ザ・グレート・展開予測ショー

FORCES(5)


投稿者名:二エー
投稿日時:(01/ 8/25)

北海道の事件から1日・・俺は美神さんの経費削減策のおかげで未だに電車の中にいる。電車に乗って二日目の夜だ、客もこの車両には俺一人だけ。東京に着くのは朝か・・・・飛行機なら昨日のうちにはついてる筈なのに・・・ひょっとしたら最近俺が働き過ぎなんで「少しは休みなさい」って気を回してくれたとか?・・・・・・・・そんな訳無いか。

ゆっくりスピードを落としながら電車が止まる。そうだ、確かこの駅で車両の接続をするんだったな。てことは結構な間ここに止まりっきりか・・暇だ・・やべ、また何か考えちまいそうだ。こんな事なら電車に乗る前に本(ムフフなやつな)でも買い込んどきゃあよかったかな?いや・・いくら俺でも公共物の中でそんな物読めねえ。ほんと、電車の中でスポーツ新聞広げてるオッサンやエロマンガ雑誌読んでるマニアの気が知れねえ。それに「あの時」俺は「何故」か電車に乗ろうと必死だったからな・・・しゃあねえ、この変わりばえのしない景色でも愛でてっか。

ほんとにいい景色、真っ暗で。・・・早く電車でろって!ん。・・・・外で何か光が集まったり離れたり・・あれは・・蛍・・か。そうだ。そんな季節だったよな。・・あいつもあの光の中の一つだったんだ。儚い。ひと夏だけの光。

ルシオラ・・・何であの時、笑って「大丈夫よ。」なんて言ったんだ?あの時おまえが少しでも苦しいそぶりをしてくれれば俺は・・いや、彼女のせいじゃない、見抜けなかった俺の所為だ。あいつが俺にしてくれた様にもっと真剣にあいつの事を見ていれば・・

会いたい。

せめてあいつに会って「ごめんな」と一言謝りたい。

もう一度あいつに会う方法は無いのか・・・・いや、ある。以前怒具羅が言っていた。「魔物ならともかく、お前は人間だからな、魂をくっつけたり離したりでは魂が原型を
維持できないのだ」

そう、『魔物ならともかく』

俺はポケットの中からあの目鼻付きタマゴを取り出す。相変わらず眠っているように・・見える。あの虻野郎はもとは普通の人間だったはずだ、それが「何か」のきっかけで「人間」から「魔物」に変化した。おそらく文殊の爆炎の中でも燃え残ったこれがなにか関係あるはずだ。これの使い方さえ解れば俺も・・・そしてルシオラを蘇らせることができる。俺なんかの為に死んだあいつに今度は自分自身の為に生きてもらえる。


馬鹿野郎。何考えてんだ俺!虻野郎が言ってたじゃねえか「妻と子を『捧げた』」って。
意味は良く解らないがろくなことじゃないに決まってる。まったくなんでこんな事を思いつくんだ?

俺はため息をつき、目鼻付きタマゴをポケットにもどそうとする。そうか・・これだ・・・このタマゴを見ていると何だかどんどんおかしな考えが浮かんでくる。捨てちまうか・・そう思って窓の外をみる。相変わらず蛍が舞っている。にしても数が多いな。さっきより増えたんじゃねえか?それにさっきから同じ所にずっと・・・ん?あれは!

明かりが増えて解ったよ。あの野郎、まだ生きてやがったんだな。

そこには俺が文殊で炭にしたはずの虻野郎がいた。どうやって嗅ぎ付けたのかは解らないがここで待ち伏せて俺を始末するかこのタマゴを取り戻そうとでもしたのだろう。蛍を必死に追い払おうとしている姿が滑稽だ。

ルシオラ・・お前なのかもな。不甲斐ない俺に活でも入れるつもりで「ヨコシマ!何浸ってんのよ!敵よ、敵!」ってな。そうだ。お前が見こんでくれた事に俺も応えなきゃな。

見てな。

俺は電車の窓から飛び降り、奴に近付く。足元にさっき作ったばかりの文殊を転がす。

「くくくくそっ、どどどけっこここの虫ども」
苦戦中だな。化け物。

「よおオッサン。同じ虫にずいぶんじゃねーか。いや、そんな事を言ったら蛍に失礼すぎんな。それにあいつに殴られちまう。『こんなのと一緒にしないで!』ってな」

虻野郎が「しまった。見つかった!」という顔で俺を見る。

「それにどうしたよ?その怪我は?ひでえ有様じゃねえか、一体誰にやられたんだ?言ってみな。俺が注意しといてやるよ。」
自分でも驚くほどに相手を挑発する言葉が口から滑り出る。それに心がひどく落ち着いている。

「こここここ小僧ッ」
おーお。歯軋りしてやがる。・・歯あんのか?どうでもいいか。

「なんだ、害虫。憂いなんか無いんじゃねえのか?いいてえ事があるならはっきりしゃべれよ。」
いいぞ、もっと怒れ。

「わわ私のベヘリットを返せ!あああれは私のだ。いいま返せば楽に殺してやる!」
ベヘリットって言うのか。この『目鼻付きタマゴ』は。・・・もう一押しだな。こう言われたときは・・・古典的だがこれに限るな。

右手のひとさし指で右目のしたまぶたを引っ張り、舌を思いっきり出しながら一言。
「べえー」だ。

「ききき貴様、こここ殺してやるるるううう!」

虻野郎が飛びかかって来る!
が、俺まであと50センチというところで足元の文殊「縛」が作動し蝿叩きで叩かれたように奴の動きが止まる。

「あああかかっからだがああっつ!貴様、こここれをねらって」
気付くのがおせえよ。俺の周りでは蛍が勝利のダンス?をおどっている。

「さーて。ブタバコにお前サイズがあるかどうかわかんねえけど西条達に引っ張ってってもらってあらいざらい吐いてくるんだな。」

にいっ

何だ?また笑いやがった・・笑っただけじゃない。虻野郎の体がふくらんでゆく・・・

やばい、確かマンガとかではこういう敵は・・・自爆する!
俺は猛ダッシュでその場から離れ、ふせをする。何故か蛍達もついてきた。

ドウウウウンン!

爆風が後ろから迫ってくる。奴は・・今度こそ木っ端みじんになっちまったみてえだ。燃えた残骸がちらばっている。はっ電車は!電車は大丈夫か?無人のホームに戻る。

ああああああっ

電車は無事だった・・・というかとっくに出発していた。俺を置いて。

プルルッ

美神さんに持たされた仕事用の携帯が鳴る。
「はい、横島です。」

「ああ、横島君か!実は鑑識の結果が出てな、それによるとあの中にあった燃えかすは化け物の一部分だけらしい。本体がどこへ向かったかは見当もつかん。一応緊急配備はしたがそちらにすでに向かっている可能性もある。ともかく気をつ・・」

プツッ

西条に最後まで話をさせず電話を切る。俺の周りを飛んでる蛍達に「バカ」といわれた気がした・・・・

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