極楽大作戦 de 時代劇 第弐幕 巻之拾弐
投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 9/ 6)
夜も更け始めた事、奉行西条と老剣士秋山小兵衛の会話はどちらとなく頭を下げた事によって、終結した。
秋の風が身に染みるのだ。
「ううっ、寒ぅ」
身を縮みこませて足早に邸宅を目指す。
門の閂、と言っても時代劇の城門に出てくるような大きな物ではないが、
それを使ったのは台風以外は外している。
人間の心理として門に入ると少しだけ安堵する。
「ふぅ」
一息つく西条の耳に水音がはいる。
「はて?」
一度水音は消えるが又。
「庭からだな。池に雁でも来たか?」
雁の飛来はもう少し後だが、水鳥が邸宅の庭に来たのかと、その足で向かうと、西条が見た光景は。
「はっ!」
みいが、井戸端で薄衣1枚で、水を浴びているではないか。
「はっ!」
又己の体に水をかける。
願掛けという奴だ。
風が容赦なく彼女を襲う。体を震わせながら、また釣瓶に手をあてる。眼光が少し曇っている。
「はぁ・・はぁ・・」
肩を使って呼吸をしていたが、止まった。
「おい」
気を失っても、釣瓶を手に持っているので、井戸に引きこまれそうになっている。
いそいでかけよって、みいの体を強くささえる。
「おい、おい!しっかりしろ!」
少しでも体温を上げようとして、背中を摩ると、うっすらと目をあける。
「あっ・・さ、西条様」
「御主は・・この美神藩は秋の飛来がはやいのじゃぞ。江戸の初冬に近い気温だというに」
だが、このまま小言を言っている場合ではない。
みいを抱き上げて、風呂へと向かう。桶にあるのはぬるま湯といったところか。
「まぁこのままでいるより、マシだろう。みい殿。手は動くか?」
西条の問いに答えられない。目が動いていない。
「御免!」
言うや、みいの着ている物。白緞子という奴1枚なのだが、剥ぎ取って、
顔を水に付けないように、して外へ向かう。
「風呂焚きの薪はあるか?」
幸い、少しだけあった。
西条が煙管の愛好者であったのが幸いだ。上質の火付石を所持している。
懐紙を火種にして竈に放りこみ、次に薪をくべる。
「火吹竹は、どこだ?あぁ、ここか」
空気を入れることで更に火の勢いを強めるのだ。
行く時かたったか。湯気が出窓から零れ出した頃、
「はっ?」
一度顔を湯に付けて、目を覚ます。
「うっぷ。えっとここは、お風呂?」
徐々に温度が上がっているので、誰か外にいる事はたしかだ。
「けい?」
出窓から外を覗きこむ。
「おぉ。みぃ殿、気付かれたか」
火吹き竹を離して、みぃに、顔を見せる。
「きゃっ」
意外な人物が外にいたので、御湯をかけようとするが、
「ちょ、ちょとまて、こんな寒空でそれは勘弁してくれ」
それはそうである。
「す、すみませぬ」
行動を手前で停めて、湯船につかる。
「湯加減はどうかな?」
「はい、とても宜しゅう御座います・・あの西条様が私を湯船に」
「あぁそうじゃ・・申し訳ないがな」
「あっ、いえ!こちらこそ、助けていただいて、その、あの」
ちゃぷと、湯が揺れる。少し熱くなってきました、というので、風呂焚きを一時止めて、
携帯用の煙管に火をつけながら、会話を始める。
「みい殿。願掛けをするなとは、申さぬが、この美神藩は山中にある。気温が不安定な時期にはひかえた方がいいぞ」
「はい。ですがどうしても仇を討ちたくて」
「御亭主か?」
少し戸惑いがあったが、
「・・はい」
しっかりと西条の耳に残る。どんな奴じゃ、と煙混じりに問いかける。
「敵は、人間では御座いません。鳥のような女です」
「おんな・・か、して名前は」
「覇亜非亥(ハーピー)と申します」
「ん?はてな、どっかで聞いたことがあるな」
「な、なんで御座いますと?」
湯船から身を乗り出して、西条に顔を向ける。
「たしか・・あっ!」
