ザ・グレート・展開予測ショー

FORCES(4)


投稿者名:二エー
投稿日時:(01/ 8/23)

今思えばあの時なぜ俺はあんな行動を取ったのか・・だがその時の俺にはそれがとても愛しく、大事なものに見えた。そう、炎の中で燃え残った目鼻口付きたまご(ベ何とかとあの虻野郎は言っていた)を駆け寄ってくる西条達Gメンから隠すように俺は拾い上げ、ポケットにしまう。今更の様にスプリンクラーが作動し、俺達に雨が降ってくる。

「横島君、大丈夫か!全く何であんな無茶を・・・ともかく君のおかげで部下が助かった。礼は言っておくよ。」

そう言いながらもバツが悪そうだ。自分が一度は部下を見捨てようとしたからだろう。俺の知った事か。せいぜい苦しめ。

「しかし・・これでは物証は何も残ってないな。奴がなんであんな魔物になったかはわからずじまいというわけだ。」

俺が何か言いかけたからだろう。話をそらすようにオフィスを見回す西条。

確かに・・奴が使っていたデスク、その他のものはすべて炭化してしまって元が何であったのかもわからなくなっていた。エネルギーが奴の背後にあった窓から抜けていかなかったら大惨事になっていたかもしれない。じゃあ俺のポケットの中にあるこれはいったいなんなんだ?そうだ、西条達に渡せば何か解るかもしれない。

「おい、西条・・・」

「何だ?横島君。何か見つけたのか?」

「い、いや、ほら、虻野郎と俺の会話の中から何か手がかりみたいなものは無かったのかよ?」

「ああ・・あれだけではな。『あの方達』『授かった』というからには誰か複数人が奴に何らかの処置をしたのだろうが、奴がそういう怪しげな所ーたとえば新興宗教などに出入りしていたという記録は無いんだ。」

駄目だ。西条達に見せれば物証として取り上げられてしまう。これは・・・俺のだ。俺のものだ。誰にも渡すわけにはいかない。

「何も?何か変な呪術具を厄珍堂みたいなところで買ったとかそういうことは?」
俺は動揺を押し隠すように西条に質問する。

「それも無しだ・・それに呪術具をつかった変化で素人がこんなに急に強力で、しかも知性を残したまま魔物に変化できるとは思え無い・・・ま、望み薄だが後は科研の鑑識待ちといったところだな。君の仕事も終わりだ。ご苦労様、もう帰っていいよ。令子ちゃんには僕から連絡しておこう!」

ひどい扱いだがこれ以上ここに留まればこれの事がバレるかも知れない。お言葉に甘えさせてもらおう。

「ああ・・そうさせてもらうよ。」

「何だ。やけに素直だな・・そうだ、令子ちゃんから君の帰りのチケットを預かってたんだ。ほら、渡しておくよ。」

西条から手渡されたそれは・・・青春十八きっぷう?あの女俺に鈍行で北海道から帰って来いってかああっ!

注:青春十八きっぷー学生などが思い出作りの長期旅行に良く使うものでどこまで行っても1日1万円というお得なきっぷ。ただし鈍行限定。ちなみに北海道から東京までだとまる2日かかります。

俺は資本家と労働者のあるべき関係についてブツブツ言いながら地元の県警、救急車に消防隊も掛けつけて大騒ぎのビルから抜け出し、駅に向かう。
帰りの鈍行電車の中で胸のポケットに入っている目鼻口付きタマゴを取り出す。大丈夫。ちゃんと持ってる。

ふと、我に返る。

え・・何で?なんでこんな気色悪ィ物を後生大事に俺は?変だ。やっぱりこれが今度の事件に何か関係あるんだろうか?美神さんなら何か知っているかもしれない。ともかく事務所にこれを持っていこう。それからだ。

これから東京まで丸々二日も電車の中だがとても眠れる気分じゃないな・・・俺は改めてその目鼻口付きタマゴを見つめる。

俺の手の中でまぶたを閉じている「それ」はまるで眠っているようにも見えた・・・・。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa