ザ・グレート・展開予測ショー

火消し戦隊、立ち上がる!


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 8/26)




 ー火消し戦隊、立ち上がるー



「だからーーーこれは由々しき問題なのだよっっ!!!」
 とある某除霊事務所に響き渡る男のその声。彼は威厳をもってその声を発した。
 しかし。
「横島くーん、喉渇いたからジュース買ってきてー」
「ちょ・・・」
「あ、それなら私が覚えたての紅茶を・・・」
「君達・・・」
「え〜せっかく先生と散歩に行けると思ったでござるのに〜」
「ねぇ・・・」
「どうでもいいけど、横島さっきから息してないわよ・・・」
「先生・・・」
 冷たい世間の荒波が、神父から『熱意』をさらう。
 完全に無視!されて、何やらしゃがみ込んでブツブツ言い始めた神父に対し、その弟子が(本来なら『一番弟子』と言える女性もいるのだが)優しくその背中に手を置いた。
「美神さん・・・せめて話だけでも聞いてもらえませんか?」
 肩越しに振り返り、金髪の美形青年はそう言った。名を呼ばれた彼女が嘆息しつつも、答える。
「話ならちゃんと聞いてたわよ・・・何だかわけの解らない連中に教会を吹っ飛ばされたんでしょ?誰かから恨まれてるんじゃないの?」
 やはり面倒そうな彼女の言葉に対し、教会の師弟はそれぞれ心の中『だけ』で呟いた。
(そんな、美神さんじゃあるまいし・・・)
(私にはそういう過激な手段にいかにも訴えそうな、それも親しい?知人がこの場にいるんだがね・・・)
 ぎろり!と睨みながら、彼女が言う。
「今二人揃って・・・何か不穏な事考えてたでしょ・・・?」
『いやいや!そんな!』
 即二人揃って、首を振る。
 そんな彼らを不機嫌な眼で見ながら、彼女は椅子に座りなおした。やはり面倒くさそうに、言う。
「ま、不幸なのは解るけど、現実なんてそんなもんよ。だいたい今から犯人捕まえたって教会が元通りになるわけじゃないし、それに・・・」
『それに?』
 二人声を揃えての問いに対して、ニッコリ笑って・・・
『お金にならないのは・・・い・や!』
 ・・・・・・悲しいくらい、予想を裏切らない答えを満面の笑みで返す彼女。神父はつくづく思った。

 <君は私の一番不幸な現実の具現した存在だよ>

 哀愁漂わせ、連れ添う弟子と共に神父はその『現実』に背を向けて立ち去った。追い打ちをかけるかの如く、降ってきた冷たい雨が体温を奪う。それでも神父は歩みだけは止めない。そういえば去り際に、あの中では奇跡といえる程に良心的な現ネクロマンサーで元は幽霊だった少女がこちらを呼び止めたのが聴こえたが、立ち止まる気にはとてもーーーならなかった。

 ーそして、次に向かう先はー

「あら・・・ど、どうしたんです!?それ!?」
 あれから一時間後。二人は最後に残された希望・・・オカルトGメンの重鎮ともいえる女性の元を訪れていた。特例としてたいして待たずに面会する事ができ、普段は意識してない知れ渡った自分の『名前』に神父は深く感謝した。そしてその事を主の導きとし、十字を切る。
「二人共、そんなズブ濡れになって・・・待って下さい、今すぐ拭くものを!温かい飲物も用意します!」
 まったく・・・これが自分達を冷たくあしらった子の親とは思えない・・・世の中にはどうしてこんな不自然が起こるのか、神父は今さらだが疑問だった。

 ーそれから更に、一時間の時が流れー

 オカルトGメンの支部の中にある、今現在は使用されてない第三会議室に彼らは居た。ゆったりとしたソファーに腰をおろした神父達の前で彼女、美神美智恵は深々と頭を垂れて、言う。
「本当、すみません・・・あの子にはきつ〜〜〜く!言っておきますから・・・!」
「い、いや・・・いいんだよ、美智恵君。もう別に気にしてないし、それに・・・」
 神父の次の台詞は場の全員に予測の出来るものだった。三人の声が重なる。
『言って治る様なら、苦労しないし・・・』
 今度は深い・・・とても深いため息が重なる。ややあって、美智恵が口を開いた。
「その放火魔達、霊的な場所だけを狙っているのかもしれないですね。これは『アレ』をやるチャンスかも・・・」
「アレ?」

 ー聞き返した神父に、彼女は微笑むだけだったー

 一方、その頃。

「きゃあああ!あ、貴方!しっかりーーー!!!」
 アジトに帰還して・・・寝起きで喉の渇いた『彼』が湯飲みに口つけた姿勢のまま倒れ伏し、痙攣しているのを発見して彼女は絶叫した。『仮面』がゆっくり近づいて『彼』の容態を看る。
『何だかとても身体に障るモノを飲みほした様ですね、ところで藍さん・・・』
 仮面が酷薄な笑みを浮かべ、言う。

『私愛用の湯飲みに・・・何か入れました?』

 ー今さら祈る事も許されず、彼女はただ固まったー


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