極楽大作戦 de 時代劇 第弐幕 巻之拾
投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 9/ 4)
関所から少しはなれたある洞穴。
暗いはずのその場所に青白い光が灯っている。
水晶玉のようである。
「けっ、所詮は人間ね。見事に失敗よ」
覗いていたのは、すべての元凶といえる、芽道邪である。
「ですが、芽道邪様。どうせ彼奴等は誘い水、いいでは御座いませんか」
くっくと笑っているのは、片腕というべき男、鎌田勘九郎。
「まぁ、な。それに城内、内部状況報告もそこそこあった、しかし・・」
あの最後に出てきた男は何者ぞ、という顔付きであった。
「これは・・城内が騒然となさっているて、申し訳無く」
慌てているのは、家老毒田薫栖(ドクターカオス)である。
「いんや。いいよ。今回の旅は隠密裏の行動だし」
のほほんと、言ってのける横島和馬だが、
「何が、隠密裏や!兄さんは曲りなりにも、旗本やろうが!」
叱咤というか、出会いに信じられないという氷室屋忠夫である。
「これ、曲りなりはいらんで。私は旗本だぞ、と言っても次男坊だがな」
さて、この時代。
余程の事がない限り、武家社会では、長男が世襲する事になっている。
例外を挙げれば。
暴連坊将軍でお馴染の吉宗公は、兄弟の末っ子ながら、兄が疫病で無くなり、
紀伊藩、藩主となる。
他には、伊井直弼も有名所で、後に大老まで出世するとは、到底考えられなかった。
「そやで、こないなトコ来とらんと、はよ養子先さがさんかいな」
ひぇっ、と家老薫栖が背をもたげてから、
「ちょ、ちょっと此方へ、氷室様、それと、持郁(ジーク)よ、皆を城内へ」
人払いをさせてから、
「実は・・秋が過ぎた頃、令子姫と、御見合いさせようとしておる方が・・」
ちらっと、和馬の方に視線をやる。
「!?」
言葉にならない忠夫の目の前に、
「やから、お前を美神藩に行くよう言ったんだぜ。なかなかの美人らしいじゃないか」
「・・・兄様・・・しかしどうして?」
「これやぞ」
懐から浮世絵、しかも春画技法のそれを見せる。
「本当モンはもっとええやろな。やが、この美神藩がピンチらしいから、急いできたんや」
封建の時代に武士が京都からここまでやってこれたもんだと、呆れるやらの忠夫。
家老に声をかける。
「しかし、何で和にぃを御存知やったんや?」
「・・姫様は器量は良しも、もう行遅れ。こうなったら、それなりの格があれば、誰でも、と思いまして」
「・・あの姫さんに、兄ぃさんかぁ」
少し考えて、
「まぁ、案外合うやもしらへんな」
話しが纏まった時に、腰元のおしろに、もう頭の上がらない恐山頼経が、オキヌ様に肩を貸す形で、門に現われる。
「おろ?そちらのお方は?」
横島和馬を指している。俺の親戚だと、正直に言うが、御見合い相手である事は隠す。
「おや、義兄様やおまへんか。ははぁ。いても立ってもいられなぅて、いらしたんやね」
当然、オキヌ様と、和馬は顔見知りである。
「お久しゅう、御座います。氷室様」
相変わらず可愛いですなぁと、軽口も出るが、青くなているのは亭主忠夫だ。
「おまえ、大丈夫なんか?」
「へぇ、大丈夫どすえ」
蛾硫羽唾の体当たりで少し気を失っていたが、大丈夫なようである。
「忠夫殿。奥方殿は、少し休ませれば大丈夫で御座るよ、なんなら、御寝所まで、御連れするで御座るよ」
「そうですえ。せや、折角兄弟がおうたんです。どっかいきなはれ」
女房公認で遊びに行って来いという事なので、
んじゃ、どっかで一献と、横島和馬と、氷室忠夫は街へと繰り出していった。
「でもええんか?お前オキヌはんについてなくて」
「んー、ちったぁ、ワイに一人でいれゆう事やろ?それに二人でいるとなぁ・・」
「・・・熱いねェ」
何が熱いのかは、各人に任せよう。
