ザ・グレート・展開予測ショー

君がいるだけで(2)


投稿者名:JIANG
投稿日時:(01/ 8/25)

「で、今回の目的はなに? まさか本当に遊園地に遊びに来るのが目的じゃないんでしょう。」
「え…!? いえ、今回は本当に殿下のお供で来たんですよ。べ、別にほかに目的なんかありません。」
「ふーん…。否定する割には答えるまでに間があったし、思いっきりドモっているわよ、小竜姫」
「美神さんが突然真顔になって聞くからびっくりしただけです。本当に今回は殿下が前々からここに来たいとおっしゃっていたのでお連れしただけです。他意はありません。」
小竜姫は美神の疑問に答えるが、そのあわてた様子は疑ってくれと言っているようなものである。
「まあ、いいわ。あなたたちに何か目的があったとしても私の不利益にならなければ関係ないわ。それにここへの案内料もたっぷりもらっているから文句は無いし…。――ただし、なにか危険がある場合は前もって知らせてね。割り増し料金を請求するから。」
相変わらずの令子の答えに小竜姫とヒャクメの二人は顔を見合わせて苦笑するのだった。

そこでヒャクメが何かいたずらを思いついたような顔をして、
「実は今回おまけの目的があるんですよ。」
とニヤニヤしながらしゃべりだした。
「へー、やっぱりね。で、それはなんなのよ」
ヒャクメの言葉に令子は身を乗り出して続きを促すが、小竜姫はヒャクメが何を言うつもりなのか気が気でなくソワソワしている。

今回地上に来たのは、天竜童子を遊園地に連れていくほうがおまけであり、真の目的はある人物の調査が目的であった。そして今こうして会話をしているときも、ヒャクメが千里眼を使ってその人物の情報収集を行い、いつも持ち歩いている鞄の中の電算機によってその分析が行われているのだった。
しかしこのことは決して令子たちには知られてはならないことでもあった。今現在は……。

「もちろん、殿下のお供で遊園地に行くことが主目的ですが、もう一つは横島さんに会いに来たんですよ。」
「なによそれ。どういうこと?」
令子は疑わしそうな顔をヒャクメに向けた。ぐったりしていたおキヌもいつの間にかヒャクメの言葉に耳をかたむけている。
小竜姫も驚きの声こそ上げなかったがかなり動揺した様子でヒャクメをにらめつけたが、ヒャクメが『大丈夫よ、肝心なことは話さないから。ちょっとからかうだけよ』と指向性のテレパシーを送ってきたので平静な様子を取り戻した。
「アシュタロスの叛乱以来、横島さんがどれだけ成長したか気になってましたからねー。ねえ、小竜姫」
「え!?ええ、もちろん。彼はもともと良い素質がありましたから、私も前々から注目して見ていました。それでもあの事件での彼の成長と活躍は私の予測を遙かに越えたものでした。ですから、彼はとても気になる存在です。」
「はっ……、私に言わせればあいつはただのスケベなガキに過ぎないわよ。」
「そうですか? 確かに彼はスケベかもしれませんが、能力はかなり高いと思いますよ。貴方も横島さんに何度も助けられているのではないですか」
「ま、まあそういうこともあったかもしれないけど……。」
「じゃあ、もう少し彼に優しくしてやってもいいんじゃないですか? ねえ、おキヌさん、貴方もそう思うでしょう」
「え、ええ。それは……」
「ダメダメ、あいつに甘いこと言ったらつけ上がるだけよ。厳しく躾けておかないと何をしでかすかわかったモンじゃないわ」
「だからといって厳しくしてばかりじゃ、今に貴方の元を離れていってしまうかもしれませんよ。」
「なにを馬鹿なこと言っているの。あの横島クンが私たちの前からいなくなったりするもんですか。」
「そうですよ、横島がいなくなるなんて考えられません。……それとも何か横島さんがいなくなってしまうようなことが起こるんですか?」
小竜姫の言葉におキヌが不安そうな顔で訪ねた。
「すいません。不安になるようなことを言ってしまいましたね。今のことは忘れて下さい。大丈夫ですよ、おキヌさん。横島さんはどこにも行ったりしませんよ。」
小竜姫はそう言って優しく微笑んだ。しかしその微笑みには哀しみ混ざっているようにおキヌには感じられたのだった。令子も小竜姫やヒャクメの表情を見て一抹の不安を感じたが、彼女がそれを口にする前にヒャクメが声を上げた。
「あ、殿下たちが戻ってきたようですねー。」
見ると童子とタマモを先頭に皆がこちらに向かっている。
「お帰りなさい、殿下。楽しんできましたか?」
「おお――小竜姫、待たせたな。腹が減ったので一旦戻ってきた。何か美味そうなものはないか?」
「私、キツネうどんね」
「お子様ランチがいいでちゅ」
「拙者はステーキがいいでござる。先生は何を食べるでござるか」
「ああ、俺は……」
天竜童子たちが戻ってきたことでそれまで話していたことはうやむやになってしまった。
令子もおキヌも食事の騒がしさに先ほど感じたちょっとした不安などすっかり忘れてしまったのだった。
食事を終え再び園内のアトラクションを堪能した天龍皇子たちは、夜の花火時間になってようやく令子たちの元に戻ってきた。午後も途中休憩を1回と夕食を取りに戻っただけで後はずっと遊び回っていたのだから恐るべきパワーである。
この花火を見たあと帰る予定になっているが、天龍皇子、パピリオ、シロ、タマモはそれでもまだ遊び足りないような顔をしていた。しかしずっと彼らに付き合っていた横島は戻ってきたときには真っ白の灰になってベンチに座り込んでいたのだった。

*** つづく ***

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