君がいるだけで(4)
投稿者名:JIANG
投稿日時:(01/ 8/30)
ねえ……もう一度、一緒に夕日を見たいって言ったでしょう。本気なの?
ああ、百回でも、千回でも、何度でも一緒に見てやるさ。約束しただろ……。
私たち魔族はホレっぽいのよ。体は大人の姿をしていても、心が未熟だから……
そんなことはねえ! 俺にホレて良かったと言わせてやる。後悔はさせねえ。俺様の煩悩パワーを信じなさい!
私もあなたが住んでいる世界を救いたいのよ。私はジッとしていれば大丈夫。だから早く行きなさい。
本当に大丈夫なんだな。わかった行って来る。すぐに戻ってくるからおとなしく待っていろよ。
ごめん、ヨコシマ。さすがにもうダメみたい。嘘をついたこと許してね。――朝と夜の狭間――。 一瞬だから美しい……。
ルシオラ! まってくれ、ルシオラ! ルシオラ――!
「せめて、約束の一発くらいやらせてからにしてくれ――! ルシオラー!!」
パカンッ!!
「何を朝っぱらから恥ずかしい寝言を大声で叫んでいるんだい!」
「痛ってえー! なにすんだよ母さん!」
目を覚ました横島が叩かれた頭を抱えながら体を起こすと、そこにはフライパンを片手に持った横島忠夫の母親、今は父親の大樹と一緒にナルニアにいるはずの百合子がエプロン姿で立っていた。
「あ、あれ!? か、母さん、なんで俺の部屋にいるんだよ。」
「何を言っているんだい! おまえの学校が夏休みの間に一度こっちに戻って来るって知らせておいたじゃないか。」
「そう言えばそんなことを電話で話したような記憶が…」
「まったくしょうがないコだねえ。いいから朝御飯の支度が出来ているから食べなさい。」
「あ、ああ……」
横島はなにか釈然としないものを感じながら久しぶりの健康的な朝食を食べ始める。
百合子は昨日夜遅く日本に着いて、ホテルで一泊して朝早くこのアパートに来たということだった。
食事が終わり、一段落つくと百合子は息子にむかって話しかけた。
「忠夫、今回、母さんと一緒にナルニアに行く気はないかい。」
「ああ!? 俺は都会の生活の方が向いているんだよ。あんな緑しかないところなんか行かないって何度も言っているだろ。――それとも、まさかまた親父とケンカでもしたのか?」
「ケンカしてないよ。まあ、あの人は相変わらずだけど・・・。それじゃあさ、この夏休みの間だけでも一週間ぐらいナルニアで母さんたちと過ごさないかい? どうせ、あんたのことだから夏休みと言ったって学校の補講やバイトで遊ぶ予定なんて何もないんだろう?」
ぐっと言葉に詰まる横島。図星だけに何も言い返せない。
「たまには、家族3人水入らずで過ごしたっていいだろう。」
「そ、それだったら、親父と一緒に戻ってくればよかったじゃないか。そうしたらわざわざ俺がナルニアまで行かなくてすむじゃないか。親父はどうしたんだよ。」
「父さんは、仕事だよ。学生の夏休みは長いんだろうけど、社会人はそんなに休んじゃいられないんだよ。」
「だったら、親父の会社が休みのうち来い!」
すかさずつっこみを入れた横島だったが、返ってきた母親の答えは、
「バカだねえ。そんなことしたら、二人ッきりでのバカンスに行けないじゃないか。今年は、カリブ海の方でクルージングやスキューバダイビングとかやってね、楽しかったわよ。まあ、あの人は相変わらず目を離すと若いコをナンパしようとして困ったけどね。」
「な…なんで、そういう時に俺を呼ばんのじゃ! それだっら、喜んで飛んでいったぞ――、かあさん!!」
「そうかい、喜んでくれるのかい。じゃあ早速、明日にでもナルニアに出発しようかね。――ああ、おまえはその前に美神さんに休みの許可をもらいに行かなきゃならないか。ちょうどいい、かあさんも挨拶に行こうと思っていたんだ、一緒に行こうか。」
息子の答えを自分の都合のいいように受けて止めて、ナルニア行きを半ば既定の事実として強引に決めてしまった。
「ちょ…ちょっと、かあさん! さっきのは母さんたちがカリブ海に行ったときの話で、ナルニアに行くとは……」
「何をぶつぶつ言っているんだい。たかが一週間だよ、いいから親孝行だと思って一緒に来な。それとも飛行機に乗るのが怖いとでもいうのかい?」
