ザ・グレート・展開予測ショー

放火魔軍団、左往する!


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 8/25)




 ー放火魔軍団、左往するー



 『境界』
 キョウカイの前に、彼女は立っていた。
 帽子を深くかぶり、厚いコート姿で彼女は立っていた。
 『教会』
 そう、そこは神聖なる『教会』・・・苦難の道を歩む者、あるいは神を信奉する者達が救いを求めて、ここで祈りを捧げる。
 ーそれが現在自分の立つ場所ー
 チラリ・・・と彼女は横を見る。
『フフ・・・いよいよ・・・』
 自然、口からため息が洩れた。
 横には『一匹』の仮面が四本足で無く、二本足で立っている。
 教会に祈りを捧げるでなく、あろうことかその神聖な場所を灰にしようなどと考えやがる超ド級の大タワケの真横。
 ーそれが現在自分の立つ場所ー
 こんな危険思想の持ち主がこんな神聖な場所へ来てしまうのを、阻止出来なかった事と、これから嫌々ながらも愚かな放火に手を貸してしまう、まさにその『境界』線の一歩手前。
 ーそれが現在自分の立つ場所ー
 付け加えれば・・・このタワケ者がここまで来るのを、彼女とてただ黙って指をくわえて見ていたわけでは無い。
 調達する物資があると言って、先まわりしてゴロツキを雇う。
 ゴロツキは麻酔針で安らかな眠りに就いた。
 それが失敗に終わると泣き真似の上手い子供に頼む。
 子供はあっさり、手なづけられて寝返った。
 最後に・・・着込んだ全身覆う黒マントの中に隠し持ってるであろう、多数の火薬が暴発するのに期待して巻き添え覚悟で純粋な打撃を加えようとするも、あっさりかわされ返り討ち。
 その後も無論、あがきはしたが・・・全て失敗。
 そして・・・仮面は平然と、白昼堂々この場に立っている。
(主よ・・・アタシはやれるだけの事はやりました・・・どうかアタシと彼にだけは救いを・・・)
 ギロリ!と横に殺意の眼を向ける。
(この!仮面には裁きを!慈悲など一切必要ありませんっ!)
 そんな最後の祈りを彼女が捧げていると、仮面が黒いマントの中に手を差し入れて、何かを取り出した。
『今回はスマートに行こうかと思いまして、こんな火種を用意致しました』
「火種?」
 まじまじと、仮面が利き腕らしき左腕に手にしたモノを見つめる。次の瞬間、彼女は目を見開いた。
「そ、それっ!ま、まさかと思うけど、爆弾!?」
 不服そうに、仮面が口元を歪める。
『爆弾ですか・・・グレネードと言ってもらえません?』
 今度は彼女が口元を歪める。同時に顔もひきつる。
「そんな名前なんてどうでもいい!あ、あんた、それ・・・」
『ではひらがなにしますか?ぐれねぇど・・・』
「違ーーーう!!!ま、まさかそれでこの教会を・・・!?」
 そう彼女が言った時、仮面がヒョイと何かを放った。

「ーーーーーーー!!」

 ー彼女の口からの、言葉にならない叫び声ー

 時がゆっくりと流れる。彼女の瞳の中・・・その何かはゆっくりと、見るからに頑丈そうな教会の扉へ吸い込まれてー・・・
「わああぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!」
 ー喉の奥からの絶叫は、爆音に掻き消されたー
 薄れてゆく意識の中、彼女は確かに聞いた。「どわわわわーーーー!?!」という声と、それに続いて耳にした「せ、先生ーーーーー!!!」という声を。それらがアジトで目にした教会で暮らす神父とその弟子の声なのだろうと悟り、彼女は後悔する。

 後悔する事は、二つ。

 一つは仮面悪行を阻止出来なかった事。自分が共犯にされてしまう事、教会に住む二人の男のこれからの事と合わせて、謝罪と共に彼女は激しく後悔した。

 ーそしてもう一つはー

(グレ・・・爆弾持ってたなんて・・・坂で背中押して、転ばせて暴発させてれば・・・読みが・・・あま・・・か・・・)

『さあ・・・次はオカルトGメンのー・・・』

 ー仮面の言葉が何だか聞き捨てならない内容だとは解ったものの、最後まで聞く事はかなわずに彼女の意識は途切れたー


 ーその後、教会『だった』場所でー

 ドシャアッ!ガラガラ!
「先生ーーー!大丈夫ですかーーー!!?」
 逃げ遅れ、埋もれてしまった師でもある神父を、身体を霧に変え脱出した弟子の青年が引っ張り出そうとした・・・その瞬間。
 ガシィ!
 金髪の美青年はガレキから伸びた手に、腕を掴まれた。
「せ、先生・・・?「
 地獄の底から響くかの様な声が返ってくる。

『ピート君・・・知り合いのGS全員、召集したまえ・・・』


 ー今日という日の夜、火種は確かに生まれたー



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