ザ・グレート・展開予測ショー

人間と少女と妖怪と【2】


投稿者名:眠り猫
投稿日時:(01/10/ 1)



痛いよー、痛いよー。熱いぃ、見えないよ、苦しい。
誰か助けてよー。なんで私が?なんで私だけこんなに辛いの?
死んじゃうの?死んじゃうの?嫌だよ、熱いよー。
死にたくないよ、だってだって私はまだ・・・・・・。



(はーい、皆は将来何になりたいのかなー?)
(僕はね、おまわりさんー!)
(あたしね、ケーキ屋さんかお花屋さん!)
(おれは絶対パイロットー!空飛びたいからー!)
(わたしはお嫁さーん!)
(あ、あたしも〜!)
(皆すごいねー。夢は努力すればかなうものよ。がんばればきっとなれるわ。あ、あなたは何になりたいのかな?)
(んーと、んーと・・・)
(なあに?)
(そーだ!こーこーせー!)
(高校生?お嫁さん・・・とかじゃなくて?)
(うん!早く高校生になるのー!)







『本当よ!いたの!!』
ピートが硫酸で怪我したこともあり、理科の授業は教室で自習になった時だった。
「何が?」
なんだか必死な愛子に驚いて両手を「まあまあ、落ち着け」のポーズで横島は答えた。
『わかんない!妖怪かなんかだと思う!ねぇ、ピート君は見なかった?』
吸血鬼の生命力と横島の文殊ですっかり怪我が治ったピートは何がなんだかわからないという様子できょとんとしている。
『タイガー君は?』
「ワ、ワッシ!?う・・・うーむ・・・??」
急に話をふられたタイガーはよくわからない返事を返すしかなかった。
言いたいことがなかなか伝えられなくてもどかしい。
「あ、あの・・・私・・・」
その時、ピートにかばってもらった気弱なクラスメイトの女子がおずおずと手をあげた。
もう泣き止んではいたが眼には涙の後が残っていた。
「あのね・・・丁度私が薬品棚に通りかかった時だったの。棚に触れてもないのに・・・いきなり・・・硫酸だったのかなぁ?あの薬品だけが・・・タイミングを計ったように落ちて来て・・・。」
『でも、それだけじゃ私が見たのとは・・・』
せっかく自分の見た物を本物と裏付ける情報かと期待したのに・・・と残念そうにため息をつく。
「ううん、違うの・・・。思わず上を見上げた時・・・うっすらと・・・幻かもしれないけど・・・子供が・・・見えたの・・・」
言っていてまたあの恐怖がよみがえったのか、ぶるっと少し震えた。
『子供?』
「そう。なんか言っていたみたいだけどうまく聞こえなくて・・・。除霊委員の皆がなんにも言わなかったから・・・気のせいかなぁって・・・」
そう言って横島のほうを見た。眼は「横島君は見た?」と言っている。
「いや・・・?文殊出すのに集中してたし・・・ピートは?」
「いえ、僕も夢中で周りのことは見えてなかったので・・・タイガーはどうだった?」
「どうだったといわれてもノー、ワッシはあの時まだ教室だったから・・・」
『それよ!!』
おどおどしている男性陣とは対照的に愛子は思わず身を乗り出した。
気弱な女子も思わずびっくりして数保あとずさる。
『それだわ!私も棚の上にいたのが見えたの!そんなに強くない霊だったから気付かなかったんじゃないかしら?』
「で、でもよ、人間に危害を加えるくらいの奴だろ?悪霊になりつつあるってことじゃねえか!早く除霊しないとまずいんじゃ・・・」
「でも・・・子供がなんで小学校じゃなくて高校に・・・?」
悩んでるピートの後ろから数人の女子の話声が聞こえた。
1人1人の表情は、怖いけど興味津々といったところか。
私は怖い話が大好きだ!と公言している女子が周囲の恐怖を、というより怖い話が嫌だけど好きといった難しい気持ちの期待に答えるように話し始めた。
「そーいえばさ、ここの最近お化けがでるって噂だったじゃん。しかも場所は理科室!案外それだったりして?」
「ええ〜、やだー。」「怖〜い。」と女の子たちが言い合ってる時、横島は、はたとある事に気が付いた。
(そーいや、愛子も言ってたな・・・。)
「なあ、それってどんな噂?」
「ん?除霊委員がこんなことも知らないの?・・・あ、そっか。アンタ学校来ないもんね。ここのとこあんまり理科室って使わなかったんだけど、つい先週かな、男の先輩が理科室の、やっぱり棚に近付いた時に硫酸が落ちてきたんだって。その時は丁度友達にいたずらかけられて後ろに転んだからセーフだったって話。その先輩がね、小さな女の子がいたって言いだして。だから「理科室に小さな女の子が住みついている。命が欲しければ棚には近付くな」って噂。」
噂もなにもそれ以上有力説がないくらいのものだった。
この女子は怖いもの大好きで、この学校にある怖い話の本を図書室から借りまくったらしい。怖い噂とあれば速攻で手に入れる。何故だか除霊委員が扱うものは強力な悪霊なんかここのとこ一切なしで、命をかける必要なんかまったく無しの、お笑い話になるくらいのものばかりだった。あえていえば「愛子ちゃん初登場事件」くらいか。だから彼女はあまり除霊委員には興味なさげだったが今回は違う。
・・・というより・・・
「お前らぁっ、こんな噂の一つも知らんかったんかい!!」
「僕、噂とかそういうの疎いから・・・すみません。」
確かに、周りが何だろうとボーとしていそうなところはある。これにはタイガーにも言えるとこではある。
『私もこの情報はそんなに詳しく知らなかったし・・・』
「まあ、こんなこと言っても始まりませんし・・・。そうですね、今日は理科室の使用は禁止してもらいましょう。困ったなぁ・・・」
『そうね、もう一回理科室行ってみない?』
愛子の提案は実際被害にあったピートにとってはかなり嫌なものであったが、ここでしぶっても解決しない。仕方ない、という表情で「わかった」と答えた。
なんだか変だな、と横島は愛子を見ていた。
今回はなんだか愛子が落ち着いていない。まるで早く事件に首を突っ込みたいかのようだった。何故だろう?こんなところで自分が考えていても答えが出るはずはないのだがどうしても気になった。あんまり冷静になれない俺を押さえてくれるような学級委員、そんな愛子とは全然違うような彼女にとまどう。

この事件が解決すれば「あの」横島クンがわかるような気がする。私の知らない彼。早く解りたくて、この表現しにくい気持ちを解決したくて・・・。
キッと気持ちを引き締めると横島の背中を軽く叩いた。
『早く行きましょ!』
「お・・・おお?」


『アツいよぉ、クルしいよぉ。サビしいよぅ。だけどねぇ、ダイジョーブなんだ。イマはまだだけど、もーすくでトモダチができるんだから。』
割れた瓶の破片が少女の気持ちと、もう一人の妖怪の気持ちをあらわすかの様に不気味に光った。

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