ザ・グレート・展開予測ショー

放火魔軍団、立ち上がる!


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 8/24)



 燃える。

 
 パチパチ・・・メラメラ・・・

 燃える。先程まで誰の目にも普通の家だった場所が。

 ーその様を、一人の女は見ていたー

 帽子を深くかぶり、マスクをつけ、おまけに厚いコートを身に纏い、怪しさを撒き散らしつつ、ただ見ていた。

 しかし厳密に言うなら、見ていたのは焦土と化す家では無い。

『ウッキャアアァーーーッッ!!!』

『(ズズー)毎度の事ながら、良い暴れっぷりですねぇ・・・』

 ー彼女は二人から目を背けたー

 ー呟くー

「いつまで続くの・・・この悪夢は・・・?」

 

 ー放火魔軍団、立ち上がるー



 ー放火ー
 紛れもない犯罪行為。人が心血を注いで建てた家など、建築物を、台無しにする憎むべき犯罪行為。
 テレビで目にした事はある。悲嘆に暮れる被害者の姿も。
 しかし、それだけだ。
 それと密接に関わる事など考えない。考えたくもない。
 ー誰もが抱くその『普通の感覚』ー
 例外無く、その感覚を彼女も持っていた。
 しかし・・・
『燃えろ燃えろぉ!』
「・・・・・・」
 そこで、彼女は引き戻された。今現在自らが置かれている現実へと。長年連れ添い、結婚した男性が放火魔の補佐を努めていて、それに否応無く巻き込まれてしまった自分。
 その『現実』に、彼女は引き戻された。
(・・・・・・)
 ジッ・・・と彼を見る。
 彼は、発火能力者だ。自らの念で火を灯す事の出来る能力の持ち主。性格は温厚で穏やか。争い事など決して好まない。
(喜々として家を燃やす姿からは想像もつかないし、説得力などは微塵も無いが・・・)
 ーしかし、彼は変わるー
 特定の音を聴く事によって・・・温厚な青年から、悪質な放火魔へと、彼は変貌する。
(・・・・・・)
 次いで、いつも仮面をかぶり、男か女なのかも判断のつかない首領を見る。お茶をすすりながらCDプレーヤーで、消防車のサイレンを彼に聴かせ続けている。元凶といえる存在。
 性格は一言で言って、『掴めない』だ。
(・・・あら?)
 そこまで考えて・・・ふと気づく。
 自分の後ろからも、サイレンの音が聴こえる・・・?
 その事実から推測される事態に、彼女は青ざめた。
「大変!逃げないと!貴方!それに仮面!」
 慌てふためく彼女の叫び。しかし・・・
『み・ん・な!燃えろーーー!!!』
『(ズズー・・・)はぁ、お茶が美味しい・・・』
 バンッ!
 彼女は帽子を叩きつけた。長い栗色の髪がなびく。
「仮面!・・・いえ、サー!すぐそこまで消防車がーー!!」
 そこで、仮面はようやく茶をすするのを止めた。振り向く。
『さて、と・・・では撤収しますか。しかし・・・』
 そう言い、仮面は見る。彼女も見る。今度は迫りくる、『本物のサイレン』で、暴れ続ける彼の姿を。
「やれやれ・・・こうなったら、いっそのこと・・・」
 いっそのこと・・・何故この言葉はこんなにも不安をもたらすのだろう・・・考えている内に、彼の首筋に針が突き刺さった。
『アハハ・・・ハ・・・』
 彼が崩れ落ちる。行きますよ、と言って仮面が駆け出した。
「ち、ちょ・・・彼は・・・!?」
 仮面が立ち止まらず、言う。
『苦難の道を歩みながらも、伴侶と共に・・・貴女は妻のカガミです・・・泣けてきますよ!』
「アタシが泣きたいわぁぁぁーーーー!!!!」

 ーその後ー

 三人が去った後、屋敷から移り住んだ家を焼かれた、貧乏神と暮らす薄幸い少女が生きる決意を新たにした事を・・・

 補足しておく。


『さあ!次はこの教会です!今度は手強いですよ!』

「もうアタシ達を巻き込むなぁぁーーー!!!!』



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