さて、奉行所にいるは、美神藩の遠山金四郎の異名を持つ、西条輝彦公である。
書面とにらめっこしていた事、一刻半(およそ3時間)。ようやく終わりのメドが付いたときは、もうあたりは真っ暗である。
「もうこんな所だな。秋が来たか」
以外に不精な奉行は家に帰らず、この奉行所に寝止まりする事も多かった。
今回はそれが幸いした。何者かが、こちらへと向かって来る。
「御奉行、こちらにおいででしたか」
老同心、蛮平信(ヴァン・ヘルシング)が、顔を出す。
「蛮か。どうしたのだ?武等都が又勝手に外へ向かったか?」
「いいえ。それは無いかと。念の為。私の娘、おあん(アン・ヘルシング)をつけておきました故、」
「そうか、どうじゃこれから一献」
おちょこを持つ仕草を見せるが、かぶりを振って、
「実は、御奉行様にお会いしたいという女子(おなご、と読もう)が来ております」
「この夜分にか?」
「何でも、関様の事についてとかで・・」
同心の関俊介(せき・しゅんすけ)、先の馬醫羽(バイパー)との戦いに、皆を逃すため自らを石仏に化した、骨の有る人物である。
「今すぐ、これへ。・・あとな、飯炊きのばぁさんに食事を運ばせるようにと」
こういう気遣いが出来る所がキレ者の名を現している。
「はっ、しかし子供連れで御座いますので、」
「構わん。外では旅の疲れも出よう。人数分の食事を持って参れ」
「はっ、仰せのままに」
くるっと踵を返して、玄関に戻る平信の口から、
「・・まぁ、御奉行様は女子にはさして、興味がないようなので、問題なかろう・・」
と、妙な勘ぐりをしてしまうほどの艶やかな女子がきているのだ。
名前をみぃ。子供はけい。
煙管(きせる)に火を付けた時、二人は現われた。
「ほぉ」
女性に関しては朴念仁と陰口をたたかれている奉行西条にとって、珍しい事と言えよう。
「みぃ、と申します。これは私の息子、けい、で御座います」
ひれ伏すようにして、言う。
「けぃ!ともおします」
「ん、中々元気の良いおこじゃな。さて関の事で話しがあるとか。じゃがその様子だと」
一服して、
「食事をとっとらんようだな。先ずは腹ごしらえからじゃな」
と、言うと、夜食用の飯に大根の味噌汁、そして、婆やが持ってきたのは、
「ありあわせで御座いますが、香の物に焼き魚で御座います」
二人の喉が動いたのは言うまでもない。
さて、武等都比延蕩の今はどうなっているか見てみよう。
「くそっ!」
荒れているのも無理は無い。
猪口を荒々しく投げつけるが、
「これっ。武等都様、そのような事は駄目で御座いますぞ!」
「あん?」
顔を挙げると、蛮平信の娘、おあんが目を鬼にしている。
「御気持ちはわかりますが、この御猪口に当たっても致し方ありますまい!」
ふっと、笑った。
「そうだな・・だが、やりきれん!」
ぐっと、徳利を引き寄せようとするが、
「これも駄目で御座います!御酒(ごしゅ、と読もう)に弱いのでありましょ?」
ここは、武等都の家ではないのだ。
「謹慎中はワシの家にいるがよい」
という、平信の心遣いでここにいるのだ。
「・・・すまん、あん殿」
「いやですよぉ。あん殿なんてぇ」
ばんと、力強く背中を叩いて、おおいに咽てしまった。
「も、申し訳無く」
「いやぁ。そんなことは、そうじゃあん殿もどうじゃ、一献」
「じゃあ少しだけ」
夜は更けて行く。
さて、奉行所の様子はどうなっているのか。
そして、関について、みいとけいは何を語るのか。
それは次号で。
今までの
コメント:
- さてさて新展開。相変わらず雰囲気造りの為には技を惜しみませんねぇ。みいとけいも本格的に登場と云う事で、何が語られるのか気に成る処。 (Iholi)
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