終曲(前兆)
投稿者名:AS
投稿日時:(01/10/ 4)
ー終曲ー
閉じたカーテンの、ほんの僅かな隙間から陽の光が差し込む。
見慣れた光景、時刻を確かめようと視線を巡らし、身をよじった瞬間、セットしておいた目覚まし時計が鳴りだした。
まだ感覚の鈍い身体を、そっと起こして手を伸ばす。
指先がスイッチに触れると、五月蝿く鳴り響いていた目覚ましの音が止んだ。代わりに目が覚めた時には聞き取れなかった、外からの声やさえずりがやけにハッキリと耳に届く様になる。
いつもと何ら変わりの無い朝。
ベッドから降り、着替えをしようと制服を取りに行く。無論朝食の支度をする時、制服が汚れたりしない様エプロンも忘れないように・・・
叫び声が聞こえてきた。
「いい加減にしなさいよ!散歩なら一人でも行けるでしょ!?」
本当、いつもと何ら変わりの無い朝。
二人の本格的な喧嘩が始まる前に、着替えも支度も全て後回しにし、私は屋根裏部屋へと急いだ。
目の前のテーブル。あぶらげ載せた皿が私を手招きしてる。
けれど。
私が今見つめているのは(にらんでいるのは)さっきこちらの安眠を妨害した事などきれいさっぱりころりと忘れ、夢中でステーキを貪るバカ犬の姿。
ガツガツ!ゴクン!
こちらの視線などには全く気づこうともせずに、ただひたすら食事を続けるハカ犬。焼いた肉がそん〜〜なに好きだというのなら、まだ手をつけてないステーキ群を、いっそ消し炭にしてあげようかと思い狐火を灯す。
その時を見計らったかの様に声がかけられた。
「まーまー、タマモちゃん、そんなに怒らなくても・・・」
極力、こちらを刺激しない様に、やんわりとなだめようとしてくる。
もしこれが他の人間なら・・・むしろ不快指数が増し逆効果になる事間違い無しだろうけど、何故かおキヌちゃんの場合は素直に聞く気になるから不思議だ。
悪意も打算も無く、純粋に他者を気遣う事が出来る。
それこそが、あの我の強い二人と長年付き合うのに最も必要な『力』なんだろうな・・・そう考えた時。
電話が鳴りはじめた。
カチャ
「はい、こちら美神令子除霊事務所です。私はここでアシスタントをやらせてもらっている・・・』
早い。
こちらが気がつき、目を向けた時には既に受話器を取って、淀みなく挨拶をしている。きっとこれもあの二人と付き合う為、必要な『力』なんだろう。今さらながら感心してしまう。
しかし、そんな和む気持ちは、すぐに打ち消された。
「はい、・・・は、はい・・・・・・えぇ!?」
驚愕と狼狽。それらが等しく混じりあった声。
こちらからその表情をうかがう事は出来ない。でも解る。おキヌちゃんの受話器を握る手が震えている事が。
「・・・・・・」
見るとバカい・・・もといシロも食べるのを止め、おキヌちゃんの方をじっと見ている。
「解り・・・ました。はい・・・」
力無く受話器を置き、こちらへと振り向く。その顔は死人の様に青ざめていた。
「横島・・・さんが・・・」
椅子から飛び跳ね、シロがおキヌちゃんに迫る。
「先生!?先生がどうしたんでござる!!?」
とりあえずシロをひっぺがそうと、側に近寄ろうとした時。
「横・・・島さんの・・・アパートが、横島さんの部屋だけ跡形も無く・・・消えてたって・・・」
その瞬間。
何一つ変わりなかった今日という日の朝が、永遠に失われた。
今までの
コメント:
- 「続きです。読んでもらえたら・・・本当に嬉しいです」 (AS)
- 読んでますよ(笑)部屋ごと消失とは穏やかじゃないですね〜(^^;
続き楽しみにしてます♪ (けい)
- やられた。先ず最初にそうとしか言えません。
タイトルからして破滅的な匂いをさせといてどんでん返しと読んでたら…
こんなヤバめな展開は思いつかなかった……(危険思想の第一人者として悔しい)
いつか凄まじくヤバい話書いて見返すその時まで……舎弟になります(無条件降伏)
ヴィシャス・ダテ・ザ・キラーとか呼ばれたい…(最近どんどんおかしくなってゆく…) (ダテ・ザ・キラー)
- 最初は普段の日常と変わらない様子だったけどたった1本の電話でここまで急変するとは…
アパートはともかく横島くん自体がどうなったのか、すごい気になります。 (G-A-JUN)
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