ザ・グレート・展開予測ショー

夜更。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 8/25)

嫌だ。
意識が薄れる。
止めてくれ。
おぞましい本性を。
誰か−

星も見えぬ夜更けに相当する時間。
ある島の岩壁に一人の少年が苦しそうにもがいている。
歳は10代後半にみえるか?
見事な金髪、聡明な瞳。知者に多い切れ長の眉。そして細身というべきプロポーション。
すべてが美少年と呼ぶにふさわしい。
「・・衝動にはまけないです」
僅かな、己にも聞こえるかさだかでない音量でその少年。
その声は小さいが己の意識を保とうと強い感情が唇を動かせた。
表情は不可思議なものだが、その瞳には強い光が有る。
振り上げ手はたからかに、
−それこそ、血潮が目でみえるのではないかという程。
一筋、拳から伝って汗が流れる。
だが、少年はそれに気付かないほどに、虚空を睨んでいた。
目の前には柔らかい地中海の風、そして黒い海。
そこをただただ眺めていた。

震える体を押さえつけるように、前を見る。
こんな不安な自分。
恐ろしい。
と思う。
自分はその存在こそに、毒薬に等しい。
本当は、このまま気を無くし一生暗い土の中にうもれるべきともp思。
だけど、それでは解決にならない。
本当の悪、己の父に負けない。
負けたくない。
親父の事は許さない。
いや、ゆるせない。

正義こそこの世の真理。
悪は滅びる。

本当はこの世界がそんなに簡単という事はもう、知っている。
だけど、せめて、せめて、自分の選んだ世界の中では、そうありたいのだ。
だから闘う。
自分の出生よりの忌まわしさと。
自分の一族と。
−吸血鬼として。


恐怖を超える。
矛盾の板ばさみ。
助けてほしいよ。
だが、僕は動けない。
助けてくれ。
この忌まわしさを乗り越えられるように。
自分が皆をたすけられるように。
そして乗り越えられるこころをくれる人に出会えるように。

だから
「絶望はしないぞ」
数日後、穏やかな港にひとりのクリスチャンながら波紋を宣告された神父に出会った。

おわり。
hazukiさんへのオマージュ的作品です。
気をわるくしたらごめんなさい。

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