囚われの小竜姫(4)
投稿者名:NT【C】
投稿日時:(01/ 9/ 6)
「ここからが本番です!」
バシュウゥゥッ!!
小竜姫は残った体内の竜気を発すると、神剣に己の全神経を集中させ始めた。
「へへ、望むところだッ!!」
小竜姫の霊圧が更に高まっていくのにつられるように霧生の双剣を握る手にも力が込められていく。
そして―――互いの目が合った。
キッ!
「殿下は絶対に渡さないっ!!」
「そーかい!だったら死ぬしかねーなッ!!」
ヒュン!!
刹那――霧生が姿を消した。
いや、翼を地面に平行させ滑空するような姿勢で猛突進してきたのだ。
そのスピードは常人の目に映ることを容易に拒んだ。
(速いっ!?)
小竜姫でさえ、その動きを目で追うのが精一杯だった。
「!!」
咄嗟の判断で神剣を目の前に翳す。
ガキィィィッ!!!
二人の剣が交差した瞬間、凄まじい金属音が夕空に響いた。
「っ・・・!」
勢いに押されつつも紙一重のタイミングで双剣を受け止めた小竜姫が思わず舌打ちする。
「やるなッ!!」
それを見るや、霧生は瞬時に剣を鞘に収めると無数の霊波を放ちながら翼を広げて上空へ舞い上がっていった。
「邪魔よっ!!」
小竜姫は向かってくる霊波を神剣で薙ぎ払いながら必死で霧生の動きを追う。
だが、霊波が一瞬の壁となって霧生の姿を覆い隠してしまった。
(何処っ!?」
苛立ちながら上空の雲を見渡す小竜姫。
だが気配は感じるものの居場所がまったく特定できない。
その時―――
「何処見てんだッ!!」
「っ!?」
不意に背後から聞こえた声につられるように振り返った小竜姫の表情が凍り付いた。
その眼前には、既に霧生の双剣が斧のように振り下ろされようとしていたのだ。
「なっ・・・!!(間に合わないッ!!)」
カッと小竜姫の眼が見開かれた。
キイイィィン!!
その瞬間、小竜姫のツノが輝くと同時に体が眩い発光体と化し、まるで瞬間移動でもしたかのような超スピードでその場から消え去った。
「何ッ!?」
その自分をも凌ぐ動きに霧生は自分の目を疑った。
「行きますっ!!」
超加速に入った小竜姫は間髪入れずに離れた間合いから霊波を繰り出す。
「ッ!?」
霧生はすぐに態勢を立て直すと飛んでくる霊波を自慢の双剣で真っ二つに切り裂いた。
ズバァッ!
「俺っちに霊波は効か・・・・・ッ!?」
だが、霊波の飛んできた方向には既に小竜姫の姿は無い。
「何処だッ!?」
「甘いっ!!」
シュバッ!!
瞬時に間合いを詰めていた小竜姫の神剣が霧生の目の前を一閃した。
「ッ!!」
ツツー・・・
小竜姫の剣先が僅かに掠ったのか、こめかみから流れ出る真っ赤な鮮血が霧生の左頬を禍々しく彩っていく。
「・・・・・・・・・へっ」
その光景を暫し呆然と見つめていた霧生だったが、その血をぺロッと一舐めすると、
「やってくれんじゃねーかッ!!」
ゴオオオォォッ!!
怒声と共に体中から巨大な霊圧を発しながら、その刃のような瞳をギロリと小竜姫に向けた。
「くっ!・・・踏み込みが甘かった・・・・・・・!」
険しい表情で悔いる小竜姫の額に汗が滲む。
小竜姫は今の加速に普段の何倍もの霊力を費やしていた。
その消費エネルギーはメドーサ戦とは比較にならないほど激しい。
しかし霧生の動きを捉えるには止むを得なかった。
それほど霧生のスピードは常軌を逸したものであった。
「おらあッ!!」
「!!(来るっ!?)」
ガキィッ!ズガガガッ!!!
「剣技は互角かッ!!」
「させないっ!!(!!・・・・・まだ殿下の霊気を感じる。・・・鬼門、早く殿下を連れ出して!)」
シュッ!