「はっ!」
手桶を持っていたので、思わず御湯を汲んでしまう。
見事命中。
「・・・・・みぃ殿」
「も、申し訳御座いません」
「すまぬが、はよう出てもらえるかな?このままでは風邪をひいてしまう。
いそいそと風呂から出るみぃであった。
「ヘクチ!でも良い物を見せてもらったな・・・けっこう毛深かったかな?」
またくしゃみが出た。
四半刻(一刻=2時間、つまり三十分程度)、湯浴みを済ませた奉行西条と、
寝巻き姿のみぃが書間にいた。
「先ほどは申し訳なく」
「いやいや。構わぬよ、そうじゃその覇亜非亥なる魔の事だがな」
美神藩の犯罪録の写しがあるのも奉行ゆえである。
たしか、この辺りにと、数年前の物を手当たり次第に探して、
「あった、これだこれだ。当時子攫いが横行した時にな、この妖怪が、目撃されてな」
絵師の物をそれなりに写した程度なので、輪郭ははっきりとしていないが、
「まっ。間違い御座いません、こやつ、こやつが!」
みぃの持つ手が震える。
「破かぬようにな。・・ふむ。今我が藩は妖怪に目を付けられている、おっ、そうじゃ!」
ぽん、と膝をたたいて、
「北西に、我が藩に長く住む鬼の一族が住んでおる。どうじゃ明日一番で向かうか?」
「はい。是非に!」
「この奉行、昼からは予定があるが、少し急げば問題なかろう」
無論、猫の血を引く二人の体力は成人男性よりも断然上である。お願いしますと素直にみいは答える。
「時に、もう旅は長い事になっておるのか?」
「はい、もう何年になるでしょうか。当時けいは紬に包まれておりました」
「かなり苦労をしているようだな」
「・・はい」
顔を袖て隠したところを見ると、泣いているのであろうか。
「すまぬ。さて、明日ははやい。もう就寝されよ」
「あの、西条様もご就寝あそばれますか」
「いや、ワシは・・・」
手で空に御猪口を持つ仕草で、
「今日はまだ一適もやってなくてな」
「あの、御酌を致しましょうか?」
「・・良いのか?」
「せめてもの御礼に」
「いける口か?」
「恥ずかしながら、少しは」
「じゃあ。御願いしようか」
この二人の呑み方は大変綺麗な物で、酒道にかなった方法であったが、
こちら、
恐山頼経と、おしろ(シロ)の二人は、居酒屋にいて、
「おねーさん、もう一本お願いするでござるよ!」
「シロ殿もうそのぐらいで」
通常と立場が逆転しているでもない二人。そして、
「忠夫、おりゃ〜まだまだいけるぞ〜〜〜」
「にゃにを兄様、この忠夫とて、余裕はありますぞぉ〜〜」
と、居酒屋でなく、道端で倒れこみながら笑っていたという。
これで次の日、風邪を引いていないのだから、立派な物である。
さて、北西の山に住む鬼の代表、虞螺は覇亜非亥について、何を語れるのか。
それは次号で。
今までの
コメント:
- 追加報告。
虞螺=グーラーさんの事です。 (トンプソン)
- ***告知***(何度となく使い回し)
『展開予想』常連の憩いの場「秘密の社交場」では随時参加者を募集しています。
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やはり詳しい事は「社交場」の方にあるので、一度探してみて下さい。 (トンプソン)
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美神美智恵=「美智恵御前」美神藩藩主の奥方。
美神ひのめ=「ひのめ姫」赤ん坊。
美神令子 =「令子姫」美神藩の御姫様ながら男装格好。
犬塚シロ =「おしろ」腰元。どうやら恐山を尻にひいている。
タマモ =「おたま」腰元。小姓真友康則とは某の関係らしい。
ドクターカオス=「毒田薫栖」美神藩の切れ者家老。子は無し。
毒田タエ =「タエ」家老妻女、元ネタは桜華様の「最強の女?」より拝借。
マリア =「毬亜」家老毒田薫栖のカラクリ人形という設定。
