ザ・グレート・展開予測ショー

火消し戦隊、燃え上がる!


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 8/27)




 ー火消し戦隊、燃え上がるー



 ゴホン!と、まずは咳払いするのが聞こえた。
 そしてーーー『ソレ』に続いたのは、端的な一言。
『本気、かね?』
 場にいる者達の中の一人、そのたった一人の簡潔な一言。しかしその言葉にはこの場に・・・ここオカルトGメン『本部』の第一会議室に結集した(させられた)者(モノ?)達の総意が含まれていた。
「ええ、本気と書いて、マジですよ」
 今度はその一言を向けられた女性が、笑顔を崩さぬまま言う。
 バンッ!
 それを聞きつけその女性に、怒りに戸惑い混じりの視線を向けて、その女性の娘でもある彼女が激しく円卓を叩いた。前のめりになり、ソファーから腰が浮き上がる。
「冗談じゃないわよママ!何が悲しくてこの年になって、そんなーーー・・・そ、の・・・あの・・・」
 言葉に力が無くなって行く。例え異形のモノとぶつかりあっても決してひるんだりはしない・・・その彼女が唯一と言っていい程に頭の上がらない存在。その存在からのプレッシャーを一身に受け彼女・・・美神令子は固まった。
「ねぇ令子・・・」
 唯一頭の上がらない存在、ソレは彼女自身の母親だった。笑顔のまま続く抑揚無き言葉が、彼女の心臓に杭を打つ。
『あなた・・・教会を、住むところを焼かれて困り果てた、親子揃っての恩師!と、あなたの窮地にさんざん手を貸してくれた友人!を、とことん冷たくあしらったそうね・・・?』
 どこまでも抑揚無き母親のその言葉。表情も笑顔のままだ。
 だがしかし。
 ビキ・・・ッ!ミシミシ!
 彼女は、いや場の全員が理解していた。どれほど巧妙に隠していようとも、右手を置いた円卓にヒビが入っているのだから。
(・・・・・・)
 シィィーーーンーーー
 それからしばらくの間。
 時計まわりに座る面々。その全員が凝固し、静かに時が刻まれ続ける。そのうち美神の隣に腰かけているアシスタントの少女が嘆息し、助け舟を出そうと口を開いた。
「あ、あの・・・(あぅあぅ)そのスーツみたいなのを、どうしても着ないといけないんですか?」
 ほんの少しだけ、しどろもどろな感も受けたが一生懸命言葉を紡いだ少女によって、場の張り詰めた空気が和らいだ。
(はふぅ・・・)
 美神がテーブルの上に倒れこむ。そんな娘の様子を横目にし、彼女の母親、美神美智恵はやはり笑顔のまま答えた。
「うん・・・順をおって説明するわね・・・まずはこのスーツの事から・・・」
 そう言って、美智恵はこのレベルの事件に集まるとは思えない超豪華な顔ぶれ(もっとも全員顔見知りだが)を見まわしてから、肩越しに後ろを見る。
 後ろには備え付けのモニターが在った。
 そのモニターにはまるでー、特撮TV番組の戦隊が着る様なスーツが、それぞれ赤、黒、青、黄、そしてピンク・・・それらの色で映しだされている。
「これはね、さっき言った通り、霊力増幅アイテムの試作品なの、未完成だからテストとはいえ、余り危険な事件には投入出来なくて・・・今の今まで見送られてしまって・・・」
『なら聞きます・・・どうしてそれがスーツなんです?』
 一様に声を揃えて、どこか疑わしげな眼を向けてくる面々に対し、彼女はこう言った。
「一応言っておくけど・・・別にこれは私がひのめに見せてる内に昔を思い出してー正義の味方とか、戦隊ものをやりたいとか、そんなうわついた気持ちでスーツにしたのでは無いの・・・解ってくれるわね?」
(・・・・・・・・・・・・)
『わ・か・っ・て・く・れ・る・わ・ね!!?』
 どこまでも、彼女は笑顔だった。皆が青ざめる中で、過去と重なる彼女の言動に、神父は一人思う。
(こうと決めたら決して退かない・・・変わってない・・・昔と全然全く変わってない・・・)
 そんな哀愁漂わす神父には構わず、美智恵は反対する者はいない、そう思う事にして話を締めくくる事にした。最後に言う。
「とりあえずこれを着て、放火魔退治を希望する子は十分後にイエス、そうでない子はノー、そう強く念じてちょうだい。私は隣の思念増幅機でそれを拾うから・・・あ、そうそう」
 ゆっくりと・・・大柄な精神感応力者である『タイガー寅吉』を見、言う。
「貴方はサイズ的に無理だし、誰かさん達にいかさま強要されそうだから、少し私についてきて・・・最後に・・・」
 娘と教え子の二人に向け、特に微笑みながら言う。
『逃げた子は・・・もれなくキツいお仕置きが待ってるから』
 そう言い残して・・・ある意味無敵と化した彼女はタイガーを連れ、場を後にした。

 ーその後ー

 十分弱の間、その会議室が破壊の炎で燃え上がった事は、言うまでもない。

 一方、同じ時刻。
 
 彼女は机にむかい、何かを書き連ねていた。
「もうしません、もうしません、もうしません・・・!」
『精が出ますねー藍さん』
 ブルブルと、彼女のペンを握る手が震える。
『では私は少し休みますから、誓書頑張って下さいね』
 ー仮面がそう言いのこして、自室へ引き上げ姿が見えなくなってからー
「ーーーやっ!」
 仮面の自室の扉へと、彼女はペンを投げつけた。カーン!と跳ね返る。舌打ちした彼女に、扉の奥から声がかけられた。
『誓書、千枚追加です』

 ー彼女は白目をむいたー


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