットン・ニキータ]


投稿者名:バルムンク・ダテ
投稿日時:(01/10/ 6)

心――理屈に適えば苦労は無い。

「関係ない……私の全ては、私の想いは…そんなモノより大事な事のために!!」
キィィィィン
ルシオラは全身から光を最大放射する。
「あああぁぁぁぁああぁぁああああぁぁあああぁぁぁっ!!!」
光に侵略された視界、自分に迫る横島の絶叫。
この非常時ゆえ、天性の戦闘者である灯郎は瞬間的に、
横島の「死んでいる攻撃」に備えてしまった。失策を悟る一瞬が命運を分ける。
キュイィィィィイイインンンン………
触角で、ルシオラの魔力が掲げた右手に集まってるのが確かに「見えた」。
「しまっ……!!」
ズドゥンッ
神経妖毒を帯びた魔力塊が灯郎の顔面に着弾し、爆裂した。決着だった。
正しい選択:二人が互いにできる事をこなす。

「あふ……んにぃ…。…………あれ!?」
ガバッ
自分が絡み合ってた湿っぽい布団を突っぱねて(努力は実らなかったが)
ルシオラは上半身を起こした。以前、パピリオとともにやってきた部屋だ。
「ヨコシマの……部屋だ…夢…オチ?」
窓の外から陽が差し込まないのも外にテントがあるからではなく、
単にまだ星が輝く時間だっただけのことだった。安堵すべきか脱力すべきか。
「くひゅー、こかー……」
夜のしじまに響くヨコシマのいびきが一時、脱力を優勢にしたが、
「そうね、平和だからこそ気が抜けるんだし、安堵も脱力も同じかもね」
言って一人で納得すると、くすり、と微笑んでヨコシマの顔の輪郭をそっと撫でる。
ルシオラはますますニコニコと満足そうに笑うと、そこに自分の顔も近づけ…。
数秒の余韻の後、彼女はもう一度布団をかぶって寝ついた。
晩御飯ぐらい作ってあげなきゃいけなかったかな?などと考えながら……

街灯の下で、男が一人、自分の赤い頭髪を弄りまわしてぼやいていた。
「クソアマがッ!俺様のスペシャル・ヘアを血塗れにしくさって……」
彼の言うように、血糊を拭うと僅かに緑色が見てとれた。
「その割りに随分とご親切なのですね?見逃してさしあげるなどと……」
男に声をかけたのはパイプを燻らせたタキシードの男だった。
「また仕事が速かったな『魔術師』。っつーか、頼んだ時はダメモトだったんだが」
血に染まってる男は呆れきった視線でパイプの男に向けて言う。
「えぇ、今回ばかりは骨が折れましたよ。後始末なんて初めてでしたし。
しかしキチンと我々の襲撃の事実は握りつぶしました」
血糊の男は、「彼が苦労したなどと冗談だろう」と考える。
なにしろ細胞、霊基の一片すら残さずに消し飛んだ自分を再生させた男だ。
「あいつらは俺様達とは違うみてぇだし、あの程度に愉しめる奴なんざ少なくねぇ」
これは嘘ではない。もっとも、地上においてと限定すると話は違ったが。
「それだけですか?見逃す理由というのは」
タキシードの男は上目使いに相手を一瞥して尋ねる。
「……あの女…俺様に足蹴にされてる状態で顔面狙いやがったんだ……
麻酔なら心臓狙っても良かったのに……一番遠い頭を、な。
俺が万が一にも苦し紛れに人間ヤローを殺さないようにって配慮だ
千分の一秒ほども余裕が無い状況で…言葉じゃなく行動で示したんだ、想いとやらを」
実際、あの時しっかり狙いがつけられる姿勢だったら自分はそうしていた筈だった。
「彼女の愛に負けたというわけですか?」
その言葉は、意地悪な質問だった。彼は決してそんな男ではない。
「愛なんて言葉でくくれたものじゃねーだろ…あれは…人間どもの愛なんて紛い物さ」
案の定、漸くべとつく頭に諦めがついたのか、手を離して男が呟く。
「彼女の愛は人間に教えられたものの筈なのに…高くかいますね」
他に言う事も見つからず独り言のように言う黒い男。
「そうさなぁ…俺様も、命くれてやっても惜しくねぇような女を捜すとすっかな」
本気で言ってるのか、まるっきり定かではなかったが、満足そうな顔だった。
「これは羨ましい…〈死〉をもたない私には生殖という概念がありませんから」
厳密には、死のうと思えば簡単に死ねる筈だった。
ただ、彼は人であり、俗世に未練が残らぬ事は極めて有り得ない可能性だ。
「勘違いしてやがるなぁ……プラトニックって言葉知ってるか?」
「知識としては、ね。私は個で生きるホムンクルスだと申しあげただけですよ」
有機人造人間ホムンクルス。模造人などと称され、疎まれる存在。
それは人との境界を持たないコピーとして完全すぎるゆえの欠陥の筈であった。
「《魔女の遺産》…「魔術を継ぐ者」…案外そうでもねぇんじゃねぇか?」
彼女達は自身が踏み込んでしまった異端の力を、
我が身可愛さに全て捨て去るべく押しつける対象を求め、創造していた。結果は失敗。
計画は漏洩し、『魔術師』は教会側に掌握され、母なる魔女達を滅ぼした。
その時のプログラムにエラーが発生し、以来、
ただひたすらに強者との闘争を求め、それだけが彼の生きる理由だった。
「次代への継承ですか?無理ですよ、300人からの魔力なんですから」
「んなこたどうでもいい。もう行こうぜ。シャワー浴びてぇよ」
「……ワガママな方だ…」
いつしか声の主たちは影も容も無く、声もやがて闇に呑まれて消えた。
長い夜には、呆気なさすぎるカーテンコールだった。

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