ジークフリート=「持郁傳李徒」目付。家老薫栖が目をかけている、剣術もなかなか。
真友康則 =「真友康則」小姓職。
恐山 =「恐山頼経(おそえざんよりつね)」武芸指南方。おしろのおもちゃ? (登場人物説明)
- 小竜姫 =「妙神おりゅう」美神藩随一の道場小竜道場の主。
伊達雪之丞=「伊達雪之丞」美神藩の浪人ながら、小竜道場での一流剣客の一人。
六道冥子 =「おめい」美神藩萬問屋『六道屋』の一人娘。令子姫と親交が有る。
弓かおり =「おゆみ」六道屋奉公人。雪之丞意中の女性。薙刀を使う。
一文字魔理=「おまり」元六道屋奉公人。寅吉と結婚を機に退職。拳が強い。
厄珍 =「厄珍」唐物屋厄珍堂亭主。
魔鈴 =「めぐみ」旅篭魔鈴屋の女亭主。鈴女の飼い主、一応魔法使い。
鈴女 =「鈴女」小妖怪として登場。魔の気配を感じたりするのが得意。
タイガー寅吉 =「寅吉」美神藩の大工。実は副頭。おまりを妻に持つ。
堂本銀一 =「銀公」歌舞伎役者の卵。霊能犬麻呂の飼い主。
マーロウ =「麻呂」霊能犬。 (登場人物説明)
- 唐巣和宏 =「和宏和尚」美神藩の古刹『唐巣寺』の住職。令子姫と親しい仲。
佐藤権三郎 =「権三郎(92)」元ネタはツナさん氏のキャラ。寺男。
小笠原エミ=「小笠原流祈祷師エミ」師匠の仇を討を討ちに。現在毒田から養子の誘い。
グーラー =「虞螺」悪鬼として登場するが、現在は西片の山に引っ越した。
横島忠夫=「氷室屋忠夫」キヌを妻にする呉服問屋という振れこみだが、
氷室キヌ=「氷室屋オキヌ」忠夫の妻で本当は皇族の血を引く御姫様。
横島和馬=「横島和馬」家老薫栖が呼んだ、令子姫と御見合いをする運命があるとか。
化け猫の美衣=「みい」息子「けい」と旅して廻っている。
けい =「けい」母親「みい」と旅して廻っている。
グーラー =「虞螺」、現在美神藩の北西の山に住んでいる。もののけの生き字引。 (登場人物説明)
- 机の愛子 =「愛子」大工「机組」組頭、気風の良さは江戸っ子に似ている。
鬼道政樹 =「鬼道屋政彦」十手持ちで六道屋を母体とした鬼道屋の跡取息子。
秋山小兵衛=「秋山小兵衛」池波正太郎著『剣客商売』より拝借。とにかく強い60歳。
おはる =「おはる」秋山小兵衛の妻。初婚だが夫の小兵衛は再婚。 (説明)
- -敵方-
メドゥーサ =「芽道邪奴」花魁で鳥山石燕の絵にもある最高クラスの悪魔。
鎌田勘九郎 =「鎌田勘九郎」芽道邪の付き添い人だが所謂ホモセクシャル。
覇亜非亥 =「ハーピー」鳥の悪魔です。
馬醫羽 =「バイパー」エミ、鬼道政彦を子供にした悪魔。
-裏情報-
デミアン、ベールゼブブ、原作「縮みゆく美神」に登場した悪鬼、登場予定。 (登場人物説明)
- -既に退治去れちゃった方々-
プロフェッサーヌル =「風炉努留」美神藩自席家老であった。令子姫に退治された。
ゲソバルスキー =「夏傍琉数寄」風炉努留の用人(秘書)。西条にやられた。
死津喪比女 =「死津喪比女」努留が呼んだ助っ人。エミが退治。
ナイトメア =「夢魔」ひのめ姫に取付くが母と姉によって退治
病魔 =「病魔」公彦に取付くが忠夫が退治。
犬塚ポチ =「犬塚穂地」辻斬り。秋山小兵衛に退治された。
ガルーダ =「蛾硫羽唾」
茂留田等が作った河童=「河童」多くいたが、持郁、毬亜等にやられた。
茂留田 =「蝋燭問屋茂留田」次席家老努留と結託し、城内に悪鬼を呼んだ。家老薫栖に倒される。
須狩 =「鑑定士須狩」薫栖によって囚われた。 (登場人物)
- 西条の色男っぷりが素敵。ちょっぴり本音も漏らしたりして。
今回のお話のお蔭でハーピーのイメヂが姑獲鳥である事に今更乍ら気付いた次第。子守りのプロを名乗っていたもんなぁ……迂闊。 (Iholi)
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