ザ・グレート・展開予測ショー

世界最強決定戦、予選


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 9/ 7)

 生存本能というやつがある。種族維持本能ってやつもある。欲望とはすなわちこの二つに支えられている。
 つまるところ、横島の霊力は単なる煩悩からでてくるのではなく、実は強烈な種族維持、そして生存の本能から派生しているのでは、と考える。
 そして生きるということは、幸せであることを願うとほぼ同じであり、幸せになるためには自分だけじゃなく回りも幸せでなくてはならなくて、つまりそのために人は強くなる。
 横島も、幸せのために、強くなった。

『さぁ、世界最強決定戦予選、バトルロイヤルただいまよりゴングです』
横島はごくりとつばを飲んだ。なりゆきとはいえこんな大会に出る羽目になったことをどこかで後悔してる自分と、また別のどこかで自分の力を思う存分振るってみたいと願う自分。男として、誰よりも強くありたいと願うのは、至極当然である。横島の中にもそんな気持ちがある。
 ただ彼の心はこの期に及んでも至極穏やかで、そして頭の中には美神令子が自分に抱きついてくる姿が浮かんでいた。つまり、彼の心は平静そのものだった。そんな平静は願い下げた、と美神さんはぶちぎれるかもしれないが。
 周囲には、自分の身の丈よりふた周りはでかいであろう男たちが自分を狙っている。
 しかし不思議と恐怖はなかった。
 何時からだろう、いっぱしのやくざすらかわいいものだと思えるようになってきたのは。たぶんやくざなんぞより恐ろしい悪霊達を山ほど目にしてきたからだろうか。
 ほんの数年前まで、その手の連中を見ると尻尾を巻いて逃げていた自分。
 いや、怖いかもしれない。怖いがしかし、しかしこの連中に殺されるという思いは微塵もないのだ。
 ゴングの前に、神通棍を両手に構える。そしてわずかに霊力を流す。わずかでいい、こんなやつらにはそれで十分。ハンドオブグローリーは元より、文珠なんぞは全く必要ない。
  アクション映画のヒーローのような気分、とたとえるべきか。
 はっきり言ってそんな考え、都合のいい妄想でしかないのだが。
「負ける気がしねぇ」
思わず口を突いて出る言葉。周りにいる数人おそらくレスラーやらなにやら、白人やブラックの連中が、横島をギロリとにらむ。
 みな一様に恐ろしいほど体を鍛えぬいているのだろう、女の胴ほども有る腕をくんで、何でこんなガキが、という顔で横島を見ている。
「あ、な、なんでもないっす、ごめんなさい、ごめんなさい」
やはり囲まれてにらまれると、怖い。  
 
 ごんごんごぉぉぉぉん。

 と横島が謝り倒しているその時、どらの音が3回鳴った。開始の合図だ。
 と同時にまず横島の左右に置いたブラックが横島めがけて拳を振りおろす。
「うわぁ!!」
それを反射で気にしゃがんで交わすと、男たちは標的を失って、パンチが空に泳ぎ、力を込めすぎたのだろう、そのまま前のめりに体を崩し頭をぶつけ会い、頭を抑えている。
「ごぁぁぁぁ!!!」 
更に前にいたゴリラみたいなやつがしゃがむ横島にサッカーボールキックを仕掛ける。
 それを神通棍をクロスさせて地面に突き立て、とめる。と同時にのたうつ両脇のやつらに掌打を食らわせる。手のひらに霊気を集め、叩き込んでやったのだ。霊力は衝撃力に転化され大男は5メートルぐらい吹っ飛ばされ回りのやつ数人を巻き込んで倒れる。二人とも白目をむいている。
 そして神通棍を掴みなおすととあっけに取られるゴリラ男の顔面に双棍を叩き込む。
「俺って、強い?」
そして自分でやっておいてきょとんとする横島。妄想と現実が重なり合う。
 そして周りであっけに取られていた連中がお互い顔を見合わせると、こくりと頷きあった。
「あ、やっぱり?」
横島ははいいながら神通棍を捨て、ここに来る前美神から借り受けた神通流星錘、もとい細い鋼糸の先に霊体ボウガンのやじりと同じ素材で作った錘のついた武器、を取り出す。
「みんなまとめてどつきまわしちゃる」
ぶんぶんと頭上で回すと、錘が霊力を帯びて青白く輝く。
 と、横島の前にまず銃を持った一団が現れる。
「ファァァック」
「軍隊ちゃうんか!!!こいつらぁ」
そう、ほとんど軍隊である。なんでもありなのだ、ここは。
 もっとも彼らも予選を生き残るためにはいずれ潰しあわなければならないのだが、今は横島を潰しておくことで意見が一致したらしい。

 ばばばばばばばばばばばばっ

横島の叫びと同時に銃が撃たれる。横島はそれを咄嗟に横に跳んで避けた。
 弾はどうも実弾ではなくゴム弾頭弾らしい。さすがに当たれば痛いが、即死という事はないだろう。
「っち、次だ!!」
一団の銃口が横島に向き直る。が、
「遅い!!」
その時はもう横島の流星錘の射程内に入っている。
「くたばれ、このやろーーー!!!」
霊気を帯びた錘がビュン、高い音を立てて一団の手前に振り下ろされる。まだなれていないのか、狙いが定まらない、と思いきや地面と激突した錘はその地面ごと一団をぶっ飛ばした。
 砂煙が舞い上がり、一瞬視界が遮られる。
 爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた一団、吹き飛ばされたこと自体はたいしたことは無かったのか、一様にすぐさま銃を構えなおすがそれを片っ端から横島の攻撃が襲う。
 もう手加減無しである。煙にまぎれてちょろちょろと動き回り何時の間にか背後を取り、神通棍でどたまをぼっこんぼっこん殴っている。
「こんちきしょー!!!」
もはや子供の喧嘩に等しいが、それでも強い。銃を持った一団はあっさり静められ、更に横島の周囲にいた十数名もすでに気を失って転がされている。
「うがぁぁぁ!!!このやろぉぉ!!!」
自分の近くのやつを仕留めると、再び流星錘をもって、今度は当たりかまわずぶん回し、それに巻き込まれた連中が吹っ飛ばされて中に舞う。
そして何時の間にか横島の周囲10メートルほどが煙に包まれ、1秒おきぐらいに人が宙に舞っている。
強い、有る意味恐ろしく強い、が・・・その顔を見ると、やはり半分切れているようでかっこ悪い。
「横島さん・・・頑張ってますね」
「あのバカ・・・」
美神もおキヌちゃんも、強さは認めている、が、どうにもねぇ、といった感じだ。
 とにかく横島は半分切れて暴れまくり、十数名を再起不能に追い込みつつ、見事予選を突破したのであった。


 
 

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