百合子は息子の話をまったく耳に入れず、美神事務所に向かうために玄関に向かう。
「少しは息子の話を聞けー! クソババー!!」
ののしりの言葉も無視してドアを開けようと手を伸ばすと、外側から勢いよくドアが開かれた。
「先生――! おはようございまする。サンポの迎えに来たでござるよー!」
驚いた百合子の瞳に映っていたのは、今日も朝の太陽のように元気いっぱいのシロの姿であった。
*** つづく ***
前回は衝撃的な場面で終わりましたが、今回はそれから数日後に飛びます。
それでは心温まる!?親子の会話をお楽しみ下さい(笑)
今までの
コメント:
- トンプソンさん
横島の子供として転生するのは不可能になりましたが、これから妙神山に集まった者たちが他の方法を模索していく予定です。 (JIANG)
- sigさん
神、魔族はしばらくお休みです。
でも横島がこうしている間にも話し合いは行われているはずです。 (JIANG)
- sauerさん
ルシオラ、どうなちゃんだろう(おいおい)
話もなぜか横島がナルニアに行くことになりそうな気配。
物語はどっちの方向に行くのか(迷走中) (JIANG)
- いたけしさん
ルシオラ登場!!(夢の中で)
生ルシオラもいつか出したいなぁ←いつかかい!! (JIANG)
- まぁ、おあつい、百合子さん&大樹さん。
やけちゃうわねぇ。
うん?日本にはお母さんしか来てないのか。
おい、鬼の居ぬまになんとやらなんて、
よこしま(笑)な気をおこしちゃあかんぞ。
大樹さん!! (トンプソン)
- G-A-JUNさん
土偶羅はすでに直っています。
前回は会話シーンがなかったけどちゃんと元の姿に戻っています。
そのうち逆天号に変わる新兵鬼と共に再登場します。
そこで、新兵鬼の名前募集を募集します。
※新兵鬼の名前募集
土偶羅及び3人娘が乗っていた逆天号に変わる新兵鬼の名前を募集します。
ついでにこの新兵鬼のベースになる生物も同時に募集したいと思います。
カッコイイ名前をお待ちしています。
例)クワガタ型 鬼気一発号 (JIANG)
- 逆天号、に続く新マシーン名称募集投稿!!
示威苦型、傳麗意度号(ジーク型、フリート号)
訳、だって、彼がもってるんだもん。
名前ぐらいつけたいよね。 (トンプソン)
- すいませ〜んJIANGさん
おもいつきません
あっいまおもいついた
魚形ってどうです
はやそうですよ
お話のほうはルシオラ〜と叫んだのに
母は気づかないとは
もうちょっと、ツッコンでほしかった
ああっ、やっぱり悲しくなるから
しなくてよかったかも (いたけし)
- カリブだゼっ!(笑)
横島ママの強さおそるべし・・・。 (ARSENAL)
- 百合子さんが相変わらずの様子でしたね。
それにしても起きたら(起こされたけど)すでにいるっていうのも何か怖い気がしますね。
シロと百合子さんの初対面が楽しみです。
そして事務所では再び嫁姑関係的な争いが起こるのかが少し期待気味です。
次回も楽しみです。
あとちょっと新兵鬼の名前は浮かびませんでした。すみません。 (G-A-JUN)
- 横島母のドスの利いたメンチ切りも聴いてみたかった(笑)。
新兵鬼案。名前は三冠号(元ネタはタイムボカンなアレから)。
セミ型兵鬼。武器は全方向型断末魔砲(迷惑)。弱点は冬蟲夏草と短い寿命。
トンボ型兵鬼。武器は高い飛行性能による急降下爆撃。弱点はメス。
タガメ型兵鬼。武器は強力アームで捕らえてからのゼロ距離射撃。弱点は水質汚染。
バッタ型兵鬼。武器は大量の眷属(ゾロメカ)。弱点はエサ不足による暴走。
ゴキブリ型兵鬼。武器は体中から発せられる強力な瘴気。弱点は誰も乗れない事。 (Iholi)
- 関係ありませんが百合子ママって、横島の事どうとらえて
いるんでしょうね。親父似のただの煩悩魔人なんでしょうか
? それとも? (みみかき@過去展開予測潜水調査隊)
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