ザ・グレート・展開予測ショー

火消し戦隊、泣きわめく!


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 8/28)




 ー火消し戦隊、泣きわめくー



 険悪な空気が、満ちる。
 ここはオカルトGメン本部の第一会議室。今この場にはとある連続放火魔達を捕らえる為に・・・その為だけ!に選ばれた『ヒーロー』と『ヒロイン』になる『予定』の者達が集まっていた。
 集まった者は、七人。その彼らの前でソファーに腰かけ、威厳をもって彼らを見つめる女性が一人。その後ろには、いかにも苦労しているというのが伺える神父様がたたずんでいる。
(・・・・・・)
 一人として誰も喋らない。声一つ出さない。例外として尻尾つきの快活さが溢れる女の子がはしゃいではいるが、その他の面々は石像の様に何も喋らず、語らず、身動きすらしない。
「さて・・・」
 その重苦しい奇妙な沈黙を破り、ソファーに腰かける女性が口を開いた。場に独特の緊張が走る。
「とりあえず、六人も良い返事をしてくれて・・・嬉しいわ」
 その言葉に対して『七人』の内、一人の女性が過剰な反応を示した。頬を紅潮させ、叫ぶ。
『そう!六人でしょ!?私は思いの全てをこめて『ノー!』と叫んだわよ!?心の中で確かに!』
 凄まじいばかりの剣幕で、怒鳴りちらす実の娘へと、母親である彼女は静かにこう告げた。
『罰です』
 端的だが、言われた相手にいかなる反論も許さない・・・そんな強い意志の込められた一言に、吠え声を上げていた女性、美神令子は閉口した。いや、閉口させられた。
「み、美智恵君・・・あの事はもういいよ。あんなに嫌がってるんだし・・・」
 パッ!と美神の表情が輝く。しかし次の瞬間。
「駄目です。こういう時に甘い顔をするのはこの子のためになりません。この際令子にはこのブラックのスーツを着てもらって、鏡で自分の姿を何度も確かめさせます」
 即座に母親はその助け舟を撃沈した。しかもスーツ着用は既に決定済みらしい。
「マ、ママ!お願いそれだけは!これからは心を入れかえるからーーー!!!」
 血を吐くかの如き、悲痛なる奥底からの魂の叫び。
 しかし、その叫びに対して返ってきた答え。それは更なる追い打ちだった。
「あ、そうそう。とりあえずれ〜こがこれ着たら、ひのめにもちゃ〜んと見せてあげましょうね〜もちろん目の前で、ね」
『嫌あぁあっっっ!!!』
「それと・・・鑑賞用と保存用にするのを忘れず、後世まで残る様にキチンと撮影もしておきましょう。ね、れ〜こちゃん?」
「撮影!ほ、保存までーーーーーー!!?」
 ブチン!
 美神の意識は、そのあまりの衝撃に耐えきる事は出来なかった。ゆっくりと膝を着き、前のめりに崩れる。
「美神さんっ!」
 その直前、側にいた黒髪の少女がその小柄な身体をいっぱいに広げて・・・美神を受け止めた。
「み、美神さん!しっかりし・・・ちょっと横島さんっ何してるんです!!?」
「い、いや!別にこれが好機だなんて思ったわけじゃ・・・」
 伸ばした手を引っ込めて弁解しようとするも、既に少女、氷室キヌの眼差しは氷点下だった。その瞳が『最低』と雄弁に物語っている。
「違うんじゃー!この密室に漂う空気が俺をーーー!!!」
 ガンガンと壁に頭を打ちつける煩悩少年。それを見て金髪の美青年と神父、それにホウキ片手の女性に、整った容姿に長髪、長身の男がため息をついた。
「とりあえず・・・場所を移しませんか?これでは話が進みそうにないですし・・・」
 長い髪の男の言葉を受け、美神美智恵は微笑むのを止め、真顔になって頷いた。
「そうね・・・じゃあ西条君、横島君を運んでくれる?ピート君は令子をお願い」
「は、はい!」
「・・・・・・解りました」
 ピートは特に異論無く・・・西条は不服そうに口をとがらせたが、渋々頷いた。

 ーそうして会議室を後にしてからー

「とりあえずスーツが保管されてる場所へ行きますから・・・実際目にしてみて『ブラック』以外のどの色が良いのか、貴方達自身で選んでほしいの」
 そう声をかけた彼女の背後から、歓声が上がる。
「拙者は赤!赤いのがいいでござるーーー!!!」
「僕は青がいいかな・・・」

 美智恵が柔和に微笑み、肩を並べて隣を歩く神父がやれやれと肩をすくめた。


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