ザ・グレート・展開予測ショー

人間と少女と妖怪と【1】


投稿者名:眠り猫
投稿日時:(01/ 9/29)



「きゃああああああっ!!!」
熱い熱い熱い。顔がっ、全身が痛いよぅ!痛いよ、熱いよぉ、痛い。助けて!
誰か助けて誰か。痛いよ、熱いよ。変な匂いがするぅ、痛い!いや!熱い!

死にたくないよぉ。

死にたく・・・―――――

(私ねー、早く高校に行きたいんだ。)
(えー?なんで?)
(だって一番「青春」ってカンジじゃない?)
(あははっ、「青春」だなんて古いー!でも、確かにさー、高校って憧れちゃうな。)
(でしょー?だからさっ、早く高校生になりたいなぁ。)

死にたく―――――ない・・・












俺は小学生のころ夜の学校が嫌だった。
学校に忘れ物をしてしまって、一人で夜、学校に行ったんだ。
いつもはにぎやかな学校なのに静かで真っ暗で。
俺は怖い、怖いと思いながらも、どうしようもない寂しさが残った空間を見つめてたんだ。







キーンコーンカーンコーン・・・
すっきりと青く晴れている空におなじみの「朝の鐘」が鳴り響いた。
「よっしゃあ!!ギリギリ間に合いーっ!」
黒髪に赤いバンダナを身に付けた少年は叫びながらもドアを開け
「間に合ってない!チャイムが鳴り終わる前に着席せねば遅刻だ!!」
パッコォォン!担任の教師からキッツイ黒板消しの一撃を食らった。
「いいじゃねぇかよ、それぐら・・・っゴホッ、ガハッ!」
教師相手にひるむことなく言い返すが、チョークの粉を思い切り吸い込んでしまって咳込む。彼の真っ黒いハズの制服が白に変わっており、掃除していない黒板消しの恐ろしさを物語る。クラスは笑いに包まれたが笑いの種、横島忠夫はつまらなそうに「ケチケチ〜」と呟く。
「大体なんなんだよっ、この黒板消し!昨日の日直誰だ!?」
「横島サンじゃ。ワッシが散々言ったハズ・・・」
巨大な大男、見た目は怖いが根は優しい友人、タイガーが答える。
一瞬横島の顔が固まった。右耳から左耳へすっかり通りすぎていたようだ。
『もう、横島クンったら。真っ白じゃない、あはははっ!』
長いキレイな黒髪の少女は心配する訳でもなく笑っていた。とはいえ、クラス中笑っているが。少女の名前は愛子。本当は机の妖怪なのだがすっかりクラスに馴染んでいる。
「あーあ、掃除が大変だなぁ。」
そう言いつつも笑いを隠し切れない。金色の髪に薄い蒼色の眼。日本人≠ナはないのは誰の眼からも一目瞭然だが実は半分人間でもない。吸血鬼と人間のハーフ、ピートだ。
「ったく・・・。ああ、そうだ、一時間目の理科は実験室だ。遅れないようにな、横島!」
「先生、アンタしつっこいぞ!ちくしょー!」
一つの教室はまた一段と高い笑いをあげた。

『あ、ねぇ、横島クン。こんな噂知ってる?』
理科室へ移動中、机を背負った愛子が横島に話し掛けてくる。
「は?噂?」
『そうそう!あのね、でるんだって!』
「何が?」
『んもう!ニブいわね!お化けよお化け!』
「なにを今更・・・。目の前にいるじゃん。」
のん気に目の前の愛子に視線をむける。
『あーっ!失礼しちゃうわ!私は妖怪。お化けとは違うの。若いGSさん。』
「ハイハイ。別に珍しくないじゃん、それくらい。前にメゾピアノとかでたし。」
『それはそうだけど・・・。でもいいじゃない、学校に怖い話は付き物よ。』
可愛くウインクをしてみせる。横島は確かに女の子が好きだが彼にとって愛子はむしろ友人に近いので、彼女の可愛いウインクを見てもいつものように煩悩に走らない。
美人なら妖怪だろうが人間だろうが見境ない横島にしては珍しいことだ。
「お、セーフ。」
ドアを開けた瞬間だった。
「キャ―――ッ!!」
ガシャンという硝子が、いや瓶が落ちる音とほぼ同時に女生徒の悲鳴が理科室に響いた。
『ど、どういたのかしら・・・あ、横島クン!?』
驚きを隠せず隣を見たがその時には隣には誰もいなかった。
横島が悲鳴があがった場所にすぐ走ったからだ。
そのときの彼の表情がチラと見えた気がした。
真剣な顔で。それがいつもの親しみやすい彼ではないような気がして。かっこいい・・・だけどなんだか彼が離れてくみたいで。教室はそんなに広くないというのに、なんだかすごく遠く見えた。なんだか急に不安になって愛子も横島の後に続いた。

悲鳴があがった場所は隣の部屋、理科準備室だった。その名の通り、備品やら実験に必要な薬等が置いてある部屋だ。
もうすでにクラスメイトの壁ができていた。その壁をくぐり抜けると中心にいたのはピートとクラスメイトの少し気弱な雰囲気の残る女子。泣いていて、おそらく悲鳴をあげたのは彼女だろう。
「ごめんね、どうしよう・・・保健っ・・・室っ」
おろおろと「ごめんね」「大丈夫?」「どうしよう」ばかり繰り返していた。あんまり彼女が混乱していたから何故だろうと横島はピートの方に目を向けた。
「!」
一瞬目を疑った。腕を押さえていてどうしたのか初めはよく分からなかった。よく見ると瓶の破片が散らばっている。女子の方の制服にも小さな穴がいくつか空いていた。
漫画からの知識しかないがもしかして・・・硫酸!?
「お、おい!大丈夫か!どうしたんだよ!」
「横島さん・・・?」
「あ、あのっ、あのねっ・・・わ、私がここ通ったら・・・それが落ちてきて・・・ピート君かばって・・・くれてっ・・・」
泣きながらも必死で説明してくれた。
「気にしなくていいですよ。僕は半分吸血鬼なんですからこれくらいはすぐ治ります。」
「バカ!ちょっとまってろ!文殊・・・文殊・・・!」
吸血鬼だって痛みは同じだろうに。早く文殊をつくろうと、必死で精神を集中させた。


『シッパイ・・・シッパイしちゃった・・・くすくすくす・・・』
幼い少女の声。とても小さくて儚い、そして怖い声。
愛子が声のした場所―――棚の上を見た時にはそこには何も残ってなかった。

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