ザ・グレート・展開予測ショー

彼女の名は?2その5


投稿者名:KUMAさん
投稿日時:(01/ 9/29)

タオちゃん(女横島)と皇輝彦は除霊現場に来ていた。
「ここが除霊現場ですよ。マイ・ハニー、ミス・タオ」
輝彦が真紅のチャイナ・ドレスを着た頭に髪の団子を二つのせた美女に言った。
そこには、空っぽの32階建てのオフィスビルが目前にあった。
「なるほど、会社が倒産して自殺して悪霊となった経営者が、ここの22階のワンフロアに憑依して大規模なポルターガイスト現象を起こして、ビル全て入居者が逃げ出したわけか?」
タオちゃんこと横島が呟く。

「それにしても、あいつらは一体何なんだ?」
タオちゃんの見る方向には、10人ほどの霊的アイテムで完全武装した屈強の男達が装甲されたマイクロバスから出てくるところだった。
「私の助手達ですよ。ミス・タオ。彼らは我が皇家の弟子達の中でも最強の精鋭部隊なのです」
ふんぞり返って自慢する輝彦」

実は意外な事に、皇輝彦はこれまで引き受けた仕事には失敗した事がない。
《理由は御覧の通りである、彼は私設対悪霊部隊ともいえるものを持っているからである》by作者
「こんな奴らがいるなら俺なんか必要ないだろう」
憮然とした表情でタオちゃんは言い放つ。
「いえいえ、殺伐とした除霊現場にも華は必要ですよ。ミス・タオ」
タオちゃんのお尻を撫でながら輝彦がキザなセリフを言う。

「それが、俺というわけだ・・・びくん!ぞぞぞぞーっ!やめんかー!このやろう―!!」
タオちゃん渾身の踵落としが輝彦の頭頂部に決まる。
ボギ!妙な音が輝彦の頭から聞こえる。
顔面から思いっきり地面にめり込む輝彦であった。が、次の瞬間
「君の白い下着が素敵だマイ・ハニー、照れる事はないんだよ。もう僕たちは恋人同士さ」今度は、タオちゃんの胸を揉みしだく輝彦。
「ぞわわわわ――!!!てめえ―!地獄の果てまで飛んで行け―!!」
今度はタオちゃんの前蹴りが決まる。
「マイ・ハニー、その君のワイルドな愛情表現が大好きさ―ーぁぁ!」
そう叫びながら、お星様になる皇輝彦であった。
「もう、嫌だ!帰りたーい!!」
大声で叫ぶタオちゃん(横島)であった。

などと輝彦とタオちゃんが大騒ぎをしているうちに、私設部隊の戦闘配備が完了した。
「輝彦様、準備完了しました。いつでも悪霊の殲滅作戦を実行できます」
隊長らしき男からの連絡が輝彦の携帯電話に届いた。
「よし、作戦開始だ」
いつの間にかタオちゃんの傍に戻ってきた輝彦が作戦開始の合図を送る。
「こ、こ、こいつ、いつの間に?」
普段の自分の事を棚に上げて感心するタオちゃんだった。

ここは輝彦とタオちゃんが待機している簡易テントである。
「すぐに除霊は終わりますよ」
そうタオちゃんに告げると執事の寡尾州がワイングラスとボルドーの高級ワインを持ってきた。
「終わるまでごゆっくりして下さい」
丁寧にお辞儀して下がる執事だった。

「ところでお前、除霊現場に行かなくていいのか?」
ワイングラスを傾けて高級ワインを飲んでいる輝彦にタオちゃんが聞く。
「彼らに任せておけば大丈夫さ、マイ・ハニー。彼らなら30分も掛からずに終わるよ」
キザにワインを飲みながら輝彦は答える。
「嫌な予感がする。この除霊現場の事前調査はどうなっている」
タオちゃんが真剣な面持ちで輝彦に聞く。
「いや、この程度の悪霊なら何度も除霊しているからね。調査は必要ないだろう」
余裕だよ。という表情で答える輝彦。

除霊が開始されて二十分ほど経った頃、私設部隊の隊長から連絡が入った。
いくら除霊しても、後から後から悪霊が湧き出してくるというのだ。
既に隊員の半数はやられて、全滅も時間の問題であると応援を要請してきていた。
「なっなっなんだとー!」
パニックになる輝彦。一体何を考えたか、いきなり阿波踊りを踊りはじめてしまった。
「この大バカ野郎!」
「おい、さっさと怪我人を連れて逃げ出すんだ」
タオちゃんがパニックになっている輝彦から携帯電話を奪い取ると、隊長に指示する。
答えは「脱出不可能、応援を請う」であった。

「この、しっかりしろ!あほぼん!!」
タオちゃんは輝彦を怒鳴りつけるが、今度は鹿踊りを始める始末である。
「駄目だ!こりゃ」

タオちゃんは簡易テントを後にするとビルに飛び込んだ。
ビルの中を飛び回っている悪霊の群れ、ビルの中は悪霊の巣になっていた。
「やはり、思った通りだ」
霊波刀を出し、華麗に悪霊を斬り裂いて消滅させて行く真紅のチャイナドレスの美女。

(説明しよう。22階で自殺した強力な悪霊が、同じ境遇の悪霊たちや雑霊をビルに大量に呼び寄せていたのである)

「大変よ!横島さまが一人でビルに飛び込んでいったわ」
「何か非常事態が起こったんだわ」
ビルの影からタオちゃん(横島)が慌てて飛び込んで行くのを見ていた霊魅と霊樹であった。
反対側のビルの影に隠れていた黒スーツの怪しい三人組み。
「あのバカ!考えもなしにビルに飛び込んじゃったわ」
「おキヌちゃん、ネクロマンサ―の笛を持ってきているわよね?」
「はい、持ってきています!」
「シロ、行けるわね!」
「侍はいつでも戦う覚悟が出来ているでござるよ!」

「よし!行くわよ!」
「はい!」
「了解でござる!」

ロールスロイスの中で様子を見ていた霊華、霊菜の姉妹。
「ここでいい所を横島様に見せなければ」
霊華がこぶしを握り締めて燃え上がる。
「命を助けていただいたご恩を返すときですわ)
霊菜も燃えている。

簡易テントにいる元凶の皇輝彦は、今度は北海盆踊りを踊ってパニクっていた。
執事の寡尾州が涙を流しながら輝彦の後ろに控えていた。


―つづく―


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