ザ・グレート・展開予測ショー

地獄裁判 その6


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 8/22)

前述した蝋燭、判決を決める炎は現在三つほど灯っている。
変成王、死者を42日目に裁く神が言葉を続ける。
「幽霊は怨恨による殺めは許されようが、己が利益の殺人未遂はゆるさるるべからず」
すいと手を翳すと中央にあつまる蝋燭の火が消える。
「なれど、変成王様」
目玉の親父が顔、というよりも目を向けて、
「前述しましたが、このオキヌなる娘の場合己が何ゆえ霊的存在になったか、記憶がないので御座います」
それは聞いたがと、変成王。
「故、生命を欲すのは人間が人間たる生理現象、又実害が無いので問題はないかと」
思われます、と最後の言葉は平等王に睨まれながらも言い切る。
「親父の言尤もである。更に人は心の奥底で他人の血を求める性があるのは心得ておる、真理じゃな」
平等王が手を翳すと蝋燭に火が灯る。
「・・いや、しかし。仮にも己が幽霊である自覚はあったのだから・・」
泰公王が顎に手を当てぶつくさいい始めたとき、美神が手を挙げる。
「もう一言宜しくて?ぶっちゃけた話、オキヌちゃんは病気でも事故でもないわね、死神さん?」
死神には発言の権利は無いと閻魔王が断わってから、
「このオキヌなる魂を地獄へ持ってくるように指示したのはワシじゃ」
「つまりこのケースは納得がいかないわけよ!オキヌちゃんは健康だったじゃない!」
「いや、虫歯がありますな」
地獄の秘書官である倶生神が一言言う。
《虫歯ぐらいでしたら、現在の技術でどうにもなりますし、死病とも思えません》
人工幽霊1号だ。
この発言に対してぴしゃり締めたのが三周忌を司る五道輪転王だ。
「この裁判、被疑者の健康、不健康は問題ではないであろう。存在其の者が論点」
「これは成るほど納得のいく御言葉ですな」
初江王が大仰に頷く。
「王方よ。存在の有無が焦点なればその異議を問うは近親の者に聞くのが筋かと」
目玉の親父がそういうと、特に反発を見せる泰公王に、太山王だ。
「否、ここは霊界の裁判が場所。人間が如きに伺うとは、如何な物か?」
「この太山、泰公殿に同じ意見だ」
しかし、目玉の親父を擁護する王も出た。
「だけどさーこの裁判てぇーかなり特殊な物とおもうのよー」
今まで黙ってい伍官王だ。
宗帝王もこれにならっているようだ。
「伍官王の言う事一理ある。現に・・・・」
ちらっと美神を一瞥して、
「すでに人間がもう参加しておる。閻魔王!」
なんじゃと閻魔王が口を開く。
「たしか、この閻魔庁には人間界はいざしらずすべての世界の様子を伺える鏡がありますな」
閻魔王も肯定する。
「うむ。通常『真実の鏡』と呼ばれる魔具を使えば通信は可能じゃ」
おお、と王の中でもどよめきが起こった。
「し、真実の鏡?」
なんか恐そうな品ねぇと美神が漏らすと、
「しらんのかい令子ちゃん?西洋の有名な御伽噺でもあるではないか。ほれ美人を聞く鏡とかの」
その鏡が真実を語り毒林檎から王子様のキスとなるあの話だ。
「は、はぁ。あの鏡が地獄の品だったのねぇ」
妙に感心をする。閻魔王、美神らのやり取りを一応見て、
「王方よ。先ずは人間が意見を聞くか、多数決をとりたいと思う。今は判決の燈し火を始末して」
ふいっと中央に集めるともし火が消える。
「人間に意見を問うことに賛成な王は燈し火を」
閻魔王がそう告げると、五つほど火が蝋燭を照らす。
倶生神がその様子を見てから、
「閻魔王様、只今鏡を御持ちします」
そう告げてから、
「ふむ。少し休憩とするか。美神とやら!」
突然振られて、はいっと子供が如く元気に返事をすると、
「この休憩中、オキヌと話をする事を認めよう。折角地獄へと着たのじゃ。なんなら地獄めぐりでもするか?」
「い、いえ結構です!」
「そうか。今なら青鬼のガイドがついて夏休み特別価格なのだが」
本当であろうか、冗談であろうか。
《横島様はどうなっているのでございましょうか?》
本来なら向かうべきではとも思うが、この裁判に参加するだけでもかなりの体力を消耗している。
「大丈夫よ。あのスケベなら、女のいないところで死なないでしょ?」
「はて?戦っている相手は・・・女性じゃなかったですか?」
「そ、そういえばそうね」
しかも横島にとってファーストキスの相手でもある。
少し美神の顔が曇った時、
「呪禁氷河!!」
メドゥーサが氷をどこからか召喚した。
「うがっ!」
横島はその脅威から上空へと向かう。
『馬鹿っ!とべねェ奴がどうして跳躍しやがるっ!』
マーロウがあらんばかりの声をあげるが、
「かかったな!」
満面の惠美で槍を上空へと繰り出すが、
「マーロウ、忘れたかい?織れたちゃ・・・」
ばさっとマントを翻すと空中でVターンを綺麗に決める。
『失念していたわい!吸血鬼からええもんをかりていたんだよな!』
「なっ!」
急襲に近い状態ではあった。だが敵も然る者。
ふとももに一筋の血をながさせただけにすぎない。
バランスを崩した時を見計らってマーロウも咥えている神通棍を付きたてようとするが、
「おあまいよっ」
肩のバネだけでどうやって逃げたのか、三途の川原へと逃れる。
メドゥーサの頬から一筋の血が流れている。
そいつにつばを付ける。
『おいおい。つばつけて傷が治る年齢じゃねぇだろ?』
マーロウの皮肉だ。

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