ザ・グレート・展開予測ショー

鈴の少女(押し寄せる迷惑達)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 9/10)




 ー鈴の少女ー



「ねぇ君・・・名前は?」
 無難な線だと、青年は我が事ながらそう思った。
 血の宿命により、人よりも遥か永い時を過ごして来た青年。
 その永い人生の中・・・子供とどう接するべきかなどという事は経験から理解している。しかし今回に関してはその青年からしても少し、いやかなり希なケースと言えるだろう。
「なまえ・・・?」
 遅れながらも青年の問いに対して、少女はそう応えた。
 ー少女ー
 正直・・・最初に出会った時とは、まるで違う。
 身体の汚れを湯で洗い流したその少女は、現在着ている服からしても、先刻までとはまるで違う印象を抱かせる。あの汚れっぷりをほんの一時間前まで目にしていた彼にとっては、なおさらそう感じられた。
 湯に浸かり上気した白い肌は朱色に染まっている。瞳は相変わらず前髪で隠されているが、整った顔立ち・・・こうして改めて見ると、かなり美しいと思える少女だと青年には思えた。
(・・・コホン!)
 注意の意味を込めた、師の咳払いが耳に届く。
 そこで青年は、自分が不覚にも少女の顔をじ〜〜〜っと覗きこんでいた事に気がついた。
「あ・・・」
 顔が熱くなる。
 自分の事だ。顔中真っ赤になっている事などすぐに解る。青年はそれを振り払うかの様に、プンブンと首を振りたくった。
(・・・?)
 少女は不思議そうに首を傾げながらも、そんな青年の様子をただジッと・・・青年が自分の顔を凝視していた時から変わらず、見つめ続けている。
 三分経過。
 状況は遅々として、いや停滞していて何も進まない。
 あえて口を挟むのは控え、弟子の青年に任せてただ黙っていたこの教会の神父は微苦笑しつつも、困り果てた青年へと助け舟を出す事にした。
「ピート君、とりあえず紅茶を飲もう。冷めてしまうよ」
 またも唐突な師の言葉。それが自分に落ち着きを取り戻させる為のモノなのだと悟り、尊敬の念を抱く師の配慮に対しピートは心の中で何度も礼の言葉をのべた。
 それから五分間は誰も、声一つとして出さずにいたのだが、意を決したのかピートがその静寂を破ろうとした・・・その時。
「ね、ねぇ、あのさ・・・」
 ドドドドド・・・
「もう一度聞くんだけど・・・」
 ドドドドド!
(何だ?・・・地鳴り?)
 神父は何事かと首を傾げたが、ピートにはそんな事に気を配る余裕などは存在しなかった。懸命に、少女が解ってくれそうな言葉を選ぶのに集中し続けている。

 ドドドドドドドッッ!!!

「ピ、ピート君っ!」
 神父は気がついた。何十頭もの暴れ牛並のパワーを秘めた『何か』が、怒涛の様にこの教会へ押し寄せてくるのに。
「だ、だからね・・・!」
 ピートはまるで気がついていない。
「僕が言いたいのは・・・その・・・」
「ピート君っっっ!!!」
 神父の弟子の名を呼んだ、その一声が終わらぬ内にー・・・
『ピィィィトォォォォ!!』
『てめーピート!誰だ!誰に産ませた!?』
 ーーーと、他にも幾つか叫び声は聴こえた気もしたが、それらを打ち消す程に、桁はずれに強い意志やら、暗黒の中でうずまく怨念やら、そして!こっちまで汚染されそうなくらいに恐ろしい嫉妬やら!そんなものを感じずにはいられない叫び声を上げながら突進してきた何かにー・・・
 ゴアッシャアァ!!!
 彼らがいた応接間は、破壊された。
(主よ、これが・・・宿命なのですか?)
 薄れゆく意識の中、信じるものにそう問いかけながら・・・

 チリン・・・

 神父は鈴の音を聞いた。


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