ザ・グレート・展開予測ショー

火消し戦隊、顔合わせ!


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 8/29)




 ー火消し戦隊、顔合わせー


 夕闇が辺りを包み込み、ゆっくりと・・・しかし確実に夜が始まろうとするこの刻に彼らはー出会った。
 辺りに人影は見当たらない。麻酔針を首筋に生やし、塗装された公共の道に一人のまだ若い警官が伏せってはいるものの、それ以外には人の姿は見えなかった。ここへ続く道は全て封鎖されている。予め民間人が立ち入る事が出来ぬ様にしたこの場で、これから始まる捕物劇の観客となるのは彼らのみ、だ。
(・・・・・・)
 誰もが声一つ出さない。ピリピリとした空気が場を覆いつくす中、しばしあっけにとられていた栗色の腰まで届く長髪に、少し大きめの瞳をし、美人というには多分に愛敬のある小柄な女性、沙雨藍が一言、呟いた。
「・・・へ、変質者!?」
 ピリピリとした空気が、緩む。彼女の発した言葉、それは張り詰めた風船に針を刺すもので無く、ただ純粋に空気を抜き風船をしぼませた。つまりは緊張感は弾けるでなく、しぼむ様に消えていった。そのたった一言の為に。

 一転間抜けな空気が場を覆いつくす。

 特撮の戦隊の様な風体の面々が、揃って気まずそうな表情で閉口した。このままではらちがあかないと、ブラックのスーツを着た女性が何事かを言う前に、先程見事な顔面着地を披露したピンクのスーツを着た男?が叫び声を上げる。
『誰が変質者じゃああぁ!!?』
 聞こえた声は間違えようも無く、年若い男の声だった。
 何かその男は『変質者』と呼ばれる事に身におぼえでもあるのかと、そう問いたくなる程に狼狽している。
「・・・あ!」
「・・・へ?」
 藍が後ろを指さすのに気づき、ピンク男は何も考えず、ただ振り返った。瞬間。
 ドギャ!
「安心しろ、みね打ちだ・・・」
 青いスーツの男がそう言い、ふるった剣を鞘に収める。
『あれは・・・ジャスティスですか、なるほど・・・』
 横から突然、それまでただ黙っていた仮面が囁き声を出した。
「じゃすてす?」
 藍がその囁きに、聞き返す。仮面はそれには答えずにマントを翻して、一歩踏み出した。
「動くな!」
 今度は黄色、いや金色のスーツを着た男が制止の声を上げる。
 仮面は足を止め、代わりに口を開いた。
『そちらの青い方は、オカルトGメンの西条さん・・・違いますか?』
「青い・・・そういう言い方はやめてもらおうか」
 静かに西条・・・そう言われた男が答える。それまで昏倒していた(凄い怪復力だと藍は感心した)ピンクの男が幽鬼が如くその足首を掴んだが、今度はブラックの女性に踏み倒された。
『それにしても、皆さん揃って随分と変わったいでたちをしてらっしゃいますが・・・どういうわけです?』
 人の事言えるか!と藍は心中で吐き捨てた。そうして見るとそれまで黙っていた赤いスーツの・・・
(・・・尻尾?)
 赤いスーツを着てる奴は、腰に尻尾の様なものをつけていた。
 彼女が疑問に思っているのをよそに、一歩前に出て元気の良い声で喋り出す。若い女(の子)の声だ。
「拙者達はお主たち悪者を退治する為に選ばれたせーぎの味方でござるっ!もはや悪事をはたらくのもそこまででござるっ!」
 一息に、レッドの女の子はそう言った。その言葉に藍はどでかいハンマーで横殴りにされたかの様な衝撃を覚え、頭を抱えてうずくまる。
「ああ・・・何であたしの周りはこんなのばっか・・・神様そんなにあたしが嫌いですか?」
 ブツブツと呟き、地面に『の』の字を書き始める。もはや自閉症寸前。そんな悲壮感たっぷりの彼女に更なる追い打ちをかけたのは・・・やはり仮面だった。
『なるほど・・・私達の、いや我らが野望をくじくために現れたというのだな!?良かろう!我が下僕『藍』よ!変身し、放火獣となって奴らをうちのめせ!』
 もはや自閉症になってなどいられない。顔を上げ絶叫する。
『やるか!出来るか!だいたい誰が下僕だぁぁぁ!!!』
『出来ぬというか!ならばアジトに監禁した貴様の伴侶にこの薬を飲ませるぞ!』
『やっぱヤバい薬か!あああ敵も味方もバカばかり・・・!』
 ーもはや何に憤り、何に悲しめば良いのかすら解らずにー
『誰でもいいからあたしに味方をーーーーー!!!!』

 ー彼女は絶叫し続けたー

 ーその頃ー

「あれー・・・藍さんどこに行ったんでしょう?」
 まだふらついてはいるが、夫である彼は自力で回復していた。
「しょうがないですね・・・仮面の方と藍さんが帰ってきた時の為、腕をふるいますか」
 
 ー呑気に、そして鼻歌混じりで彼は調理場へ向かったー

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