ザ・グレート・展開予測ショー

夕立。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/ 8/30)

―たどり着きたいところがある。
だが、そこが何処なのか、何なのかは、分からない。
場所かも知れないし、唯一絶対の理論かもかも知れない。
もしかしたら、哲学的な「答え」かもしれない。

雨がやんだ。
先程まで、灰色だった雲が風に流され、変わるように白い雲と青い空が現れる。
さほど長い時間雨が降っていたと言うわけでもないのに蒼く、眩しい、空を待ち焦がれていたかのように人は、空を見る。
そしてあるアパートの一室から、同じようにその窓から空を見ている人物が居た。
その人物は老人といっても差し支えない年齢の男性であった。
色素の無い瞳にそれまで重ねた年齢を皺に刻ませた容姿。
白髪の髪。
その長身と顔立ちは、あきらかに日本人ではなかった。

空から、視線を落とした老人は、窓に映った自分の姿が視界に入る。
年老いた姿。

いずれ朽ちるこの体。
なのに、まだ捜している。
言葉にする事の出来ない何かを。

自分は、世間一般にある人間よりも、長く生きていきた。
世界には知りたい事が多すぎて、普通の人としての寿命では足りなかったのだ。
だから、望んだ。
人より長く生きられる肉体を。
そして、自分にはそれを得る知識を持っていた。

…どれくらい経ったんじゃろうな…

生まれた時から
もう、本来ならこの時代に存在すべき人間ではない自分。
だが、日の光を暖かく思い、めぐみの雨を喜び、雨の後にかかる虹を美しいと思う。
遠い遠い昔
もう記憶の片隅にある記憶。
農村。母。そして村。
その時と同じように。

あれから長い時間が流れた。
ひとよりゆっくりと朽ちていく体をもって生きてきた。
金に困り、物乞い同然の暮らしもした。
金持ちのパドロンを見つけ、一国の王のような生活もした。
唯一無二の女性にも出会った。
数は少ないが友人というものにも出会った。
そして、彼らの死を見届けて、今ここに自分がいる。

一人のGSに陥れられ、タダ一つの最高傑作と、ボロアパートにその日暮しをしている自分が。

もう、姿も、口調も老人のものとなっている。
だが、まだ「何か」は見つからない。
くつくつと喉をならし笑う。
昔ははっきりとしていた「何か」が今はもう記憶にうもれてなんなのか分からない。
それを思い出せるとしたら、多分それを、見つけた瞬間だろう。

空はもうさっきまでの雨の気配は無く、ぬけるような蒼空がひろがっていた。
おわり。

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