ザ・グレート・展開予測ショー

誤解(14)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/ 9/ 8)

そして、体重の移動の仕方といい、拳の繰り出し方といい、腰の入り方といい芸術とまでいえるほどの右ストレートをくらった男は、地面にあお向けに倒れこんだ。
「……なんで殴るんですか?」
ひっくりかったまま顔面を両手で抑えつつ横島。
「そんな大声で叫びつつ走ってきたら誰でも殴るでしょ」
そんなの一般常識でしょうと胸をはり美神。
(の、前に怒鳴るとか逃げるとかするやろ)
心の中でつっこむ和馬。
そして、横島は、はらはらと倒れこんだまま涙を流しながら言葉を紡ぐ。
「せっかく、せっかく、美神さんが俺の愛を受け入れてくれたから、もう熱い愛の語らいそしてっホテルに直行っッ…げふ!!」
その声は悲痛だったが、憐れななことにそれを最期まで言わせてもらえなかった。
もちろん美神が横島の襟首を掴み締め上げたせいである。
「ほう、付き合ってもいないのに、どこに、直行ですって?」
至近距離の笑顔なのに、うそ寒いものを感じるのは気のせいでは無い。
だが、それに対して横島は何も言わない。否いえない。
締め上げられてるせいで、声が出ないのだ。
いや、その前に息が出来ないといったほうがいいのかも知れないが。
ちなみに、人どうりの多い公道だと言うのに誰も周りには誰もいない。
三メートル程離れた所から遠巻きに注目されていたりする。
和馬は面白そうにその様子を眺めていたが、横島の顔が蒼から紫へと変化したのあたりで
「そのままやと、忠夫しんでまうって」
といたって軽い調子で言った。
本当に、そう思っているのかどうか怪しい台詞だ。
「はっ」
そこで美神の瞳に正気の色が戻る。
きょろきょろと美神はあたりを見回し
「うーん」
と少しばかりバツの悪そうな表情を浮かべて横島を開放した。
がほげほと酸素を求めて呼吸する横島を視界の端に収めたまま立ち上がる。
ぽりぽりと頭をかく。
その美神の姿には、多分言葉にするならば、戸惑いというべきだろうことがあった。
どうにも、我ながら情けないというか、馬鹿らしいという気がするのだが、先程横島に『付き合ってない』と(たとえ和馬に対してでも)言われた事が後を引いてるらしい。
それこそ、往来の公道で首を締め上げる程度には。
ダメだと思う。
(頭冷やさないと)
このままいたら、横島の話を聞く前にシバキ倒しそうなのだ。
「ゴメン。えっと……」
うろうろと、視線を彷徨わせ和馬のほうに定めると美神は少しばかり笑い
「和馬や。横島和馬。」
美神の言いたいことに気付き即座に返答する和馬。
「あー和馬くん、この馬鹿連れてって。」
と言う。
そこには、先程のような、強い女性の姿は無い。
在るのは少女のような姿。
そのギャップにすこしばかり驚く。
「……………ええよ」
言葉が少しばかり遅れたのは迷ったわけではない。
「アリガト。」
そして美神は。横島が回復するのを待たずにその場から軽やかに。だが自然に去っていった。
つづく
……

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