君がいるだけで（７）
投稿者名：JIANG
投稿日時：(01/ 9/18)
百合子は公園内のベンチに腰掛けるとバッグからタバコを取り出した。そしてそれに火
をつける。一見するとただくつろいでいるように見えるが「ふうー…」と煙と共に息を吐
き出すと、自分の前に立っている息子を鋭い目でにらみつける。
「それで、どうなんだい？」
「ど、どうって……」
目をそらして、口ごもる息子の不満そうな態度によりいっそう目を怒らせる。
「は・な・し・な！」
横島は母親から受けるプレッシャーに「ぐっ」と言葉を詰まらせるがここまで追い詰めら
れたら話すしかないと、何度かためらった後あきらめて話し出した。
「う―――。……ルシオラは、俺の一番大切な女だったんだ。」
「だったんだ！？ ――過去形ってことはやっぱりふられたんじゃないのかい。」
「そうじゃねえ！ ルシオラは俺を救うために、ちからを使いすぎて消えちまったんだ。」
「消えたって……？」
百合子は今まで見たことがない真剣なそして思い詰めた顔をした息子の様子に驚きなが
ら、彼の話す言葉を聞いていた。
「ただいまーでござる！」
シロが戻ってくると、令子とおキヌは仕事前の一時を居間で思い思いにくつろいでいた。
タマモはこのごろの日課で朝のテレビ番組を退屈そうに見ている。
「あら、シロちゃん。おサンポもう終わったの？」
「なあに？ 横島クン、まだ起きてなかったの？」
おキヌと令子はシロが早く帰ってきたのを少し意外に思っているようすでたずねる。
シロはタマモの座っているソファーに勢いよく乗ってから、令子たちの方に膝立ちにな
って向き直る。
「先生のところに行ったら、先生の母上が来ていたでござるよ。」
シロが真横でブンブンと尾を振っているのをタマモは迷惑そうに顔をしかめる。
「シロ、近くで尻尾を振るのをやめてよ。テレビが見にくいわ。」
タマモの言葉にシロが悪態を返そうとするより早く、驚きの声が上がる。
「ええ！？ 横島クン（さん）のお母さま（さん）が来てるの？」
しかも、見事にハモっている。
「そうでござる。今から先生と一緒に挨拶に来るそうでござるよ。拙者も途中まで一緒に
来たでござるが、美神どのに知らせた方がいいと先生に言われたので、拙者だけ先に来た
のでござる。」
「な…なんで、それを早く言わないのよ！」
「せ、拙者はちゃんとすぐに知らせたでござる…」
令子の剣幕に尻尾を足の間に挟んでしゃがみソファーの背に目だけを出して隠れるシロ。
「それでいつ頃来そうなの。」
「公園のところで別れたから、すぐでござるよ。」
「それじゃあ、本当にすぐじゃないの。ちょっと部屋に行ってくるわ。」
「大変、急いでお迎えの支度しなくちゃ…！」
とたんに令子とおキヌの二人はバタバタと動き出した。令子は身だしなみを整えるため
か自室に戻り、おキヌはお茶の支度をするのだろうか台所の方でいつもは音など立てない
のにかちゃかちゃと食器の音をさせながら何かをしている。
「どうしたの、ふたりともあわてて」
「さあ？」
あわただしく、部屋を出ていったふたりにタマモとシロは不思議そうな顔で、お互い見
合わせた。
令子の自室では……
「この前は完全に向こうのペースだったから、まずは最初にこっちのペースに持っていっ
て…！ それにはまず、身だしなみをビシッと決めておかないと……！」
前に百合子が来たときに翻弄されっぱなしだったのがよほど堪えたのか、最初が肝心よ、
最初が…と呪文のように繰り返しながら令子は身支度をしている。
身だしなみ程度で百合子に対応できると考えている辺り彼女はかなりうろたえているよ
うである。
一方、台所では……
「ああ……何を出したらいいのかしら？ そうだ、先日西条さんがおみやげにくれたロイ
ヤルティがあったわ。……でも、コーヒーの方がいいかしら？ ……そう言えば横島さん
