ザ・グレート・展開予測ショー

GSキラー:track32[ロンド・ベル・レボリューション]


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 8/26)

光の粒を見下ろす場所で、漆黒と銀光が疾駆していた。その様相は断じて戦いではなく、
三次元チェイスとでも銘打つべき有様だった。いかな古の魔女の秘術といえど、魔力を
消去するオリハルコンに効果を期待できよう筈もない。魔鈴めぐみの判断は妥当なものだ。
シュバババババババッ
「イヤー!?手裏剣は撃たないでーーーー!!」
だが、決して英断とはいい難い。この高空でオリハルコンと万が一にも接触すれば終わりだ。
彼女の魔力は断たれ、ネオンの海に飲み込まれる事だろう。魔鈴は右に左にと動き回って
手裏剣をかわし、更に高度を上げた。いや、正しくは高度を上げざるおえなかった。
「さ……寒い…!もう、後が無いわ……。」
手裏剣を回避する為に、相手よりも高い位置に移動する。実際、他にどうする事も
出来なかったのだが、この状況ははっきりと追い詰められている。高度が上がり、地上との
気圧や温度に差が生じると、集中力が殺がれ、どうやったって飛行速度は落ちてゆく。
追い詰められている。改めて聞くと、言葉という物のなんと薄っぺらな事だろう。少なくとも
自分の現状を表現する最大の術がこの程度とは、呆れても呆れたりない。
そこまで考えた自分を顧みて、どうやら頭は(冷静かどうかはさておき)酸欠で鈍っては
いないらしい。上々だ、破滅的な事態には至ってない。「現世は可能性の連続で
成り立っている」と人は言う。どんな時でも、用意された無限の可能性の中から、自分の
希望に最も沿う選択を見極める頭さえあれば致命的な事には、(代償がなんにしろ本当に
致命的な事には)ならない。少なくとも、前述の人は其れを信じていることだろう。いや、
未来に希望を託す全ての生きとし生ける者の精神の根底に在る崇拝対象、それが可能性だ。
そこで重要な選択肢だが、これがはっきりと解答が出ていればいいが、残念ながら
そうでないから窮地に追いやられているのである。ともすれば消去法など論外である。
そんな選び方で導き出せる答えでは失う物こそ無かろうが未来は決して掴めない、永久に。
なにより消去するほど選択肢に恵まれてもいないし、可能性を否定していては際限が無い。
絞り込めないなら自分の要望を羅列するべきだが、現状の打破が目的なら問題点は
顧みて然るべきである。――問題点その一、自分の攻撃目標に有効な攻撃手段を今現在
持ち合わせていない。捕捉するなら、近い未来持ち合わせる目処も立ってはいない。
そのニ、彼我の力の差を考慮すると、敵と組み合ったら振りほどけない、ただ死するのみ。
その三、敵はその一・その二を承知している。ここまでの事が原因で一方的に逃げ回る事に
なったのだ。さらにその四、高度を上げつづければ、確実にこちらが先に参ってしまう。
これは承知も何も敵の策略だが、それはさておき高度を下げる策を考えるのが僥倖だろう。
恐らく、問題点の二つまでを解決する最も端的な方法だからだ。だが、それを成す為には、
手裏剣の猛射の対抗策を見つけねばなるまい。受けるわけにはいかないとなると
かわすほかないが、なんとか高度を上げずに済む方法は無いものだろうか?
「結局のところ……上げた方が確実なのよね。気は進まないけど…」
半ば諦めるように呟いて、彼女は真上に突き進んだ。ゴーレムは、訝って数秒止まるが、
シュバババババババッ、ドスッドスゥッドスッ
手裏剣を正射し、魔鈴の背中と右腕に命中させると、硬質である筈のその顔が、ニヤリ、と
微笑の形に歪んだように見えた。そのまま失速し、ゴーレムが構える真下に墜落する魔鈴。
「傷跡が残っちゃったら、そう思うとやっぱり気が進まないわ。」
うめいて、魔鈴は箒を右手に構えながら背後のゴーレムに勢いよく振り返る。そう、彼女が
何を考えてあえて敵の真上に来たのか、何の為に甘んじて敵の攻撃を受けたのか、勢いよく
振り返るこの瞬間への布石。命の系譜たる深紅の流れを用いた、有名な戦法である。
ただし、真似したいとは微塵も思わない。知る人ぞ知る鮮血の目潰し!ゴーレムは慄く。
「!?」
バシッ
魔鈴は箒でゴーレムを叩き、その反動で巧みに離脱すると落下しながら手裏剣を抜く。
「下を取れればこっちのものだわ。切り札が、在るもの。」
この状況になれば、先程までの劣勢は全て覆される。追撃するゴーレム。決着が迫っていた。
魔鈴は路面を撫でるような低空まで下がると、そこから再度魔力を発動し水平に飛翔する。
ズババババババッ
頭上から飛びくる手裏剣を回避しながら、超常的な速度で動き回る魔鈴。ゴーレム自身など
とうに追いついてない。しかし、ゴーレムには考えがあった。地上1m足らずのすれすれを
飛空する魔鈴には大きなハンデが有る。障害物がそれだ。それを利用するように手裏剣を
撃てばいい。勿論、魔鈴とてそんな事は予測の内だ。さほど苦も無くかわし続ける。
ゴウッ
突如、彼女の姿が照らしだされた。ハイビームという奴だ。動く障害物こそがゴーレムの策。
バシュシュシュシュシュシュシュシュッ
「空飛ぶ箒じゃ交通弱者になんないかしら…!」
魔鈴は呟きつつ箒の房で手裏剣を弾いて右上に伸び上がった。勝利を確信し迫る銀光。
「…くっ!!」
息を漏らし、最大加速で退避したが、相手の方が幾分迅い。そして、魔鈴の帽子が、
ゴーレムの眼前に飛ばされる。ゴーレムは獲物を捕らえる絶好の機会に帽子など無視だ。
「終わりよ!」
バシュウウゥゥゥッ
瞬間、魔鈴の霊波攻撃が、彼女の意図する対象に到達し、彼女が期待した結果を生んだ。
バリバリバリッズババババババババババッ
帽子に一瞬視界を遮られ、いや、彼はそれっきり永久に何も見る事も知覚する事も
叶わなかった。彼女が切断した高圧線に自ら飛び込んだ結果であった。
「いくら最硬でも、金属だし普通、電気伝導ぐらいするわよね。不用意に間合いを
詰めたくなるように仕向ける作戦だったのよ。私も結構やるもんでしょ?」
【ドッグファイト:慣れない戦闘も難無くこなし、魔鈴・勝利】
つづく

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