「痛っ!?」
小竜姫の集中力の途切れた一瞬を突いて霧生の双剣が腕を斬りつけた。
プシュゥ・・・・
途端に小竜姫の腕の至る所から血が噴出する。
「考え事してる暇なんてねーぞッ!!」
「くっ!!」
苦痛に顔を顰める小竜姫。
斬られた腕の感覚が薄れていく。
ピ・・・・ピ・・・・・
(っ!?)
小竜姫はこの時、ふとツノの輝きが鈍り始めていることに気付いた。
(く・・・!早く決着を付けないとっ!!)
焦りを押し隠すように小竜姫は唇をギュッと噛んだ。
そう、加速状態のリミットが刻一刻と近づいてきているのだ。
同時刻、浴場前―――――
ガラガラガラ・・・・・・・
「うむ、心地よい風じゃのう♪」
浴場を出た童子は背筋を真っ直ぐ伸ばしながら真っ赤に広がる夕日を気持ち良さそうに眺めていた。
まだ乾ききってない童子の長髪が秋風に煽られ気持ち良さそうに靡いている。
「夕焼けか・・・・・明日もきっと晴れじゃな♪」
「殿下〜〜〜!!」
「・・・・ん?」
振り向くと、何やら不恰好な成りをした男二人が蟹股でドタドタ走ってくるのが見えた。
「何じゃ、おぬし等か」
そう言ってプイと夕焼けに視線を戻す童子。
「はぁ、はぁ、大変でございます!」
「・・・申してみよ」
「じ、実は小竜姫様がっ・・・・!!」」
「小竜姫?あやつは今頃夕飯を作っておるぞ」
夕日を見つめながら童子が素っ気無く答える。
「!!・・・ひ、姫様はそのような嘘を・・・・っ!!」
「?」
足軽二人は肩をわなわな震わせながら事情を手短に説明した。
バッ!!
「な、何じゃと!?小竜姫が余を守るために戦っておるのかっ!?」
事情をすべて聞き終えた童子が血相を変えて鬼門に掴みかかった。
「は、はい。ですので殿下は今のうちに我らと共に天界へ・・・・・!!」
「ふざけるなっ!!余の為に戦ってる小竜姫を見捨てて自分だけ逃げられるかっ!!!」
凄まじい形相で詰め寄る童子だったが、鬼門も簡単に引き下がる訳にはいかなかった。
クワッ!!
「なりませぬっ!!小竜姫様の命により、我ら責任を持って殿下を天界へ連れて行きますぞっ!!」
そう言うと鬼門は丸太棒のような腕で強引に童子の両腕を抱え込んだ。
「こ、このっ、離せ!離さんかーっ!!!」
鬼門の腕の中で必死にもがく童子。
「左の、ワープするぞ!」
「おう!」
「小竜姫ーッ!!・・・・・余を・・・・・・・余を怒らせるな―ッ!!!!!」
ドゴオッ!!!
「がはっ!!」
童子の体から突如発せられた竜気が衝撃波となって鬼門を壁まで吹き飛ばした。
「はぁ、はぁ、・・・許せ。・・・・・・今行くぞ、小竜姫っ!」
童子はバッと身を翻すと腰の神剣に目をやりつつ一目散に武闘場へ駆け出して行った。
「ごほ・・・・・で、殿下・・・・・・行ってはなりませぬ・・・・・・・・」
壁にめり込んだままの二人は去って行く童子の後姿を見つめながらハァと溜息を漏らした。
「凄かったな・・・・・・・左の」
「ああ・・・・・・・さすが陛下の血を引いた御方じゃ」
「しかし・・・・・・・・!」
「うむ・・・・・・あの霧生という男に関わっては・・・・・・!!」
夕空を見上げつつも、それでも嫌な予感を拭い切れない鬼門だった。
この先、自分達に与えられるであろうお仕置きは別として。
武闘場―――――
鬼門の予感は徐々に現実のものとなりつつあった―――――。
ドゴッ!!
「かっ・・・・・は・・・・・・!?」
霧生の持つ双剣の柄が腹にめり込み、顔を歪ませながら小竜姫が前のめりにその場に倒れる。
それは超加速が解けた瞬間の出来事だった。
「ハァ、ハァ・・・・・ようやく厄介な加速技が解けたか・・・・・」
霧生は肩で息をしながら、手をゆっくりと地に伏す敵の背中へと向けた。
双方の体の至る所に刻まれた無数の切り傷がこれまでの戦いの壮絶さを物語っていた。
だが、その戦いも間もなく終焉を迎えようとしている。
「終わりだ」
ドドドドゥゥッ!!
霧生の手から次々に発せられる強力な霊波が容赦無く小竜姫の体を光の球に閉じ込めてゆく。
「ッ!!!!」
声にならない悲鳴を上げる小竜姫。
もはや、全身の力を使い切った彼女にこの攻撃を回避する術は残されていなかった。
シュウゥゥ・・・・・
やがて爆音が止み、辺りに静寂が戻る。
「・・・・・俺っちの勝ちだ。約束通り竜王の子供を預かるぞ」
霧生は動かなくなった小竜姫にそう告げると武像闘場の奥に歩き出した。
ピクッ
「ま・・・・だ・・・・・・!」
「?」
霧生が振り返ると自分の足首を必死に掴んで離さない小竜姫の姿があった。
「・・・・・・・!!」
気力だけでしがみ付いてくる小竜姫の瞳からはただならぬ執念が感じられた。
キッ!!
その必死の姿を見た途端、霧生の形相が一変した。
「勝負はもう付いたろーがッ!!」
ガシッ!!
霧生は地に這い付くばる小竜姫の胸倉を無理やり掴み上げると、凄まじい勢いで頭突きを見舞った。
「あぐっ・・・・・・・」
小竜姫の額から夥しい量の血が流れ出る。
「お前の負けだ・・・・・・小竜姫」
「・・・う・・・・・!!(こうなったら・・・・・・竜化してでも・・・・・!!)」
キィィン・・・
息も絶え絶えの小竜姫のツノに最後の煌きが灯る。
「・・・やめとけ」
それを見た霧生が胸倉を掴んだまま静かに口を開いた。
「!!」
「ドラゴンになっても俺っちには勝てねーぞ・・・・・・・・俺っちも『竜』だからな」
「っ!?」
ドゴッ!!
言い終わると同時に霧生の拳が小竜姫の鳩尾を捉えていた・・・・・。
ドサッ
再び地に崩れ落ちていく小竜姫は朦朧とする意識の中で一つの後悔の念に駆られていた。
「・・・・・・・・・・・・(翼を見た瞬間に気付くべきだった。きっとあの者は指名手配中の竜族っ!・・・・・初めから・・・・・・初めから竜化していればっ!!)」
うつ伏せに倒れたまま弱々しく拳を握る小竜姫の瞳に悔し涙が滲んだ。
「・・・・・・・」
霧生はぼろぼろになった小竜姫の姿を暫し見つめると、敢えて止めを刺そうとはせず剣を鞘に収めた。
「さて、竜王の子供を探すか・・・・・・・・ん?」
不意に何かを感じたのか武闘場の奥に視線を移す霧生。
その表情がみるみる嬉しさに歪んでいく。
「へ、へへ・・・・忘れねえ・・・親父を殺った竜王の霊気にそっくりだ・・・・・・感じる、感じるぞッ!!」
絶叫しながら霧生は憎悪に満ちた瞳で気の主が現れるであろう方角を見据えた。
「殿・・・・・・・下・・・・・・・・・!?」
残された僅かな意識を頼りに小竜姫も、この近づいて来るよく知った人物の気の存在に気づいた。
そして――――その瞳が哀しく揺れ動いた。
(・・・・・・・・・・来ちゃ・・・・・・・・・駄目ッ・・・・・・・!!!)