のお母さんはずっと日本から離れていたからお茶の方がいいかしら？ たしかまだ玉露が
残っていたと思うけど……。でもそうするとお茶請けは――」
前に百合子が来たときに、空港で見た令子との対決が相当なトラウマとなっているのか、
力では勝てないと悟ってか、必死になって百合子の機嫌をとるために用意をしている。
しかし、おキヌも早々にパニックなりかけているようであった。
*** つづく ***
$$ 次回予告 $$
百合子襲来の知らせを受けた美神事務所。
その対応をめぐって、狂乱状態になる一同。
ようやく、対応策がまとまりかけたところに新たな登場人物の出現で更に混乱の度合いが
深まる。
「おっはー！」と言うかけ声と共にやってきたその人物とは！？
そして最大の被害者タマモの運命は！？
タマモ「シロはちゃんと言えるのに、なんで私はちゃんと言えないのよー」
次回「新ＧＳチーム出動！！」お楽しみに！←題名が激しくちがうぞ、おい。
今までの
コメント：
- 話が中途半端（泣）
それをごまかすために次回予告をつけました。
しかも、かなりいい加減（笑）
それでも読んでくれたらうれしいです。（自分勝手） (JIANG)
- ダテ･ザ･キラーさん
新兵鬼のアイデアありがとうございます。
逆天号に通じるものがあるネーミングが良いです。
また思いついたらお願いします。 (JIANG)
- カディスさん
＞ルシオラの事を聞いて百合子さんがどう反応するのか楽しみです。
やべえ、書いてないよ今回・・・・・・。
すんまへん、事務所の方を書いてたら面白くなってしまって・・・（汗）
たぶんルシオラの話をするのは次々回あたりになると思います。
次回でもないやん、自分。（変な関西弁になってるし） (JIANG)
- トンプソンさん
＞百合子さんがＧＳの皆様の中で最強でしょう。
そうですね。
彼女にタメ張れるのは美智恵さんぐらいでしょう。
こうしてみるとＧＳって女性上位の漫画だね。（いまさら） (JIANG)
- G-A-JUNさん
＞やっぱシロやタマモにはまだ話してないんだなぁ。
あの戦いに関わっていないし、ちょっと話せないんじゃないかと思い、知っていないという設定にしました。
＞横島くんだけでルシオラの事を話したら百合子さんは信じてくれるかな？
横島、ルシオラの件が絡むと少しは真剣になるのではないでしょうか？
きっと信じるんじゃないかな←他人事のように話すなよ、おい（笑）
この辺の話はもうちょっと待って下せえ（おじぎ） (JIANG)
- いたけしさん
＞どう考えても自分の中でルシオラのこと、兵鬼のこと、ナルニアに行くことがまったくつながりません
うう（泣）すいません。
まだ起承転結の「起」の部分ですのであまり詳しく書くことが出来ないんです。
それでもヒントらしきものは各所にちりばめてますんで、それで察してくれたらいいなぁ←他人任せ
そのうち、ジワジワーッとわかるようにしていきますんで、お待ちください。←その前に飽きますか？ (JIANG)
- ウーム、ここまでうろたえるか？美神よ！
オキヌちゃん、ファイト！
ルシオラならゴットマザーにどう対応するだろう？ (カディス)
- やっぱシロやタマモには話しづらいですよね。
それを百合子さんに話している横島くんは少しつらいものがあるように思いました。
百合子さんが事務所に到着したらおキヌちゃんいわく「こんな嫁姑関係」が再び始まるのかな？と言う微妙な期待が・・・
続き楽しみにしています。 (G-A-JUN)
- なんつーか、美神さんは百合子ママと「勝負」することが
頭の中をしめてますねー（笑） (みみかき＠過去展開予測潜水調査隊)
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