小竜姫の心の絶叫が一滴の涙となって、彼女の傷ついた頬を微かに潤した―――。
今までの
コメント:
- お久しぶりです(誰に言ってるやら)
二ヶ月以上・・・・・誰か覚えてるかな(期待薄)
でも、グレ展が活気に溢れているだけで十分です。
連載が終わっても、こんなにファンの方がいるのかと思うとやっぱり嬉しくなっちゃいますね。
これからも一つよろしくお願いします。
ところで、どなたでもいいので教えてほしいのですが・・・・・・
(社交場は今、どの辺りを漂っているのでしょうか・・・・?(焦)
まっちょも元気なのか心配で心配で(笑) (NT【C】)
- あ・・・二ヶ月は経ってなかったですね(苦笑)
コメントくださった方も忘れてると知りつつ返させていただきますね。 (NT【C】)
- sauerさん。
コメントありがとうございます。
私の文章なんかで逝ってくれるなら(笑)
でも、今回の文なんか思いつかなくて半分やけくそ気味で書いてしまって・・・
もっと時間があれば・・・・・・・ってあってもあまり変わりませんが(苦笑)
とにかく飽きないで読んでもらえるよう頑張ります。
(NT【C】)
- sigさん。
私、全然書くの上手くないですよ。
いつも辞書を片手にどうにか踏ん張ってるという状態ですから。
描写が駄目駄目なんで会話で何とか雰囲気を、と考えてはいるのですが(苦笑)
ドベから1、2位にならないように(既になってる気も)頑張りたいですね。
コメントどうもです。
そう言えば・・・・・sauerはよく作品出しておりますが、sigさんは書いてみる気はないのですか?
あ、いえ、あくまで希望ですので・・・(弱気) (NT【C】)
- トシさん。
もう世辞でもなんでも嬉しいです。ありがとうございます。
今書いた先頭シーンは何度読んでもヘボいと思わずにはいられません(泣)
格闘漫画は嫌いじゃないんですが・・・・・・・・関係ないですね。
絵だったらずっと分かりやすいんですけどね(書けないし)
とにかく踏ん張って書き続けるしかないですね。 (NT【C】)
- ↑先頭・・・・・・戦闘の間違いですね。 (NT【C】)
- ASさん。
期待・・・・・・もはや期待していたことも忘れられてると思いますが、
どうにか読んでもらえるほどのモノを書きたいです(ホントに)
次回で一応前編(ぽい)のを終わらせる予定でいますが、どうなることやら(いい加減)
囚われるまでの過程を大事にしたいです。
コメントありがとうございました。 (NT【C】)
- Iholiさん。
まずはコメントの方、ありがとうございました。
ついでにGZの方はやっぱり無理っぽい事が判明しました(笑)
あれを最後まで書いてる時間と余裕が私にはまず残されていないということで(苦笑)
なので、どうにかこっちの方は書き上げたいんですよね。(どんな形でも)
殿下がいよいよ霧生と対面するわけですが・・・・・どうしようか悩みまくってます。
読み返してみると、どうも内容が薄いんですよね。困りました。
そして今にして後悔してるのが霧生の人間像をほとんど語っていなかったことなんです。
はぁ・・・自分には容姿の説明は無理です(断言)
う〜ん、先が暗い・・・・・。
ともかくマイペースで頑張ります。 (NT【C】)
- パフさん。
はい、書き上げたいです(堅い決意)
中だるみするのが一番怖いですね(それと投稿間隔も)
自然消滅だけは回避して(笑)頑張ります。
ありがとうございました。 (NT【C】)
- ***社交場情報***
現在社交場は表・裏ともに「トンプソン」時空を漂流している模様。
トンプソンさん投稿のコメント欄のヒントを参照するか、作者名検索の後で投稿日と更新日に異様な断絶を感じるものを探してみると好いかも。
予告通り帰ってきて下さいましたね! お帰りなさい!
さて今回は小竜姫の直向きな姿勢と焦り、霧生の底知れぬ強さと怒り、童子の未知の素質と不安が次々と重なり、緊張感とスピード感が増しています。こう云うノリは好きですよ。
内容は薄くなんかありません。毎度毎度描写やセリフ回しの丁寧な密度の高い文章を読ませて戴いています。GZの件は残念ではありますが、その内どうにか出来ると好いですね。 (Iholi)
- 俺も最近書いてないなあ。もうそろそろやろうかな・・・。 (パフ)
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